2011年05月13日

親と子のゲノム教室から、面白いゲノム科学へ

僕が随分前に書いた本、「親と子のゲノム教室」は今見ても結構良く書けている本だと思う。だけど、今読んでみると弱点がふたつある。

ひとつめは、情報がちょっと古いこと。日進月歩の領域だから、部分的に「あぁ、これはちょっと古いねぇ」というのがある。ま、凄く基礎的な本だから、間違いじゃないんだけれど。あと、「こういうテーマも知っておく必要があるよね」というのもある。例えば、放射線を被爆すると生物学的にはどうなるのか、とか。

そしてもうひとつが、面白くないこと。真面目すぎるんだよね。この本を書いたときは僕もまだ若かった。科学は面白いんだ、みんなは理解していないからつまんなく感じるけれど、理解できちゃえば凄く面白いんだ、って誤解していた。でも、今は違う。科学は面白くない。だから、科学を伝えようと思ったら、面白くなくちゃ駄目だ。わかりやすくて面白い。この、二人三脚が必要だ。

ということで、セルフカバーじゃないけれど、「親と子のゲノム教室」をいくつか項目を増やしつつ、「合コンでも使える! 面白いゲノム科学」に書き換えてみたらどうかと、さっき思いついた。ためしに第一章をリライトしてみたんだけれど、どうかな。

「これなら続きを読んでみたい」という方は挙手をお願いします(笑)。出版社も決まっていないから、挙手が多くないと出版できません(笑)。


あ、「うちで出したい!」という出版社の方も募集いたしております(笑)。原稿は1ヶ月あれば書けます。ご連絡はmotoki@liblog.co.jpまでお気軽に。


#もっと面白くしたいけれど。
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第1章 基本中の基本


ゲノム科学っていうとそれだけで難しそうだけれど、実際のところは全然そんなことはないんだよ。だって、僕だって高校まで物理と化学しか勉強してこなかったのに、たった2年で最前線に行けちゃったんだから。それで、このゲノム科学って言うのは遺伝子とかタンパク質について勉強するんだけれど、おさえておかなくちゃならない大切なポイントが2つある。それはワシントンに行ったらスミソニアンとオベリスク、スペインサッカーならバルサとレアル、AKBなら・・・・えーと、あとで調べてみる、みたいな感じだ。


超大事なこと、その1
ゲノム科学に登場する大事な物質は「核酸」と「タンパク質」の2つだ。タンパク質ぐらいは誰でも普通に聞いたことがあると思う。あの、運動したときに飲むプロテインのことだ。核酸と聞くと「うへぇ」という感じだろうけど、これはDNAとかのこと。DNAとかRNA(って、並べて書くだけで「もうわかんねぇよ」と思うかも知れないけれど、じっと我慢)といった物質のことをどこかの誰かが「核酸と呼ぼう」と決めちまったわけ。これが「おきゃくさん」とかだったらずっと覚えやすかったんだろうけれど、偉い学者さんたちは覚えやすさとかにむとんちゃくだからしかたない。

さて、この「核酸」と「タンパク質」だけど、一番大事な特徴は「細長くつながった糸のようなもの」ということ。実際には核酸は4つの塩基(という物質)、タンパク質は20種類のアミノ酸(という物質)が一列につながったもので、その並び順が決まると機能が決まる。一列につながるというのは、大勢の人間が手をつないでいる状態を思い浮かべたら良い。人間には手が2本しかないから、みんなで手をつないでいくと一本の鎖のようになる。途中に手が4本ある天津飯(図参照(予定稿だから図はないよ))みたいな奴がいると鎖が枝分かれして困ったことになるけれど、ドラゴンボール以外の世界ならそんなことにはならない。ずらーーーーーーーーっと、一列に並ぶわけだ。これを難しい言葉で「直鎖状」って言うんだけれど、ま、これは読んで字のごとし、まっすぐな鎖のような状態ってこと。

DNAは、4種類のデオキシリボ核酸という物質が直鎖状にならんだもの。これと似たものでRNAっていうのもあって、こちらは4種類のリボ核酸という物質が直鎖状に並んだものだ。それから、タンパク質は20種類のアミノ酸が直鎖状に並んだもの。

生物の世界では、こういう「直鎖状のもの」が物凄く重要な役割を果たしている。身の回りのものをざーーーっとみると、プラスチックにしても、ポリエチレンにしても、木材にしても、金属にしても、溶かしたり、削ったりして、人間が都合のいいように形を整えているけれど、生物の世界ではそんなことは起きない。ただただまっすぐに並んだものが、こんがらがって形を作って、それが目になったり、血液になったりする。

あ、でも、身の回りにも、こういう「直鎖状のもの」がこんがらがって特定の形になって、機能している場合もある。例えば服なんかはこれの代表例。「糸」という直鎖状のものを上手に編んで布を作り、それをまた組み合わせて服にしている。でも、これをバラしていくとほとんど全部が一本の糸になっちゃう。もちろんボタンとかファスナーとかは別だけどね。布団カバーもTシャツもカーテンも、細かく分解していくと糸になっちゃう。生物の体の中は、多くのものがこういう裁縫技術で作られている

DNAとか、RNAとかの「核酸」は、僕達の遺伝情報を伝達するとっても大事なモノだ。放射線はこれをズタズタにしちゃうから、僕達は放射線を怖がるんだよ。タンパク質はタンパク質で、僕達が生きて行く上で物凄く大事なもの。これがなかったら即死まちがいなしだ。核酸やタンパク質についてはまたあとでちゃんと説明するけれど、覚えておいて欲しいのは、そういう、水や空気のように大事な核酸やタンパク質が、直鎖状だっていうこと。これが大事なことの1つめだ。


超大事なこと、その2
もうひとつ、物凄く大事なことがある。それは「ペアリング」ということ。松山ケンイチと小雪がつきあっているんだってねぇー、というのを難しく言うと「松山ケンイチさんと小雪さんがペアリングしております」となる。あれ?なんか、難しい言葉のほうがちょっといやらしい感じがするけど、ま、いっか。まぁ、そんな難しいことじゃない。電気のプラグとコンセントなんかがその例。プラグ同士ではくっつかないし、コンセント同士でもくっつきようがないけれど、プラグとコンセントはぴったりはまるわけだ。これを「ペアになっている」と言うけれど、このペアをつくること、すなわちペアリングっていうのが凄く大事な役割を果たしている。人間だと、男と女だけじゃなくて、ときどき男と男、女と女がペアリングしたりするので話がややこしくなるけれど、ゲノム科学の世界ではそういうことは起きない。奴らは意外と保守的だ。

詳細はこれまたあとで書くけれど、DNAは「デオキシリボ核酸」という物質で構成されていて、デオキシリボ核酸にはアデニン、チミン、グアニン、シトシンという4種類がある。いや、こういう名前が良くないんだよね、本当は。これが「松山ケンイチ、小雪、小栗旬、山田優」だったら間違いようがないしすぐに覚えられるんだけれど。学者に言わせれば、「でも、松ケンと小雪にして、別れちゃったらどうするんだ」ってことになるんだと思う。別に構わないよね?どちらかというと、今覚え易いほうが重要だと思うんだけど。ま、いいや。とにかく、難しい名前の4種類がある。それで、アデニンはチミンと、グアニンはシトシンと、必ずペアをつくる約束になっている。松ケンと山田優じゃ困るし、松ケンと小栗旬でもちょっとどうかと思うでしょ?ゲノム科学の世界では、必ず松ケンは小雪とくっつくし、小栗旬は山田優とくっつく。このペアリングが物凄く重要なんだ。

この、直鎖状と、ペアリング。この二つがうまいことミックスされて、遺伝情報が伝達され、生物に不可欠なタンパク質が作られる。


まとめ
1.ゲノム科学は簡単です
2.手をつなごう
3.松ケンと小栗旬がカップルだったらキモイ
4.キーワード:「核酸」「タンパク質」「直鎖状」「ペア」
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この記事へのコメント
やっぱり総統に語ってもらうのが一番かと・・・


あと、タイトルと本文で1つ「親の子のゲノム教室」ってなってます。
Posted by おいら at 2011年05月13日 18:08
> やっぱり総統に語ってもらうのが一番かと・・・

了解。「合コンでも使える! 総統閣下のゲノム科学」

> あと、タイトルと本文で1つ「親の子のゲノム教室」ってなってます。

ん?ん???
Posted by buu* at 2011年05月13日 18:22
>了解。「合コンでも使える! 総統閣下のゲノム科学」
待ってます!?

>ん?ん???
親「の」子のゲノム教室 となっとります。

ところで映像の入った電子書籍ってあるのでしょうか?
イラストだけでなく動画で説明されるとわかりやすいと思うのですが(作るほうは大変ですけど)。
Posted by おいら at 2011年05月13日 22:33
> >了解。「合コンでも使える! 総統閣下のゲノム科学」
> 待ってます!?

はい(笑)

> >ん?ん???
> 親「の」子のゲノム教室 となっとります。

あぁっ!直しました。

> ところで映像の入った電子書籍ってあるのでしょうか?
> イラストだけでなく動画で説明されるとわかりやすいと思うのですが(作るほうは大変ですけど)。

ありますね。PDFにすれば良いだけなので。問題はイラストの分お金がかかることぐらいです。
Posted by buu* at 2011年05月13日 23:56