Dietary Supplements and Mortality Rate in Older Women
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/171/18/1625
1986年の時点で平均年齢61.6歳だった女性38,772人を対象に、ビタミンとミネラルのサプリメントの利用状況と、2008年末の生存状況(40.2%が死亡)を調査して、その相関を求めた、という論文なんだけれど、マルチビタミン、ビタミンB6、葉酸、鉄、マグネシウム、亜鉛、銅に関してはリスクがアップし、カルシウムだけがリスクが小さくなったとのこと。関連は鉄のサプリについてが一番高いらしい。
無料で読めるのがサマリーだけなのでなんとも言えないけれど、さもありなん、という感じではある。ビタミンAやその前駆体のβカロテンの危険性については以前このブログでも書いたけれど、現在ではビタミンDを始めとして、脂溶性ビタミンの多くが「適度に摂るなら害はない」といったところ。
僕もちょっと具合が悪いな、と感じるとマルチビタミンを飲むことがあるんだけれど、冷静に考えればビタミンって、多分普通の食生活の中で健康被害が出るほどに欠乏するものじゃない。ミネラルも、どうなんだろう。そんなにたくさん必要なものじゃないしねぇ。体の中で、「あ、これはあのミネラルだ」ってわかるのはカルシウムぐらい。あぁ、あと、ヘモグロビンの関係で鉄はわかるか。亜鉛とか銅とか、わざわざサプリで飲むようなものではないと、なんとなく感じる。理由はないけれど。
今回は高齢の女性を対象とした調査だけれど、これからはこの手の調査結果も色々と出てくるんだと思う。
最近、色々と調べていて思うのは、偏食よりもバランスが取れた食生活のほうが良い、ということ。そりゃぁどうしても不足するビタミンやミネラルはサプリに頼ってもいいけれど、そんな状況に追い込まれることって、日本ではほとんどないんじゃないかなぁ。この論文では唯一好評価だったカルシウムですら、大量摂取すれば腎結石や前立腺がんのリスクが上昇するという論文があるみたい(Pharmacist’s Letter/Prescriber’s letter Natural Medicine Comprehensive Database(2006))だし、アミノ酸の一種のトリプトファンですら、大量に摂り過ぎると健康被害が出るくらいだからね。以下、「「健康食品」の安全性・有効性情報」から抜粋。
・サプリメントとしての経口摂取は危険性が示唆されている。妊娠中・授乳中の使用は避ける。
・経口摂取での副作用として、吐き気、頭痛、ふらつき、口渇、かすみ目、運動失調、傾眠などがある。
・サプリメントとしてトリプトファン製剤を摂取して、好酸球増多筋痛症候群という健康障害を引き起こした事例がある。
出典:「健康食品」の安全性・有効性情報「トリプトファン」
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail623.html
それにしてもこの「健康食品」の安全性・有効性情報というサイトは素晴らしい。このサイトを運営している独立行政法人国立健康・栄養研究所は偉い。
健康はバランスの取れた食生活から。僕は、文化的な生活をしているならサプリメントは不要、ということでFAなんじゃないかと、最近は思っている。
ずっと昔、味の素(グルタミン酸のナトリウム塩、グルタミン酸はアミノ酸の1つ)を食べると頭が良くなるって言って、何でもかんでも味の素を振る時代があったけれど、今は「味の素で頭が良くなる」なんて言う人を見ることない。だから、20年ぐらいしたら、「あの頃はみんなサプリでビタミンやミネラルを摂っていたんだよね。今じゃ誰もそんなことしないけれど」っていう時代になっていても、全然不思議じゃない。