2011年09月23日

落合監督解雇の意味するもの

落合監督の解任が発表された。

落合監督は、間違いなく名将で、僕がファンとしてきちんと見てきた限りでは、中利夫監督以降最高の監督だった。

落合監督の最大の特色は采配ではなく、選手の選び方にあった。

采配は簡単だ。とにかく先発ピッチャーは自分の責任をはたすべし、無失点で内容が良ければ完投、完封もあり、失点していれば、今なら浅尾、岩瀬への投手リレー。点差があるなら他のピッチャーでリレー。ただし、育成を目指した選手起用はしない。打者についてはこれといった特色はなかったが、やや外人を重用する部分はあったかも知れない。野手に関しては、ミスに厳しく、例えばバント失敗とか、あるいは守備のミスについては物凄く厳しい懲罰采配をとった。この程度である。

出色なのはなんといっても選手の能力を見出して、適した場所に配置すること。育つのか、育たないのかわからない選手がいつの間にか凄い選手になっている。昨日投げた吉見や浅尾、打者なら今年はイマイチだけど、森野などが代表例だろう。

秘密主義だったために、監督が何を考えているのか、僕達には良くわからなかった。だけど、しばらく経てば、その理由は自然と明らかになった。あぁ、そういうことだったのか、と。中には相変わらず良くわからないこともあるけれど、それは多分僕達が情報不足なだけ。きちんと説明されればわかる話に違いない。話は原子力の是非といったような国民的な議論が必要なものではない。僕達ファンは、チームが勝てば良いのである。だから、何か良くわからないことがあっても、「落合監督だから、正しいに違いない」という信頼感があった。ゲーム序盤戦で先発ピッチャーがボコボコに打たれて、ゲーム序盤で敗戦が決まってしまったとしても、である。

ただ、年間数試合しかドームに足を運ばないお客さんがこういう日にあたってしまってはたまらない。だから、観客数が減ってきてしまったことには、一定の責任があるだろう。しかし、これはファンサービスの都合ではない。プロ野球のファンサービスの第一は間違いなく「勝つこと」なのだ。楽しい試合で勝つに越したことはない。だけど、バカスカ打つけれど気がつくと負けている、という、ちょっと前までの読売タイプの野球は、それほど熱心でもなく、会社の付き合いなどで3回裏ぐらいにドームにやってきて、ビールを飲みながら攻撃のときだけ試合を見て、ゲームの趨勢がはっきりしたら席を立ってしまうようなお客さん向けである。本当のファンは1試合だけで野球を評価しないし、やはり勝つことが大事だ。我が中日ドラゴンズの悲願は、レギュラーシーズンで優勝し、クライマックスシリーズでも優勝する、「完全優勝」なのである。そのためには、一見使えない外人をいつまでも使っていたり、全く打てない4番をずっと中軸に置いたりしていたり、安定しているアライバコンビを取り替えてみたり(守備も、打順も)しても、「落合監督のやることだから」と我慢ができる。なぜ我慢ができるかって、これまでの落合監督の、監督としての実績、残した結果が素晴らしいからである。今、プロ野球で采配をとっている監督の中では、ほぼ間違いなく最高の手腕だ。

今の中日は、育てながら勝つチームではなく、勝ちながら、次の選手が(勝手に)育ってくるのを待つチームだ。落合監督が監督をやっている間にそういうチームになった。それは、サッカーで言えばレアル・マドリードやバルサのスタイルである。ただ、ちょっと違うのは、日本の野球は下部組織(二軍だけではなく、社会人、大学野球、高校野球も含む)がわりとしっかりとしているため、チーム内できちんと育っていくことが可能だ。中心打者の和田、谷繁はともかくとして、生え抜きではないレギュラーはほとんどいない。みんな、勝手に育って(ファームの体制の良さはあるんだろうが)、落合監督に見出された選手たちである。

一部の新聞報道では、「黒字になったことは一度もなかった」のが解任の一因とされていたけれど、それは球団経営の話で、監督の責任ではない。ファン感謝祭などに顔を出さないことを指摘する記事もあったけれど、それは球団と監督の契約の問題だ。どうしてもそういうファンサービスが必要なら、契約時にきちんとそういう条項を入れておけば良いだけのことである。

ただ、本当のことを言うなら、多分解雇の主たる原因はそこにはないんだと思う。おそらくは、能力主義で構成したコーチ陣だろう。井上、近藤といった若くて生え抜きのコーチもいるにはいるが、田村、笘篠、石嶺、小林、森、垣内、辻、高木、高柳・・・・といった、西武を中心としたものすごい、だけど中日生え抜きではないメンツが球団OBの反感を買ったのではないか。確かに、大島、田尾、牛島、種田みたいに生え抜きなのに中日に戻ってきていない若手もいるし、鈴木孝政、小松、与田、彦野、立浪といった、往年の名選手も少なくない。こういった選手にもう一度ドラゴンズのユニフォームを着せてやりたい、というのもわからないではない。

しかし、それはファンサービスの一つではあっても、本流ではない。王道は「勝つこと」だ。

後任に選ばれた高木守道はもちろん能力が低い人間ではない。しかし、やはり「育てながら勝ちたい」人間の一人である。この「育てながら」というのは、「勝つ」ことに対してはノイズでしかない。中日は数少ない、「勝ちながら、育ってくるのを待てる」球団だったはずなのに、である。恐らく、高木新監督には、堂上兄弟、平田といった才能をどうやってチームの主力に仕上げていくのかが任される。そして、それ以上に大きな課題になるのが、岩瀬から浅尾への世代交代をどうするのか、である。それは、本来、落合監督の最後の仕事になるはずだった。長くても3年の短期政権で、そのあとには中日生え抜きの若手中心の監督・コーチに刷新されるだろう。まさに中継ぎ的な役割である。

日本的な球団経営によって落合監督は解雇されてしまったというのが僕の見方である。これによって、せっかく現在の日本球界では唯一の「徹底した能力主義の球団」だった我が中日ドラゴンズは、一般的な、日本的な球団に退化する道を選んだことになると思う。

落合監督の8年間は、確かにファンとしてつらい部分もあった。だけど、彼が残したのは過去最高の結果だったと思う。心から、今回の解雇が残念でならない。

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
中日は監督を替えるより前に、現在のユニフォームを換えるべきですね。
あくまでも主観ですが。
Posted by カツ/鰻 at 2011年09月23日 15:12
> 中日は監督を替えるより前に、現在のユニフォームを換えるべきですね。
> あくまでも主観ですが。

特に気にならないんだけど、だめ?
Posted by buu2 at 2011年09月23日 15:32
この件は他球団ファンながら勿体ないなあと思いましたね。
ホント、リアリストな監督でしたから、見ていて憎らしい
程の安定感でした。正直、是非他の球団が三顧の礼で
迎えてほしいですね。横浜に行って、かつての西本監督
のように成果を出してほしいと願っております。
Posted by ダイ at 2011年09月23日 20:40
> この件は他球団ファンながら勿体ないなあと思いましたね。
> ホント、リアリストな監督でしたから、見ていて憎らしい
> 程の安定感でした。正直、是非他の球団が三顧の礼で
> 迎えてほしいですね。横浜に行って、かつての西本監督
> のように成果を出してほしいと願っております。

ベイスターズはお金がないから無理なんじゃないですかね? 日ハムとか。
Posted by buu* at 2011年09月23日 21:54