2011年04月30日

原発消極派による「低線量被曝の健康被害」に対する代表的主張

結局、低線量被曝の健康被害については「諸説あります」ということのようで、原発推進派の「累計100ミリシーベルトからは健康被害を否定出来ない」というのと、原発消極派の「累計1ミリシーベルト以下では健康被害は指摘できない」の2つぐらいがコンセンサスなんだと思う。つまり、1ミリシーベルト未満なら許容範囲、100ミリシーベルト以上だと許容できない、の2つについては議論の必要がなさそう。

そんな中で、消極派の代表的なレポートがこれ。

低レベル被ばく影響に関する最近の報告(第106回原子力安全問題ゼミ、2009.3.6、今中哲二、PDF)

わかりやすく良くまとまっていると思う。ただ、内容の信頼性については諸説あるんだと思う。たとえばこの文書の中では「直線・しきい値なしモデル」を「合理的で最もタフなモデル」としているけれど、昨日の朝生では「直線・しきい値なしモデルは一般的に否定されている」とのコメントがあって、どちらが本当なのか、僕のような素人には良くわからない。わかりやすいのと、正しいのは全く別の評価基準なので、そこを混同しないようにしないと(わかりやすいと、ついつい正しいと認識しがち)。

それで、このレポートの一番興味深いのがこのスウェーデンの調査。

スウェーデン汚染地域でのガン増加
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セシウム汚染でガン発生率がアップするというもの。これをそのまま今の日本に適用するとどうなるのかな。あとでちょっと調べてみますかね。

疫学って、コントロール(対照)が取りにくいから、凄く難しい学問なんだよね。例えば「ビタミンAの摂取の影響について」とか言ったって、ビタミンAの摂取量を完全に制御するのは物凄く難しいし、しかもそれを長期間にわたって調査するのは物凄い労力を要するわけです。あるいは、放射能が降りました、といっても、その結果、がんの死亡率がどうなるのかっていうのはサーベイが凄く難しい。「放射能が降った」っていう情報をもとに、みんなが病院に行って、そのおかげでたくさんのがんが早期発見されて、治療したおかげで死亡率は減っちゃった、とか。あるいはがんの罹患率も、調査をしっかりやったおかげで発見率が上がっちゃったとか。環境要因によって「現状」(=コントロール(対照))が大きく変わってしまうので、特定の事象の影響が調べにくいわけです。その点で言えば「放射能の影響って良くわからなかったけれど、あとになってみるとこんな傾向があるよね」という、先のスウェーデンの例なんかはなかなか良いデータなんじゃないかな、と思うのですが。

#ちなみに今の日本は低線量被曝の疫学調査の格好の実験場。こんな状況になることは滅多にないので、国際的な資金をバンバン入れて、どんどんデータを集めるべき。20年もしたら、有名学術雑誌にたくさん「Fukushima」という文字が並ぶでしょう。

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