2013年04月12日

おのれナポレオン

13_04_11_2587


三谷幸喜作・演出、主演野田秀樹の新作ということで観てきた。僕の中の劇作家のランクは野田秀樹の方が三谷幸喜よりもずっと上なんだけれど、野田秀樹をどうやって料理するのか、野田秀樹がどうやって料理されるのか(僕が覚えている限り、野田秀樹が他人の演出する舞台に出るのは初めて)を楽しみにしていた。

内容は野田秀樹扮するナポレオンの死の謎に迫る、というものだが、脚本自体は非常にストレートで、観客の頭をぐちゃぐちゃにするような意地悪な仕掛けは全くない。一応謎解きの要素はあるのだが、案内役がきちんといて、過剰に親切である。特に心に残るようなセリフがあるわけでもなく、さーーーーっと始まって、さーーーーっと終わってしまった感じだ。加えてラスト近くでは「大きな仕掛け」の謎解きが親切すぎて鬱陶しいレベルだった。この手の、盲人を案内しているような親切心は三谷幸喜の映画でもときどき見受けられるのだが、個人的にはあまり好きではない。また、物語を解釈する自由度が非常に低く、恐らく10年後にこの芝居を観たとしても、新しい発見が全くないと思う。過去からの名作と言われている小説は、繰り返し読むと、読んだそれぞれの時なりの感想を持つものだ。だから、本を捨てることができなくなる。芝居の場合、「どうせその場限りなのだから、小説とは違って、その場で楽しめることが重要」という考え方もあるだろう。三谷幸喜はあて書きで有名な劇作家で、「その役者」であることと同様に「その場」を大事にするのかも知れない。しかし、同じようにあて書きをすることで有名な野田秀樹の作品には、名作小説のような自由度がある。この、「自由度」をどう評価するのかが、この芝居の評価を上下するのだと思う。あと、予想していたよりも笑いの要素は控えめだった。まとめれば、ミステリーの要素が薄く、ストーリー自体の奥深さはなく、三谷のテーストであるはずの笑いも控えめ、ということで、ホンとしては特徴が少ないものだった。

出演していた役者たちはどれもがなかなかに芸達者で、Q列での鑑賞であっても声が届かないということもなく、十分に楽しめた。セリフを間違えたり、噛んだりすることは何度もあったけれど、まだ幕が開いて間もないということもあって仕方がないところだろう。最近は自身の作・演出ではすっかり動きが抑えられていた役者としての野田秀樹が、この舞台では十分すぎるくらいに活躍していて、昔の野田秀樹を知っている人間にとっては嬉しい舞台になっていたと思う。

この芝居が、あの座席(1階Q列11番)で9,000円(ぴあの優先を使ったので、実際にはさらにシステム利用料がかかっている)というのは高すぎると思う。この価格で納得できるのは、せいぜい前から5列目ぐらいまでだろう。「でも、チケット完売ならもっと高くても良いんじゃない?」という指摘は正論で、してみると、世の中の三谷幸喜人気は不当に(ただし、僕にとっては、だが)高い、ということなのかも知れない。5月9日に全国の映画館でライブビューイングがある。こちらは3,500円で、役者の表情などもきちんと観ることができると思う。今からチケットをとって(完売だけど)後ろのほうで観るくらいなら、こちらの方が良いかも知れない。映画館でのライブビューイングのチケットは13日発売。

関連エントリー
「エッグ」野田地図 第17回公演(@東京芸術劇場プレイハウス)二回目
NODA・MAP 第17回公演 「エッグ」(初日)
「南へ」千穐楽
南へ
野田秀樹さん 朝日賞スーパートーク
表に出ろいっ!
野田秀樹芸術監督就任記念プログラム「農業少女」
農業少女 バンコク・シアター・ネットワーク版
「匿名性」の文化から演劇を取り戻してください
野田秀樹 芸術監督就任記念 プログラム 『ザ・ダイバー』二度目
野田秀樹 芸術監督就任記念 プログラム 『ザ・ダイバー』
NODA・MAP 第14回公演 パイパー
現代能楽集検The Diver(ザ・ダイバー)
野田地図第13回公演「キル」
#まだまだあるので、興味がある人はこのブログの「演劇」カテゴリでお楽しみ下さい(笑)

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
はじめまして。世評とは若干ちがいますが、とっても的確なレビューで、共感しました。説明しすぎる、という点はまさにその通りだと思います。
Posted by まりる at 2013年04月26日 01:31
> 世評とは若干ちがいますが

僕は基本的に他人のレビューって読まないのでわかりませんが、世の中では好評なのかも知れませんね。
Posted by buu* at 2013年04月26日 23:44
はじめまして。
「おのれナポレオン」5/3に観てきました。

野田さんと三谷さんがタッグを組むと聞いた時、「三谷さんの笑い、私と肌が合うかな?」と、なんとなく不安に感じたのですが、悪い予感が当たりました。

はっきり言って、おもしろくはなかったです。

見終わってから、何がおもしろくなかったか考えてみて、脚本がダメなんだという結論に達しましたが、つまりは
説明し過ぎていたからなんですね。

三谷さんのお芝居もチケットが取りにくいことで有名ですが、その評価は自分の目で観てみることが一番だと思いました。
Posted by Blackbird at 2013年05月06日 12:13
> 三谷さんのお芝居もチケットが取りにくいことで有名ですが、その評価は自分の目で観てみることが一番だと思いました。

観てみないことにはなんとも言えませんからね。三谷映画も大体こんな感じで説明過多なので、こういうのが好きな人は結構いるんだと思います。それじゃないと、キャラメルボックスとかが人気劇団であり続ける説明がつきません(笑)。
Posted by buu* at 2013年05月08日 00:34
確かに、9000円は、高すぎる価格ですね。三谷は昔ほどは面白くない。映画やドラマも、無駄に大所帯、俳優名鑑みたいでつまらない。しかし、この金額でもチケ完売とは、まだネームバリューがあるのですね。
Posted by 名無し at 2013年05月09日 01:25
> 映画やドラマも、無駄に大所帯、俳優名鑑みたいでつまらない。

「俺って、こんな人ともマブなんだぜー」みたいな主張を感じます。
Posted by buu* at 2013年05月09日 10:53