2013年03月26日

石神秀幸氏出版活動十五周年記念パーティ

昨日は石神さんのパーティがあって、渋谷まで出かけてきた。

僕がやってきたラーメン評論は「評価」という軸を常に中心にしていて、まずいラーメンを「まずい」と切り捨てるのが特徴である。一方で、僕は仲良くなったお店を「まずい」と切り捨てるだけの度胸がないので、お店とは極力仲良くならないようにしているし、ラーメン愛好家とも距離を置くようにしている。おかげで、僕が知人なのはラーメン店ではがんこ八代目、一本気、渡なべの3店の店主だけ、ラーメン愛好家はそこそこに知人がいるけれど、ここ数年で会った人はゼロだった。

今回のようなパーティも普通なら顔を出さないのだけれど、申し込みの締め切り直前に、以前講談社の雑誌などでラーメン四天王として一緒に評論活動をやっていた北島さんが申し込んでいたのを見かけて、参加することにした。この間の冬だったか、北島さんがTwitterの名前を「入院中」としていたのを見かけて、大きな手術もした様子だったので、ちょっと心配していたのである。

予想通り、パーティに来ている人はほとんど全員が知らない人で、僕が挨拶した知人はoosakiさん、北島さん、渡辺樹庵さん、そして石神さんの4人だけだった。

大崎さんはちょっと髪が薄くなって、またちょっと太った気がしたけれど、顔色は以前ほど悪くなかったようだ。ひっきりなしに誰かが挨拶に来ていたのでなかなか話しかけるチャンスがなく、相変わらずラーメンおたくのカリスマなんだなぁ、と思ったのだけれど、以前ほどのエネルギーは感じられなかった。ラーメン愛を原動力にして突っ走ってきて、少々お疲れなのかも知れない。「また麻雀でもしましょう」と言っておいた。武内さんしか情報発信者がいなかった時代に、大崎さんと僕で「ラーメン四天王を結成しましょう」という話をしたのは、神田の雀荘だった。

北島さんは心配していたよりはずっと元気で、まだラ博にいた時のような端正な顔立ち(この時も大病をして、痩せていた)というよりは、いつものしうさん、という感じだった。こちらが心配する以上こちらのことを心配されてしまうくらいで、一安心という感じだった。なくしてみないとわからないのが健康のありがたみなので、北島さんは人一倍、それを感じているのだろう。手術の影響もあって、以前のような勢いで食べるわけにはいかない様子だった。好きなものを好きなだけ食べられるというのはありがたいことである。

大崎さんにしても、北島さんにしても、僕とは全く違う、ラーメン愛の持ち主で、ラーメン界の発展を願い続けている人たちなので、彼らが勢いをなくしていると、なんとなくラーメン界の先行きが心配になってしまう。とりあえず大崎さんには「KDPは凄く簡単なので、月刊大崎でも創刊したらどうか」と言っておいた。

石神さんはメインだったので忙しく走り回っていて、ほんの少し言葉を交わす程度だった。終始「狭くて申し訳ありません」と謝っていたけれど、パーティだから仕方がない。ただ、会場で出された料理は今三歩くらいで、食のジャーナリスト(?)のパーティでこれはない、と思った(^^;。でもまぁ、今回は石神さんが幹事ではないので、店選びにも口を出していないのだろう。

渡辺樹庵さんとはブログ上ではやり取りがあるのだけれど、お店に食べに行っても不在だったりして、会ったのは5年ぶりぐらいだろうか。彼が作り手として面白いのは、ラーメンおたくとして食べたラーメンを、自分で再現してみるところである。完成品である「ラーメン」を素材レベルに分解して、それを調理によって再構築している。これは料理人に求められる重要な能力で、「こういう味にしたい」と思った時に、それを実際に作れることは、非常に大事だと思っている。もちろん、膨大な数の試行錯誤や、幸運に恵まれれば、そういう才能がなくても美味しいラーメンを作ることは可能だし、世の中の多くのラーメン屋は、実際のところ、そうやって自分のレシピを作っているのではないかと考えているのだけれど、渡辺さんはその部分が明確に違っていて、ゴールをイメージしてからスタートできる、ちゃんとした調理人だと思う。彼は「遊び」と称して久留米ラーメンやら、博多ラーメンやら、色々と作っているのだけれど、そういう一つ一つの遊びが、同時に渡辺さんの技術を向上させているし、彼自身、そういう遊びを通じて自分の引き出しが増えていっていることを自覚しているはずである。渡辺さんは富山で彼がプロデュースしたお店のご主人を連れてきていて、パーティの参加者に紹介するので忙しそうにしていた。近いうちに飲みに行く約束があるので、昨日は簡単に挨拶をしただけだった。

帰りにおみやげで「石神秀幸のラーメンマップ 東京1」をもらったので、池袋と山手線上のお店をチェックしてみた。僕の本とのダブり具合のチェックが中心なのだけれど、一番のポイントは僕が知らない店が載っていないかどうか、である。池袋本については、「池袋のラーメン屋のほぼ全て」を標榜しているし、山手線本については「各駅でイチオシ」としている。おまけにタイトルが「絨毯爆撃」だから、石神さんが推薦しているお店をチェックしていないのはさすがにまずい。しかし、ざーーーっとチェックしてみたところ、抜けはひとつもなさそうである。逆に、「あの店が載っていないけれど、食べていないのかな?それとも、眼鏡に適わなかったのかな?」と思うところがあったので、今度、ゆっくりお酒を飲みながら聞いてみようと思う。

  


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