2013年04月06日

64(ロクヨン)



長文を読ませるだけの筆力はさすがと思うけれど、扱っているテーマがともかく地味である。警察組織の内部抗争みたいなものが延々と描かれていくので、犯罪ではなく組織について書かれた人間ドラマになっている。著者の最も得意としているフィールドなのはわかるけれど、警察の広報と新聞記者のやり取りがずっと続いていくので、推理小説っぽさが希薄である。

主人公がつんぼ桟敷に置かれている設定なので、必然的に読者にも情報が与えられず、主人公によってミスリードされていく。その、構成に自由度がないところが少々腑に落ちない。

未回収の伏線が色々とあるのだが、それらが全部回収されないあたりは潔いというか、逆に全部回収されちゃったらそれはそれでおかしいよな、と思う。このあたりは続編の含みを持たせたのかも知れない。

相当に練りこまれていることは感じさせられるのだが、「耳触りが良い」といった違和感のある表現もいくつか見受けられ、この点では宮部みゆき作品などと比較して、ちょっと質が低い印象だった。

犯人の人物像が直接的に語られず、小説を通してもそれが全然見えてこないところもマイナスポイントだと思う。

「警察の秘密」と「犯人の手がかり」の2つについてのアイデアはそれなりだと思うけれど、過去に読んだいくつかの傑作ミステリに比較すると、かなり軽い(物理的には重い)感じがする。

評価は☆1つ半。

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