2013年01月31日

脳男

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Yahoo!映画のレビュアー試写会で鑑賞。

二階堂ふみ、染谷将太の「ヒミズ」コンビが存在感を見せつけている。特に二階堂ふみが好演していて緊張感が途切れない。彼女が演じた女性は“キチガイ”だが、その狂気が非常に良く表現されていた。

痛みを感じない、感情がない「脳男」と爆弾魔との対決が縦糸となり、横糸で犯罪者の更生を扱っている。縦糸については爆弾魔の側からの描写が少ないためにちょっと一方的になっているし、横糸は横糸で、縦糸との絡み具合が微妙だ。この作品においては、横糸は物語に奥行きを与えるべきなのに、残念ながら、その役割を十分に果たしているとは言えなかった。これは脚本の問題だと思う。

また、ラストのシークエンスが唐突、かつ表現がわかりにくく、「あれ?何が起きたの?」と戸惑ってしまった。この作品の流れなら脳男はあんなメールは出さないし、出すとしても、過去形のメールのはずだと思う。予告メールなど、送る理由は何一つないのだから。もちろんその後の(非常に説明的な)描写によって何が起きたのかはわかったのだが、このあたりも脚本と、加えて演出にも難があったと思う。演出に難あり、といえば、警察の無能っぷりが酷いし、あんなでかい病院が停電したら、もっと様々なところに問題が発生するはずだ。そのあたりの描写が不十分なので、現実味が削がれてしまう。

主役の生田斗真は感情のない脳男を好演していた。ただ、身体能力が優れているはずなのに、なぜか喧嘩では圧倒的な強さを見せつけられない点がどうだったのか。もっと圧倒的な強さで他と対峙して欲しかった。また、爆弾魔は爆弾魔で、描写が少なく、「知能犯」というカラーが出なかった。「感情のない強者」と「ためらいのない狂気」の対決という構図を作ってくれたら、もっと締まった作品になっていたのではないかと思う。残念ながら脳男にはそこまでの強さが、爆弾魔には圧倒的な頭脳がなかったので、両者の戦いにシリアスな部分が欠けてしまったと思う。

つまらない映画ではない。素材が良いので、もっと良く出来たんじゃないかな?と、欲張りたくなる。

役者では、松雪泰子はイマイチだった。彼女にはシリアスな役よりも、ちょっと抜けた、デトロイト・メタル・シティのような役が似合う。江口洋介は意外と良かった。でも、松田優作ならもっと良かっただろうな、と思う。

評価は☆1つ半。

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