2011年10月18日

マリノス失速の原因と来季への展望

もともと、上位にいたのはかなりの部分が運だったわけで、だけど、せっかく運があるならそれを活かしたほうが良いのは当たり前。優勝を狙える位置にいたのに、残念ながらここへ来て失速、ちょっと優勝は厳しい状況になってしまった。では、その原因はどこにあるのか。

俊輔が先日の天皇杯で、途中交代でピッチに入りリズムを良くしたこともあって、「やはり俊輔不在が痛いのか」と思う人もいると思うのだが、僕はそれはあんまり関係ないと思っている。マリノスの失速の原因には「得点力の低下」と「守備力の低下」の両方があるのだけれど、得点力の低下はそれほど顕著でもなく、もともとこんなものじゃないかな、と思う。それよりも大きいのは守備の破綻で、それは何故かって、中澤のコンディションが落ちてきていることが原因だと思う。中澤はもともとスピードのあるCBではないし、近年の衰えは隠しようもなく、そろそろ常時レギュラーというのは厳しくなってきたんじゃないかというのが僕の考え。地震の影響で試合間隔が狭い上に、ナビスコの試合が追加されたお陰で試合過多になってしまった。そうした条件も重なってか、ここ数試合は中澤の守備力低下によって試合を落としている印象がある。俊輔抜き以上に、中澤抜きでどうするかを真剣に考える時期に来ているのではないか。

マリノスは今、これからどういうチームにするのか、という方針が決めにくい状態にある。それは俊輔のせいで、といっても俊輔が悪いのでもない。ピークを過ぎた選手をチームの核にした場合、「次はどうする」というのを考えなくちゃならないから、どうしたってチームはグラついてしまう。多分、日本代表やガンバも、あと数年のうちにヤットのコンディションが落ちて、「どういうチームにしたら良いだろう」と頭を悩ませることになる。マリノスは、今、というか、すでに下り坂だった俊輔を獲得した時点で、舵取りが難しい状態になっている。

チームの方針はポゼッションサッカーなのか、カウンターサッカーなのか、基本的には2つにひとつなのだが、俊輔を核にするなら、ガンバのようなポゼッションサッカーを目指すのが普通の考え方だ。しかし、ガンバのゲームメーカーはディフェンシブハーフのヤット。マリノスはオフェンシブハーフの俊輔。ゲームメーカーが前にいる分、ボールを散らす選択肢が狭まる。あと、中澤、栗原から俊輔にボールが渡るまでにワンクッション必要なので、そこでボールを失う可能性が高くなる。じゃぁ、ゲームメーカーが前にいるメリットは何かと言えばキラーパスなんだけど、今のJ1のサッカーは守備力がアップしているので、一発のパスで局面を変えてしまうのは結構難しい。俊輔にパスが渡ったときにはすでに相手チームは守備を整えているので、パスの出しどころがない。パスをもらった俊輔がそこで立ち往生する場面を何度見たことか。とすれば、1ボランチの小椋に期待がかかるのだが、彼にはまだJ1の上位チームを相手にするだけの、つまり、日本のトップレベルの能力があるとは言えないのが現実だ。では、俊輔を一枚後ろに下げたらどうか、ということになるのだが、これはこれで難しい。なぜなら、後ろに下がった場合には走力とスタミナが必要になるのである。俊輔にはこれらが決定的に不足している。もし俊輔がボランチに下がったら、パートナーになるであろう小椋の消耗が激しくなりすぎる。今の日本代表が強いのはヤットと長谷部がきちんと走れるからであって、俊輔にボランチをやらせるのは、いくらパートナーになるであろう小椋が「水戸のガットゥーゾ」だとしても、やっぱり難しいだろう。俊輔をチームの中心とする限り、マリノスはガンバタイプのポゼッションサッカーはできないのである。それは、ポゼッションサッカーを目指したからこそ俊輔を外した日本代表を見ればわかる。

ポゼッションサッカーが無理ということになれば、カウンターサッカーを選択するのが残された手段。中澤、栗原といった長身のCBを擁するチームなら現実的なところだし、井原・小村の時代から強力な守備陣とカウンターのコンビネーションはマリノスの伝統でもある。ところが、今のマリノスは、攻守の切り替えが遅い。いや、早くしようという意図は感じられるのだが、残念ながらパスがつながらない。前へ、前へと運びたがっているのに、そのパスが繋がらないので、逆にクロスカウンター(?)を食らっている。簡単にいえば、バックラインからのパスの精度が低いのである。ここが木村監督の頭の痛いところだろう。もうここは頑張って中盤以降の選手、特に両サイドの選手に練習してもらうしかない。ただ、ここでもうひとつ、木村監督が悩まなくてはならないポイントがある。それは、ここでも中澤の衰えだ。カウンターサッカーには「強固な守備」が必須だが、以前に比べてマリノスの守備力は確実に落ちている。その原因が中澤だ。相手も中澤がウィークポイントだとわかっているので、中澤へ素早く寄せてくる。寄せられた中澤は、慌てて栗原にボールを回すのだが、余裕がなくて栗原がミスをする。これはぱっと見、栗原が悪いようだが、実は中澤の判断ミスだ。もちろん、飯倉にも責任はあるのだが、それよりも中澤である。試合を見ていると、栗原はかなりきちんとやっている。中澤の衰えと、ときどき顔をのぞかせる飯倉の判断ミス。このふたつによって、マリノスの守備は破綻し、したがってなかなか効果的なカウンターが発動しない。

ポゼッションも、カウンターもだめ、となると、あとは中盤でのんびりとパスを回し、相手のミスを待つか、あるいは相手が疲れてくるのを待ってスタミナ勝負に持ち込むぐらいしか得点のチャンスがない。木村監督はそのパス回しで何とかしたいのかも知れないが、J1上位チームが相手では、それはちょっと贅沢な望みだと言わざるを得ない。現代サッカーの基本はいかに数的有利な状況を作り出すかである。ポゼッションもだめ、カウンターもだめ、というこうことなら、あとは香川みたいにスルッとディフェンダーの背後に抜ける技術とか、全盛期の小倉みたいなドリブル突破力とか、要は個人技に頼るしかない。ところが、マリノスにはそれもない。つまり、チームの側から積極的に点を取りに行くのが難しい状態になっているのだ。最後の頼りは運なのである。

そんな中で、あくまでも中村を中心に据えるのなら、現在のベストメンバー、ベストフォーメーションはこんな感じだと思う。

marinos


今年に限れば、この戦力では良くやっていると思う。では、このチームの弱点はどこなのか。もちろんまず中村。ここは現状では狩野健太の成長を待つしかない。彼は今後1、2年で俊輔に引導を渡すだけの成長が必須だ。それが不可能なら、外部から補強するしかないだろう。もうひとつは左サイドバック。金井はまだ若いので、伸びしろがある。慌てて補強する必要もないかも知れない。あとはキーパー。ここも、飯倉が経験を積むのを待つしかないのかも知れない。

Jリーグは世界的に見れば2流、3流のリーグなので、良い選手は片っ端から海外へ流出する運命だ。マリノスは親会社が絶好調というわけでもないので、良い外人選手を連れてくるだけの余裕もない。ただ、これはマリノスに限ったことではないから、Jリーグでは、ヤットのような「凄いのに日本でやっている」選手はもうこれから先ほとんど出てこないはず。彼は、海外スカウトがまだ日本の選手に目をつけていなかったことと、内臓疾患を抱えていたことのふたつの理由によって、本当に運良くガンバにいただけのことである。そうした状況を考えれば、マリノスの選手層はかなり厚いとも言える。中澤、中村のリプレースをきちんと確保できれば、来年もそこそこに期待できるのではないだろうか。ただし、それにしても多分ポゼッションサッカーは無理だと思う。そのためには、ボランチの格段のレベルアップが必須だからだ。

(急激である必要はないけれど)脱中村、脱中澤、そしてカウンターサッカーのためのパスワーク(前へボールを運ぶスピードと精度)のレベルアップがうまく行けば、優勝も見えてくると思う。

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