2012年05月09日

アンフェアな月

秦さんの「推理小説」は僕的にはあんまり面白くなかったのでブログでも取り上げなかったんだけれど、「アンフェアな月」は面白かった。両方とも、脚本家らしく場面が飛び飛びになるのだけれど、「推理」よりも「月」の方がその頻度が低かったのが良かったんだと思う。

「推理」は、一つ一つの場面をもっと丁寧に書いてくれれば頭に残ったんだと思うのだけど、さらっとしすぎていて、伏線が伏線の役を果たさなかったのが痛かった。演劇やテレビなら画像として頭に刷り込まれるのだけれど、テキストは刷り込み効果が薄いので、記憶力が落ちている僕みたいな読者にはキツイ(笑)。

一方で「月」も、「もし僕が編集だったら絶対にこの形では出さなかったよな」と思う内容なのは間違いがないのだけれど、伏線を忘れてしまうほどには伏線があっさりしていなかったので、最後にピッタリとピースがはまる感じがあった。

難点は、1.文体の不統一、2.「確信犯」の度重なる誤用、3.「は?」の連発、4.パラグライダーといううスポーツに対する取材不足の4つだろうか。3つ目は秦さんの芝居の脚本でも良く見かけるのでどうにも気になるのだけれど、僕の周りの日本人は、何か想定外のことが起きたときは「え?」という人が多い。「は?」はほとんどいない。だから、登場人物の中で数名が「は?」を使うのはともかく、全員が「は?」で、一人も「え?」と言わないことに物凄く違和感を持つ。あと、パラについては「健康な人間だって、一時間もすればヘトヘトのハード・スポーツだ」という記述は完全なる間違い。僕はパイロットの資格を持っていたくらいにはパラをやっていたことがあるのだけれど、パラは靭帯を切って膝が不自由な人間でも全然楽勝な、スポーツとも言えないレクリエーションである。

#でも、ここで挙げた「難点」は全部編集フェイズで修正可能なことなんだよね・・・。

友人の本ということで点数評価はしないけれど、これは面白いと思う。ただ、これを楽しむためにはまず「推理小説」を読まないとなんだよね(^^;ということで、2冊まとめてどうぞ(笑)。

 

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