2011年05月26日

人間失格

人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))

言うまでもなく、太宰治の代表作。これ、読んだのは多分30年振りぐらい。だから、読後感とか全然違うんだと思う。今回は、可哀想、でもないし、あるある、でもないし、へぇ・・・でもないし、表現が難しい気持ちになった。こういう人生もあるんだなぁ、というか。だからどう、でもないし、本当に難しい。もちろん、何も残っていないわけじゃない。というか、むしろ、非常に面白かったし、色々とひっかかるところもある。

ただ、そうだな、KYみたいな言葉がある今、こうやって周りの空気を読んで、その中に自分を合わせようとして、その中で徐々に疲弊していってしまう人間は結構いるんだろうなぁ、と思った。

この本が傑作なのは、多分、読者が100人いたら、100個の感想が出てくるところ、一つとして同じものが出てこない所なんじゃないかな。それぞれがみんな自分のそれまでの人生と照らし合わせて、そして何がしかの感想を持つところなんじゃないかと。物凄く丁寧に書き込んであって、展開される物語の自由度は低いのだけれど、読む人の感想の自由度が物凄く高いんじゃないかと思う。それは、ひとりの同じ人間であっても一緒で、だから人生のどの時期に読むかによって、それぞれ別の感想を持つんじゃないかなと思う。

うーーーん、だから、どこに感動したとか、こういうところが好きだったとか、そういうんじゃなくて、「とりあえず、10年に一度ぐらい読んでみたらどう?」という感じ?決して損はないと思う。短くて、すぐに読み終わる本だし。読んで、そして少し考えてみれば良いと思う。

主人公の性格設定が綿密で、用意周到というか、凄い。それから読点が物凄く短いインターバルで打たれる。文体が面白い。

評価は☆3つ。

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