2011年06月14日

二日酔いについて考える

最先端似非(?)科学のリバネスの博士たち(爆笑)がサイエンスにこだわって(爆笑)ウコンを売っている件に関連して「二日酔い」について考えてみた。飲み過ぎは誰もが経験のあることで、「二日酔い、やだなー」とみんなが思っているから、「これ、二日酔いに良いらしいよ」などと聞くとみんな試したくなる。ダイエット食品と同じ構図だ。では、二日酔いの薬とか健康食品はどの程度の効果効能が期待できるのだろう。

まず、二日酔いより一歩進んだ、急性アルコール中毒について調べてみた。急性アルコール中毒は血中のアルコール濃度が一定量を超えた場合に発症する。急性アル中の治療法はネットで調べる限り、経過観察、胃洗浄(アルコールの吸収を予防)、下剤(アルコールの吸収を予防)、利尿剤の投与(アルコールの体外遊離)、ビタミンB1の投与(アルコールの代謝促進)、血液透析(アルコールの体外遊離)といった対応が為されるようだ。ここで、ビタミンB1の薬効について、「健康食品」の素材情報データベース(国立健康・栄養研究所)で調べたところ、アルコール中毒によるビタミンB1の欠乏症に対して栄養補助食品として経口摂取した場合に有効であるけれど、アルコール中毒においてビタミンB1の欠乏症になることはまれであるとのことだった。
出典:http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail50.html

続いて、二日酔いについてである。二日酔いは血中のアルコール濃度ではなく、アルコールが代謝されて生じたアセトアルデヒドによる。ここで急性アルコール中毒との対処の違いは、利尿剤の投与は二日酔いにはあまり効果的ではない、ということだ。アルコールの分解フェイズにおいて大量の水を消費しており、体が脱水症状を起こしているというのがその根拠らしい。したがって、利尿剤によって水を体外に出すのではなく、水分(スポーツドリンク等)を大量に補給するのが良いということになる。

さて、こうした対応策の他に、日本には第三類医薬品に分類される二日酔い薬が存在する。エスエス製薬のアルケシクールである。
アルケシクール(凄く重くて不安定です)

ちなみに「第三類医薬品」とは、医師による処方箋なしで購入できる一般用医薬品の中で、副作用などに特に注意が必要なもの(第一類)、日常生活に支障を来す程度の健康被害の可能性があるもの(第二類)を除いた一般医薬品で、要は医薬品の中では最も効果が期待できない部類のものである。ただ、もちろん医薬品なので、効果効能は期待できるはずである。

ウェブサイトによると、アルケシクールは次の3つの作用機序によって二日酔いを治療するようだ。

1.アセトアルデヒドと直接結びつき解毒する
2.アセトアルデヒド代謝酵素を活性化する
出典:http://www.ssp.co.jp/alkeshi/product/pop1.html
3.TCAサイクルを回して体力を回復させる
出典:http://www.ssp.co.jp/alkeshi/product/pop2.html

では、アルケシクールの有効成分は何なんだろう、ということで、それを調べてみたら、次の3つが主成分とのこと。

1.L-システイン 240mg
2.アスコルビン酸(ビタミンC) 300mg
3.パントテン酸カルシウム 24mg
出典:アルケシクール製品情報

他に添加物が色々書いてあるけれど、このあたりはパス。そして、この3つの主成分について見てみる。

まず、L-システインである。システインはアミノ酸の一種で、それほど大量にあるわけではないけれど、どこにでもあるものである。にんにくや玉ねぎ、唐辛子のような、あの手の植物に多く含まれていることが知られており、特に変わったものではない。エスエス製薬のサイトではシステインについて「アルコールを分解するSH酵素を活性化し、さらに二日酔いの原因物質(アセトアルデヒド)の代謝・解毒を早め二日酔いを治療します。また、エネルギー産生にも関与、二日酔いなどからくるカラダのだるさに対しても効果を発揮します。」と記載されているけれど、「健康食品」の素材情報データベース(国立健康・栄養研究所)で調べたところ、これといった有効性は見当たらなかった。
出典:http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail618.html

ただし、ラットにおいては低グルタチオンレベルを改善したとあるので、これをもってアルコールデヒドロゲナーゼやアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼを活性化するとしている可能性はある。

一部に肝機能向上をうたう健康食品サイトが存在したが、論文ベースではシステインの人間に対する効果効能については今のところ見つからない。その効果を否定するわけではないけれど、「玉ねぎやにんにく、あるいはプロテインで良いんじゃない?」と思わないでもない。また、サプリメントでもシステインのタブレットは多数存在する。

次に、アスコルビン酸である。これはビタミンCであり、巷に溢れている非常に一般的なサプリメントである。清涼飲料水などにも大量に含まれているし、どうしてもビタミンCだけ摂取したければ方法はいくらでもある。「健康食品」の素材情報データベースで調べたところ、様々な有効性は見られるものの、アセトアルデヒドの分解に限定すればこれといった有効性は見当たらなかった。
出典:http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail45.html

アスコルビン酸はアルケシクールの効果効能の中では体力回復の部分を担っているのだと思われる。

最後にパントテン酸カルシウムである。パントテン酸カルシウムはパントテン酸のカルシウム塩(弱酸性のパントテン酸と水酸化カルシウムの中和物)で、コエンザイムAの構成成分である。主としてエネルギー生産に関わる重要な物質ではあるものの、通常の食生活でそうそう欠乏するものでもない。また、これも「健康食品」の素材情報データベースで調べたところ、有効性が認められるのはパントテン酸欠乏症に対してのみということだった。
出典:http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail592.html

ちなみに上記3つはそれぞれ医薬品として販売されているが、その効果効能はおおよそ次のようになる。

L-システイン
(湿疹、尋常性ざ瘡、多形滲出性紅斑、中毒疹、薬疹、蕁麻疹)、放射線障害による白血球減少症

アスコルビン酸
(ビタミンC欠乏症、メルレル・バロー病、壊血病)の(予防、治療)、(激しい肉体労働時、消耗性疾患、授乳婦、妊産婦)のビタミンCの補給、(ビタミンC欠乏、ビタミンC代謝障害)の(炎症後の色素沈着、肝斑、血尿、歯肉出血、雀卵斑、鼻出血、毛細管出血、光線過敏性皮膚炎、骨折時の骨基質形成、骨折時の骨癒合促進、副腎皮質機能障害、薬物中毒)

パントテン酸カルシウム
パントテン酸欠乏症の(予防、治療)、(甲状腺機能亢進症、消耗性疾患、授乳婦、妊産婦)のパントテン酸の補給、(パントテン酸欠乏、パントテン酸代謝障害)の(カナマイシンによる副作用、ストレプトマイシンによる副作用)の(予防、治療)、(パントテン酸欠乏、パントテン酸代謝障害)の(弛緩性便秘、急性湿疹、接触皮膚炎、慢性湿疹)

この3つをまとめて飲んだ時に二日酔いの医薬品になる理屈はよくわからないのだけれど、このあたりが第三類医薬品の第三類たる所以なのかも知れない。ともかくわかったことは、「二日酔いを効果的に治す薬は存在しない」ということである(ちなみに急性アルコール中毒についても同様)。

このような状況下にあって、もし本当にアルコール中毒や二日酔いの治療薬が開発された場合、相応の市場規模が見込まれると考えられる。しかし、現状はそれが未開発である。

なお、上記の調査の中でわかったほぼ確実な点を以下にまとめる。

1.空腹時の飲酒を避ける
2.飲酒前だけでなく、食べながら飲む
3.飲み過ぎない
4.二日酔いになったらスポーツドリンクで水分を補給する

なんだ、全部当たり前のことですね。その上で、ウコンのなんとかとか、そんなものはほとんど全部役に立たない、ということのようです。皆さん、騙されないように。特に、「飲む前にウコンを飲んだから大丈夫」とか言って大酒を飲むのは危険です。もちろん1があるので、飲酒前に何かを口に入れておくことは重要ですが、ウコンである必要性は今のところ確認されておりません。それから、「二日酔いに」などとして売っているものはほとんど全部怪しい商品ですから、そういう商品を扱っている会社のものは、自己防衛として買わないことをお勧めします。たとえ、博士が勧めていてもです。

#時々、リバネスについて「最先端似非(?)」と書いているのを、「もしかしたら科学かも?」と僕が思っていると誤解している人がいるようなのですが、とんでもない。リバネスはこの手のインチキ健康食品の販売にあたって、科学的なことなど何もしていません。単に「博士がお勧めしている」だけです。僕のスタンスはリバネスは科学でないのはもちろん、似非科学でもない、というものです。ただ、「博士」という肩書きを利用しただけの看板商売です。良くあるじゃないですか、白衣を着た「〇〇先生(医学博士)がお勧めします」っていう怪しい宣伝。あれと一緒です。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/buu2/51267844
この記事へのコメント
微かな期待でLシステインと高濃度ウコンを大量に買い込んでいるのに(^_^;)


僅な偽薬効果もなくなりましたわ(ToT)


Posted by hideaki at 2013年01月14日 11:57
> 僅な偽薬効果もなくなりましたわ(ToT)

これも勘違いしている人が多いんですが、プラセボとは、睡眠障害や胃腸障害などの、一部の「精神的なもの」に起因する症状にだけ効果があるかも知れないといわれているもので、二日酔いや肥満といった、精神とは全く無関係の症状(飲み過ぎれば二日酔いになるし、食べ過ぎればデブります)には効果がありません。残念ながら、最初から「僅かな偽薬効果」すらありません。
Posted by buu* at 2013年01月15日 11:16