2011年09月07日

ブログでバイオ 第76回 アンチGMOにかけているくだらないコスト

先日、ちょっと興味があって「遺伝子組換え不分別」の商品をスーパーで探してみました。すると、これが全然ないんですね。以前、カロリーメイトのような、栄養補助食品のようなもので「不分別」って書いてあるのを見つけてちょっと嬉しくなったんですが、それもなくなってしまった様子。消費者圧力に負けちゃったのかな?ということで、納豆やら、コーンフレークやら、醤油やらは軒並み「遺伝子組換えでない」と記載されています。ところで、この、「遺伝子組換えでない」っていう表記、誰でもやっていいわけじゃないことはわかりますよね?もちろん、勝手にはできません。

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納豆、味噌、醤油といった製品のための日本向け農作物は、農場で栽培、収穫してから加工工場までの流通の全ての過程において、特別な管理をする必要が生じます。そして、農作物の生産者、流通業者、輸出入業者、加工業者の全てのフェイズで、きちんと管理されていることを証明する証明書が揃って初めて、「遺伝子組換えでない」と表示することが可能になります。

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ダイズの場合、日本の自給率は6%です(ちなみにトウモロコシの自給率は0%)。残りの94%を輸入しているわけですが、総量3390千トンのうち、米国から2412千トン、ブラジルから570千トン、カナダから353千トン、中国から51千トンを輸入しています。もちろん、4カ国ともにGMO大国です(世界のトップ6は米国、ブラジル、アルゼンチン、インド、カナダ、中国の順番)。米国の場合、ダイズの遺伝子組換え率は92%なので、放っておくと日本に入ってくるものはほとんど全部遺伝子組換えになるわけです。

ということで、多分、日本の皆さんは米国の農家にプレミアムなお金を払って、面倒くさい非組換えのダイズを栽培してもらって、それを輸入していることになります。そうしないと、「遺伝子組換えでない」とは表示できませんから。もちろん、そのコストはダイズ関連製品に上乗せされているはず。

ダイズの場合、遺伝子組換えはラウンドアップレディ(若い女性っぽいですが、ladyじゃなくてreadyです。ラウンドアップに備えてますよ、という意味かな?)がメインですが、これはラウンドアップという農薬に対して耐性を持つたんぱく質の遺伝子を導入してあります。ラウンドアップという農薬はレディじゃない植物を根こそぎ枯らすことができるので、非常に効果的。かつ、分解が早くて人体への影響もあまりないため、物凄い勢いで利用が増えてきています。残留農薬が少なくて、農地にも優しいんだから当たり前といえば当たり前です。ただ、気になるのはダイズに組み込まれた遺伝子や、その産物であるたんぱく質が悪さをしないのか、ということです。

ここで、身の周りに生物学で大学や大学院を出ている人間に聞いてみて欲しいのは、「特別なたんぱく質をコードした遺伝子や、そのたんぱく質を食べたらどうなるの?」ということです。おそらく、彼らの回答は「どうせ消化されちゃうから、関係ない」というもののはずです。中にはアレルギーを起こすような人もいるかも知れないけれど、そんなのは蕎麦や卵でアレルギーを起こす人がいるのと一緒です。なんといっても、もう米国じゃほぼ全員がラウンドアップのダイズやトウモロコシを食っていて、ピンピンしているわけです。日本人だけ具合が悪くなったら、それはそれでびっくりです。

にも関わらず、なぜか日本のスーパーでは、ダイズやトウモロコシ関連の商品はほとんどに「遺伝子組換えでない」と表記されているわけです。僕としては、遺伝子組換えで良いから、もうちょっと安い納豆や豆腐があったらいいのになぁ、と思うのに、そういう消費者は全く無視されて、組換え、非組換えの商品の選択の自由すらないわけです。これって、ちょっと異常だよな、と思います。

そこで、遺伝子組換え作物の本を書くことにしました。目標は年内、できれば11月ぐらいに。「あなたの身の周り、こんなに遺伝子組換わってますよ」というもの。目で見てわかる、わかりやすいところばかりを非組換えにして、わかりにくいところはぜーんぶ組換え、みたいな現状をきちんと指摘しつつ、大事なことは消費者が選択できること、そのための情報がきちんと提供されることですよ、という本にしたいです。別に遺伝子組換えを推進したいわけじゃないんだけど、今のままじゃ、得するのは米国のジャパン・プレミアムを作る農家だけなんだもの。もうちょっと、みんなに正確な知識を持ってもらって、正常な市場原理が働くようにしたいわけです。

#いや、遺伝子組換えフリーが食べたい人はそのまま食べていれば良いんだと思うんですよ。繰り返しですが、大事なのは、選択できること。

出版時期など、決まり次第、ブログで連絡したいと思います。

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この記事へのコメント
スーパーで見かける表示の多くが、遺伝子組換えでない・・・ってありますが、組換えた大豆の方がコストかからないだろうにそんなに特別栽培されてるのかなぁ?、って思ってました。多少は混ざっちゃってるとも聞きますし。でもさすがに偽装はしないですかね?自分も含めて消費者も賢くならないといけないですね。
Posted by そら豆 at 2011年09月09日 10:42
> スーパーで見かける表示の多くが、遺伝子組換えでない・・・ってありますが、組換えた大豆の方がコストかからないだろうにそんなに特別栽培されてるのかなぁ?、って思ってました。多少は混ざっちゃってるとも聞きますし。でもさすがに偽装はしないですかね?自分も含めて消費者も賢くならないといけないですね。

米国に専用の工場を作るわけにいかないので、機械そのものは同じものを使っているようです。なので、全く混ざらないというのは無理で、法律でも5%までの混入は認めることになっています。

偽装はどうなんでしょうねぇ。非組換えというだけで20〜50%ぐらい価格がアップするようなので、悪い奴らが考えていても不思議ではないですね。しかも、実質的に、実害はほぼ皆無ですし。そのあたりは米国の皆さんが毎日食べて人体実験をしてくれています。
Posted by buu* at 2011年09月09日 11:12