2012年02月20日

3,000組の親子を聞き取りして心理主義的な主張を繰り広げている事例

「現代ビジネス」って、時々興味深い記事が載っていたりして侮れないなぁ、と思っているのだけれど、時々ど三流の記事も載っていて油断がならない。今日見つけたのはこんな記事。

獨協医大・永井伸一名誉教授「子供をダメにする」親の研究
3000人の親子を聞き取り調査して分かったこと
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31665

こんなダメな記事に対してツイッターのつぶやきが1,000以上もついているというのだから、日本国民の馬鹿さかげんも行き着くところに行き着いた感がある。この記事、何しろ、徹頭徹尾、単なるレッテル貼りなのである。この記事を読んで「そうなのかぁ」と感じる人は、それだけでもうすでにダメ親なんじゃないだろうか。もちろん、子供の性格や成績と親には密接な関係があると思う。しかし、「親がこういう職業だったら、子供はだめになる」みたいな話は全く同意できない。順番に見ていこう。

たとえば、無気力症候群になる学生には、父親が高学歴だったり、成功者であるというケースが非常に多かった。


いきなりこれである。ははぁ、高学歴な親をディスって、大衆を味方につける作戦だろうか。「やっぱり、お父さんが高学歴の◯◯さんの家庭はねぇ・・・」などと、大勢の、旦那が低学歴の主婦の皆さんのご機嫌取りをしているのかも知れない。

両親共に教師という家庭でも、多くの場合子育てはうまくいっていませんでした。


僕も、実は教育関係者はあまり好きではないのだけれど、僕の場合は、僕の教育に対する主義・主張が多くの場合で既存の教育者と相入れず、また相入れた場合は「では、なぜ変えていこうという努力をしないのか?」となってしまうからだ。ところが、このなんとか氏は、「ヒアリングしてみたら、問題児の両親が教師であるケースが少なくない」と決め付け、さらにこんな感じで推測している。

学校の先生をしていると、家に帰っても生徒に接するのと同じように、教訓的なことばかり話してしまうんです。すると、子供は学校でも家でもお説教ばかり聞かされて、もう参っちゃいます。


叩くのは高学歴や教師だけにとどまらない。

派手好きでしょっちゅう外出している母親やワーキングマザーの子供も、問題を抱えやすい傾向にあります。


派手好きでしょっちゅう外出している母親はともかく、ワーキングマザーまでもが問題視されてしまった。こうなってくると、現代社会では多くの家族を敵にまわすことになるわけで、この人がやりたいことが良くわからなくなってくる。ちなみに僕は小学校1年生の6月に白血病で父親を亡くし、以後、ずっと鍵っ子の一人っ子として育ったが、普通に大学に合格する程度の勉強はできた。

っていうか、「傾向がある」とか言うならまずはデータを出せよ、という話。データがあって、因果関係が証明されて、初めて「科学」だろ。

実証に裏打ちされた永井氏の教育哲学は、きわめて明快だ。


と書いてあるが、教育哲学などというものは読み取れず、なんか、どこかのがんこ爺が偏狭な価値観で的はずれなことを言い連ねているように見える。

うちの学校に多かったのが、両親も医者、兄弟も医者という医者一家タイプ。


両親も医者、兄弟も医者、という家庭は決して珍しくなく、家族に医者が多かったから問題児が多かったんじゃなくて、あんたが働いていた大学が単に三流大学で、三流の学生が多かったからなんじゃないの?と思ってしまう。

小さい頃から英語とか、算数とか、偏った学習をゴリゴリやらせてもダメなんです。情操教育で人としての土台をしっかり作る前に一方的に知識をつめ込んだらどうなると思いますか。良い結果が出るはずがありません。


こんなのも程度問題。情操教育と詰め込みと、両方やれば良いだけの話だし、順番なんてどうでも良いんじゃないの?てか、根拠は何だよ、と。

ただ、人間的に変なのがいっぱいいる。


返す刀で日本以外のアジア諸国の学生を切っているわけだけど、変なのがいっぱいいるって、何なんだろう。僕の知る範囲では、同級生としても、生徒としても、アジア諸国の留学生は日本人以上に勤勉で、マジメで、まともな学生が多かったと思う。

獨協でも、留年してしまった学生の中で、真面目な性格のグループと自己中心的な性格のグループとの退学者数を比べてみると


大学関係者としてこういう発言をするなら、まずは「真面目な性格」と「自己中心的な性格」の定義と、調査方法を提示するべき。

これらの個々のデータを体系的に見てみると、成績不振の学生には、親の育て方・接し方に、いくつかの共通した特徴が見られることが分かりました。


自称「体系的」(笑)。

子供の意思を尊重することはもちろん大事なことですが、自由にさせてしまえば子供は当然だらしなく、自己中心的に育ちます。そういった学生は、早起きできなかったり、きちんと食事を取らなかったりと、不規則で怠惰な生活を送っていました。


なんだこれ(笑)。

圧迫系の育て方をされた子供は、消極的で、困難にぶち当たるとすぐに逃げる臆病な性格になってしまいます。先ほど挙げたような、常に兄弟姉妹と比較されてきたり、父親が絶対的権威を振りかざす息苦しい家庭の出身者です。


決めつけは続くよどこまでも〜。

神経質な親の子供は、同じように神経質で引っ込み思案になるし、自己中心的な親の子供は、やはり利己主義的で人の気持ちを汲み取れない子供になります。


うーーーん。

しかしその子は、積み木を上に積み上げないで、ずっと床に並べていたんです。何かおかしいと思って、その子のお母さんを調べたら、うつ病であることが分かった。

 そこで、その後しばらくその幼稚園に通って、女の子に積み木の正しい遊び方を教えてあげたんです。しばらくすると、その子はちゃんと積み上げて遊ぶようになりました。


この記事の中で最も「アホですか?」と感じたのがここ。あのさ、積み木の正しい遊び方ってなんだよ。自分で自由に発想するから素晴らしいのであって、大人が「これが正しい積み木の遊び方」って教えるようなことじゃないよね。床に並べることの何が悪いのか、さっぱりわからない。むしろ、人と違った遊び方をしていた子供の方に可能性を感じるんだけど。あげく、「その子のお母さんを調べたら、うつ病でした」って、何それ。いつも言うけれど、相関があるのと因果関係があるのは全く違う。関係があるかどうかさっぱりわからないことについて、さも因果関係があるように述べるのは、科学系の人間としては最低レベルだよね。

正しい教育とは何なのかを考えてきました。そうして辿り着いたのが、中学生までに「吸収力の高い脳作り」、「遊び学習」、「秩序形成」の3つを念頭に置いて、「脳教育」をするということです。


うーーーーーん。高校や大学の教育には意味がない、と。

15歳をピークに、脳の成長の勢いはどんどん衰えてしまいます。それまでに、「シナプス」と呼ばれる、情報を吸収・伝達するところをたくさん作っておくことが大事なんです。


何か、科学的な根拠があるのかなぁ。

幼少時に母子の絆を確立することが重要です。子供にとって「母の胸」は一番安らげる場所です。そこにホームグラウンドが確保されれば、子供は安心して冒険に出て行けます。そして、ひとしきり遊んだら母の元に帰ってきて甘え、再び冒険に出向く準備を整える。そうやって次々に新しい経験を積み重ね、脳の情報量は増加されていきます。


なんか、根拠薄弱。

小さい時に十分な愛情を与え、スキンシップをとって育てたかどうかなんです。


すいません、僕はできない子供だったようです。

楽しいと感じれば、脳は活性化し、グングン新しいことを学べるのです。逆に面白がれなかったら、何を見ても聞いても知識は深く根付きません。だから、小さい時から塾に入れてしごいたとしても残念ながら本当に頭のいい子は育たないんです。


遊びが面白くて、勉強がつまらない、という決めつけですね(^^; 僕は読書も、数学の問題を解くのも楽しくて仕方がなくて、だから受験勉強も楽しかったんですが(^^;

ミツバチは生まれてから8日で働きバチになるんですが、最初の3~4日は自由に飛びまわって遊び、この間に巣の内外の情報や幼虫の育て方を学ぶんです。働きバチですら遊びを必要とするのですから、幼少期の遊びと学習が、いかに密接に関わっているか分かると思います。


ハチと人間を一緒にするとは(爆笑)。これが成り立つなら、「馬の子供は生まれたらすぐに自分で立つから自立心が養われます。赤ん坊が生まれたら、すぐに立たせなさい。抱いてはダメです」とかも成り立ちそうですね。

家庭で社会の規範や秩序を教えるのは、父親の役割です。父親が秩序を強く指向する人だと、子供も秩序を重んじるようになる。反対に、父親が秩序を否定して生きる人間だと、子供は自分に甘く、だらしなくなってしまいますし、困難にあたると、簡単に諦めてしまう。


どこまでいっても決めつけなんだなぁ。

頭の良い子供、自主的に勉強できる子供に育つかどうかは、中学生までに親がどう関わったか、それによってどのような脳が作られたかで決まるのです。


ひどい。

子供の学習能力は、親から受け継いだ遺伝子からも、もちろん影響を受けます。


ほほう。例によって根拠はないわけですが・・・。

「まぁ、そうだよね」というところも極僅かに存在するんだけど、ほとんどはトンデモな内容。こんなのを読んで、「へぇーーー」とか思う親がいたら絶望する。

一方で、こちらの記事はとても参考になるので、どうせ読むならこっちを読めば?と思う。

Best Doctors Message #4
患者のために大事にしなければいけない2つのこと

ただし、「Messege」という非常に恥ずかしい誤植があるサイトなんだけど、ね。

この記事へのコメント
読解力なさすぎて、笑ってしまった。
あなたバカですね(笑)
Posted by あほ at 2016年10月25日 16:29
> 読解力なさすぎて、笑ってしまった。
> あなたバカですね(笑)

嗟呼、燕雀安知鴻鵠之志哉。
Posted by 元木 at 2016年10月26日 04:44
根拠のない記事に驚き、大学教授っていっても何の専門?どういう人?と気になって調べようとしたら、自分と同じような感想を持った方がいらしたので読ませていただきました。
Posted by 通りすがり at 2020年06月08日 01:25