2012年07月13日

苦役列車

最近の邦画の流れというのは大きく6つぐらいに分類される(一本の映画で2つ以上の性格を同時に持つ場合もある)と思う。

1.テレビドラマの続編など、テレビ局が関係した映画。代表作はアマルフィ、クロサギ、外事警察、三丁目の夕日。
2.画面上に吹き出しが出たりする漫画的表現や、突然ミュージカルになるインド映画的表現を多用する、J-コミック・ムービー。代表例は下妻物語、モテキ、愛と誠。
3.ジャニーズやAKBのタレントを配した映画。代表例はもしドラ、源氏物語、僕等がいた。
4.監督のカラーが色濃く出た映画。代表的な監督は西川美和、園子温、小泉尭史、李相日、三谷幸喜、北野武。
5.大事件が起きず、ところどころでクスクス笑ってしまうような、淡々とした映画。代表例は奇跡、トウキョウソナタ、まほろ駅前多田便利軒。
6.アニメ。例はたくさんある。

この中で最も興行的にパッとしないのが4と5なのだが、佳作率が高いのが特徴で、僕のように年間70本ぐらいを映画館で観ている人間でも、あとでDVDで観て「なんでこんな面白い映画を映画館で観なかったんだろう!」と思ってしまうこともしばしばである。そして、この映画は、4とか5のカテゴリーに分類される。

時代はバブル期の昭和60年ごろ、舞台は東京、主人公は不幸な身の上の、日雇いアルバイトで食いつないでいる若者。この主人公が、何かというと自分の不幸を振りかざして僻みまくる。コンプレックスと、中途半端なプライド、そして、いざとなると相手の顔を直視できない小心さをまぜこぜにした、一般人から見ると非常に面倒くさいタイプの男。それを、森山未來が好演している。モテキでもそうだったけれど、こういうちょっと、いや、凄く屈折した若者を演じさせると森山未來というのはとても上手い。相手役は高良健吾で、ハンサムで無口で「なぜ日雇い?」という若者をこちらも好演している。マエアツはもしドラ同様、無難な演技(海のシーンはここまでやったかー、というぐらいに熱演)だけど、彼女の問題点はルックス(笑)。もしドラでは川口春奈に完全に食われていたけれど、今回はライバルが不在なのが救い。個性派脇役としては客も呼べて、使い勝手が良いのかも知れない。

脚本は細かい部分のできが良くて、あちこちで「クスクス」っと笑ってしまう。

非常に静かな映画で、どこかで大爆笑してしまうとかではないのだが、出演者たちの突拍子もない行動についつい笑わされる。個人的に一番良かったのはカラオケのシーン。別に感動的な場面でもないと思うのだけれど、理由もなく鳥肌が立った(笑)。こんな経験、あんまりない。一方でラストの仕上げは微妙。それまでのトーンと完全に異なる展開はなんでかなー、と。

ちょっと気になったのはマエアツの役で、はて、この展開だと、何のためにいたんだろう?と思ってしまうのだけれど、そのあたりは大人の事情(笑)なのかも知れない。というか、5のカテゴリーの映画はどうしたって興行的に苦戦するのが明白なので、マエアツを起用して3のカテゴリー色を追加し、AKBヲタの人たちを呼び込んで、少しでも日本映画の裾野を広げるのは悪くない。

なお、監督のティーチイン付きの試写会だったんだけど、「何でもあり」とのことだったので、動画を撮影しておいた。質問の声とかしっかりと拾えてないし、キャプションもつけてないけれど、興味のある方はこちらをどうぞ。

前編


後編



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