2012年01月11日

遺伝子組み換え食品に関する総統閣下のミニレクチャー「姿なき遺伝子組み換え食品」

「遺伝子組み換え食品との付き合いかた」が入手困難でご迷惑をおかけしております。



そこで、「買いたくても買えない」という皆様のために、総統閣下が遺伝子組換えについて解説するミニコラムを執筆しました。ブログだけの書きおろし特別コンテンツとなっておりますので、購入可能となるまで、こちらをお楽しみいただければと思います。ちなみにこのコンテンツは「総統閣下はお怒りです」の作戦室バージョンのフォーマットをそれなりに(笑)忠実に再現しております。

#あ、すいません、「遺伝子組み換え食品との付き合いかた」はもっとずっと真面目な表現です(汗)。こういう本ではないので念のため。

主な登場人物
総統閣下:日本征服を企む独裁者。堀北真希ファン。ガンダムが好き。
モリタック:総統閣下の側近。給料が安くいつも貧乏。
ヒロッコ:総統閣下の作戦室で統計・調査を担当する女性。

---------------特別書きおろし、ここから----------------------

姿なき遺伝子組み換え食品
〜身の回りにある遺伝子組換え食品〜

モリタック:総統!今日から遺伝子組み換えパパイヤの輸入が解禁されるそうで、ツイッターでは「遺伝子組み換え怖い!」というつぶやきがいっぱいです。

註釈:パパイヤ
キウィに比べると高級なため、まだ日本ではそれほどメジャーになっていない果物。ハワイで生産されるパパイヤの半分以上は遺伝子組み換え。


閣下:だから?

モリタック:いや、「だから?」って言われても、大変だな、と思いまして。

閣下:お前の給料じゃ、パパイヤなんて高級品は買えないだろ?

モリタック:いや、それはそうなんですが・・・

ヒロッコ:買えないなら、心配しても仕方ないじゃない。

モリタック:えっと・・・私はそうですが、国民の多くは困っているのです。

閣下:俺も困っているよ。

モリタック:やっぱりそうでしたか!安心しました!

閣下:いや、お前たちの過剰反応に困っているんだよ。

モリタック:えっ、過剰ですか??

ヒロッコ:自分では買わないくせに、大騒ぎしているののどこが「過剰」じゃないのよ。

モリタック:えっと、それはそうですが。

閣下:今、10日に出版する「総統閣下はお怒りです」のプロモーションで忙しいから、お前に説明している時間はあんまりないんだけど、ちょっとだけ、遺伝子組み換えについて解説してやろう。

モリタック:待ってました!!

閣下:一般生活者は遺伝子組み換えについてあんまり知らないのに、「遺伝子組み換え食品は危ないらしい」という雰囲気だけが出来上がっている。ほとんどの消費者が「遺伝子組換えでない」という表示があると安心するようだが、その理由はといえば、 「テレビでやっていたから」とか、「色々な食品に記載されているから」とか、単に雰囲気に流されているだけなのが実際のところだ。

ヒロッコ:モリタックもその一人よね。

モリタック:だって、私の専門は経済ですよ。

ヒロッコ:私も経済です。

註釈:モリタックとヒロッコについては「総統閣下はお怒りです」の表紙参照のこと(右下の、左がヒロッコ、右がモリタック)。テレビで良く見る経済アナリストとの関係は不明。
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モリタック:そうでした・・・。

閣下:大学できちんと分子生物学を勉強した人間で、「遺伝子組み換え食品は危険だから食べたくない」などと言う人が一体どの程度いると思う?

モリタック:3人に1人ぐらいでしょうか。

閣下:ほとんどゼロだよ。俺は、血液型による相性診断を非常に強く信頼していて、助手選びで血液型を調べている生化学専門の大学教授は見たことがあるが、遺伝子組み換え食品の危険性を真剣に危惧している専門家は全く見たことがない。もちろんそういう人もゼロではないと思うが、俺の個人的な経験を基にして言えば、その頻度は非常に低いはずだ。

モリタック:じゃぁ、遺伝子組み換え食品は安全なんですか?

閣下:「絶対に安全」なんて言えない。先日も石鹸に含まれている小麦の分解物でアレルギーになって大変、という話があったが、天然物、遺伝子組み換えに関係なく、食べ物には一定のリスクが存在する。それを同じ土俵で比べたら、例えばジャガイモや玉ねぎは危険だから食べられない、なんてことになりかねない。

モリタック:ジャガイモや玉ねぎは危険なんでしょうか?

ヒロッコ:そういう論文があるわよ。食べ過ぎたら毒になるものはたくさんあるわ。

註釈:ジャガイモ
ジャガイモの芽には「ソラニン」という有害物質が含まれる。成人の場合、0.2〜0.4グラムを食べると中毒になる。ジャガイモの食べ過ぎは要注意。


モリタック:そうなんですか・・・・。

閣下:危険性を考えれば、遺伝子組み換えよりも危険なものはたくさんある。組み換えかどうかが、食品の危険性の決定的差ではないのだよ。そして、危険か、危険じゃないかと同時に、考えなくちゃならないことがある。

モリタック:なんですか?

閣下:遺伝子組み換え作物抜きで生活が成り立つか、ということだ。それを考えるには、例えば日本の食料自給率、海外の遺伝子組換え作物栽培動向、産業としての農業・畜産業のあり方、生活コストなどを考えなくちゃならない。それらを一つ一つ説明するのはなかなか大変だ。今回みたいな短い時間じゃぁ説明しきれない。

モリタック:簡単にお願いしますっ!

閣下:「遺伝子組み換え食品なしの生活は、もうすでに日本では非常に難しい」ということだな。

モリタック:仕方がない、ということですか?

閣下:いつも食べているからな。

モリタック:食べた記憶はないんですが・・・

閣下:米国産ダイズの92%、米国産トウモロコシの80%が遺伝子組換えなんだぞ。日本はダイズとトウモロコシのほとんどを米国からの輸入に頼っている。

ヒロッコ:正確な統計データはこんな感じです。

輸入量
トウモロコシ 16,460,000トン(うち、米国からが98.7%)
ダイズ 3,711,000トン(うち、米国からが72.3%)
出典:農林水産省「農林水産物輸出入概況(2008年)」

国内生産量(平成20年)
トウモロコシ ---トン(ほとんどゼロのため、統計データなし)
ダイズ 261,700トン(農水省のサイトより)


閣下:日本のトウモロコシ輸入量 16,460,000トン、そのうち、米国からが98.7%、米国産トウモロコシの80%が遺伝子組み換えだ。ということは、単純に計算するなら、日本に存在するトウモロコシの75.8%が米国産の組み換えトウモロコシだ。

註釈:単純に計算するなら
実際には日本向けに特別に非組み換えの作物を栽培している農家があるため、この割合はもっと低いと考えられる。ちなみに非組み換えは特別オーダーなので価格は高め。組み換えの農作物に比較して1.2〜1.5倍程度高いとのこと。


モリタック:ダイズはどうですか?

閣下:日本のダイズ輸入量 3,711,000トン、日本の輸入依存率は約100%、うち、米国からが72.3%、米国産ダイズの92%が遺伝子組み換え。単純に計算するなら66.5%ぐらいが米国産の組み換えダイズだな。

モリタック:でも、今朝、私が食べた納豆には「遺伝子組換えでない」と書いてありましたよっ!あれは嘘ですか???

註釈:遺伝子組み換えでない
「遺伝子組み換えでない」という表記は任意の表記で、強制されているわけではなく、製造者が勝手にやっている。この表記をするためには一定のハードルをクリアしなくてはならず、その分の費用も商品価格に上乗せされているはず。


閣下:嘘ではない。商品に「遺伝子組換えでない」と書いてあるなら、その原料に含まれている組み換え作物は5%以下しか含有されていない。

モリタック:えっ?ゼロじゃないんですか?

ヒロッコ:米国で生産されているダイズやトウモロコシはもうほとんど全部が遺伝子組み換えなのよ。日本向けに非遺伝子組み換えの作物を作ってくれる農家もあるんだけど、それらを商品化するための工場とかは一部が遺伝子組み換えと一緒だったりするの。だから、どうしても輸入食品の中には組み換えが含まれてしまうのよ。

モリタック:知らなかった・・・。

閣下:お前が知っておかなくちゃいけないことは他にもある。そうやって輸入されたダイズやトウモロコシがどこに消えていると思う?

モリタック:家畜の餌ですか?

註釈:家畜の餌
現在日本で利用されている飼料はほぼ100%が遺伝子組み換えと予想される。ただし、一部の生産者は「非遺伝子組み換えの飼料を使っています」と表明している。例えば清里にある「中村農場」はそういう生産者のひとつ。非遺伝子組み換え飼料の効果は不明だけれど、ここの卵は美味しい。


閣下:良い勘をしているな。だけど、それだけじゃない。

モリタック:でも、納豆も、コーンフレークも、スイートコーンも、ほとんど全部、「遺伝子組換えでない」って書いてありますよ。遺伝子組換えです、っていう商品を見たことがないんですが。

閣下:イオンや生協に行けば「遺伝子組換え不分別」って書いてある商品がたくさんあるはずだ。

モリタック:私はいつもオリンピックとサミットなので。じゃぁ、イオンに行くのは辞めておこう。

閣下:そう思うのが素人の浅はかさだ。例えば、お前が大好きなジンジャエール。イオンで販売されているプライベートブランドのジンジャエールには「遺伝子組換え不分別の原料を使用しています」と明記されている。

モリタック:じゃぁ、私はコカ・コーラかカナダドライのジンジャエールを飲みます。

閣下:そっちも多分同じだけどな。

モリタック:えっ???でも、不分別って書いてないですよ??どういうことですか??

閣下:別に書かなくても良いから書いてないだけだよ。いろんな物に「不分別です」とか、「組換えでない」とか書いてあるから、全部のものに組換えか、組換えでないか、書かなくちゃいけないと思っているんだろう?

モリタック:違うんですか?

閣下:それが違うんだな。食品の全原材料のうち、原材料の重量に占める割合が上位3位以内のもので、かつ原材料の重量に占める割合が5%以上を占めるものだけだ。

モリタック:難しくて良くわかりません。

ヒロッコ:たくさん使ってないなら表示しなくても良い、ってことよ。

閣下:ジンジャエールに含まれているのは、トウモロコシ由来の甘味料だ。これに関して資料があったよな?

ヒロッコ:2009年に毎日新聞が国内飲料メーカー8社に対して行ったアンケート調査では、アサヒ飲料、キリンビバレッジ、サッポロ飲料、サントリー、ヤクルトの5社が「不分別を利用」、ポッカが「不分別使用の可能性がある」、日本コカ・コーラは「情報公開を義務づけられた内容以上の質問には答えられない」と回答し、「使用していない」と回答したのは大塚製薬1社のみでした。

モリタック:使ってるんだ・・・

閣下:そう考えるのが普通だな。イオンは、別に義務がないのにわざわざ「使ってます」って表明しているんだよ。

ヒロッコ:もちろん、ジンジャエールだけじゃないわよ?

モリタック:他にはどんなものがあるんですか?

閣下:遺伝子組み換えトウモロコシやダイズを原料に使っているものだと、菓子パン、お菓子、清涼飲料水、調味料、食用油とかだな。

モリタック:凄くたくさんあるじゃないですかっ!

ヒロッコ:だから、モリタックが知らないだけなんだってば。遺伝子組み換えが嫌だって言い始めたら、ジュースもお菓子も、あなたの好きなモノはほとんどダメなのよ。家畜の飼料だってほとんど組み換え作物なんだから、それが嫌だって言い出したら、食べられるものはほとんどなくなっちゃうわよ。

モリタック:肉も卵も牛乳も、全部遺伝子組み換え作物を食べた動物から作られているんですね・・・。

ヒロッコ:そういうことね。

モリタック:遺伝子組み換えを全部なしにしたらどうなるんですか?

ヒロッコ:お菓子も、パンも、油も、清涼飲料水も、肉も、卵も、牛乳も、天然の魚と野菜以外はほとんどなくなっちゃうわね。

註釈:菓子パン
遺伝子組み換えダイズ由来のものとしては、植物油脂、乳化剤、食用油脂、タンパク質加水分解物などがある。これらを含むものとして菓子パンは代表例だが、この他にも色々なものに利用されている。こうした添加物の原料の多くが米国産ダイズ。


モリタック:でも、納豆がありますよね!

ヒロッコ:納豆は非組み換えでも、納豆に入っているカラシやしょうゆ調味料は組み換えだけどね。

モリタック:そんなものにも入っているんですか???

ヒロッコ:あなたが知らないだけなのよ。

註釈:カラシ
カラシには遺伝子組み換えトウモロコシ由来のでんぷんが入っている場合がある。この他、トウモロコシ由来の添加物としては還元水あめ、果糖ぶどう糖液糖などの糖類がある。果糖ぶどう糖液糖の添加先としては清涼飲料水があり、甘いジュースを飲むなら、これを口にすることはほぼ避けられない。


閣下:その点、イオンはきちんと「遺伝子組換え不分別」と明記しているから高く評価できる。

モリタック:今日からイオンで買いものをします。

ヒロッコ:あんたの住んでいるところにはイオンがないじゃない。

モリタック:そうでした。じゃぁ、どうすれば良いですか?

ヒロッコ:11月30日に、総統閣下が「遺伝子組換え食品との付き合いかた」という本を出したから、これを買って勉強したら?みんなが組み換えについての真実を黙っているから、総統閣下自らが「全部白日のもとに晒してやる」と書いた一冊よ。

閣下:まずはそれからだなっ!

モリタック:今、Amazonで調べたら売り切れでした。

閣下:中古品が出てるみたいだぞ。

ヒロッコ:どれどれ・・・・って、4,055円ですよっ!!

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モリタック:えぇっ、もうプレミアムがついているんですかっ!!!しかも、シャア専用でもないのに通常の3倍近い価格とはっ!

閣下:ショッピングとは、常に二手三手先を読んで行うものだ。「総統閣下はお怒りです」も購入が必須だな!!!「みんなが面白いって言っているのに、売り切れで手に入らないっ」ってなっても知らないぞ!?



---------------特別書きおろし、ここまで----------------------

#「遺伝子組み換え食品との付き合いかた」もぜひよろしくお願いいたします。同じ著者が同時にこの2冊を出版する意味を考えていただけると嬉しいです。いや、意味じゃないですね、難しさ(^^;。かたや、クソ真面目、かたや、クソくだらない、正反対の2冊となっております。どこかで似たような話を聞いたな、と思い返してみると、それは中島みゆきさんの歌としゃべりのギャップでした。子供の頃から強く影響を受けているからなぁ。

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