2013年04月22日

日の出テレビのキャスターウォッチング パート3 草間剛さんの場合 後編

livedoorのブログには3万文字などという文字数制限があるらしい(笑) ということで、後編である。日米交流100周年のイベントについてFacebook上で草間議員が言及しているのを見かけて、僕は次のように書いてみた。

武器輸出三原則の撤回が平和に寄与すると考えている政治家が平和について何を言っても説得力がないよな、と僕は思います。返事をもらっていませんが、草間さんは日本の核武装にも賛成なんですよね?


これに対する草間議員の返答は次のようなものであった。

元木さん 電話に出てくれない元木さん…………世論が核武装にたどり着かないように、横浜市議としては姉妹都市との上海との交流に最大限務めて行き、相互理解と交流を閉ざさないようにしていきます。


僕の質問の主旨を外して答えてきたので、今度はこうやって書いてみた。

たかが横浜市議ひとりのちからでどこまでできるのですか?また、それが国会議員だとしても、自分たちの政権は絶対に維持できるのですか?


これに続くやりとりはこんな感じだった。

草間剛 元木さん 議員1人、しかも横浜市議一期生一人では勿論限界がありますが、だからこそ1人1人の議員が平和の脆さの自覚を持たなければいけないと考えています。自民党政権でも民主党政権でも維新政権でも、「絶対」ということは恐らくないと思います。だからこそ、「脆さ」を実感し、共有することが重要だと思います。
3月30日 1:30

元木 一朗 脆さを実感し、共有した上で、武器輸出三原則は撤回した方が日本の平和のために良いと考えているのですね?
3月30日 2:07

草間剛 武器輸出三原則の基本理念は堅持すべきだと考えています。
3月30日 2:23

元木 一朗 あれ?以前、原則の緩和に対して「平和に向けた行動と解釈し、支持を表明する」って言ってましたよ?
3月30日 8:28

草間剛 先日いただいたニュースに対して、3つの選択肢をいただきました。その中で提示された「平和に向けた行動と解釈し、支持を表明する」という選択をさせていただきました。東アジア情勢が緊迫する中で、F35など次世代機の導入は、個人として安全保障上必要だと考えます。部品を国際的 に融通しあうことは、競争上、また、安全保障上、コスト上考える必要があり、武器輸出三原則の基本理念は堅持すべきですが、
3月30日 9:05

草間剛 進める理由はあると考えました。
3月30日 9:06

元木 一朗
>部品を国際的 に融通しあうことは、競争上、また、安全保障上、コスト上考える必要があり、武器輸出三原則の基本理念は堅持すべき

堅持してませんよ。「政府は1日、日本製部品の対米輸出を武器輸出三原則の例外と認める」と毎日新聞も書いています。
3月30日 10:22


話がややこしくなって申し訳ないのだが、Facebook上では同時にもうひとつのやり取りが並行して存在した。こちらも合わせて掲載する。

草間剛 わざわざありがとうございます。人の世の中で戦争をなくすということは、正直非常に難しいと思っています。繰り返しになりますが、だからこそ、1人1人の自覚として
3月30日 2:11

草間剛 平和の危うさ、脆さを考えるべきだと考えています。そして、多数の正義が混在する人の世であればこそ、それぞれの国家が考えが異なりながら成立しているというバランスの中で、防衛を考えていかなければならないと思います。
3月30日 2:14

元木 一朗 武器の輸出は防衛ではないですよ?
3月30日 2:15

草間剛 武器輸出三原則の基本理念は堅持すべきと考えています。
3月30日 2:25

元木 一朗 あれ?以前、原則の緩和に対して「平和に向けた行動と解釈し、支持を表明する」って言ってましたよ?

良いですか?武器輸出三原則を表明したのは自民党の政治家です。その姿勢を堅持してきたのも自民党です。今回の件の前後で自民党の姿勢は変わったわけです。これが「政党の理念は変わり得る」というところで、僕はここで変更があったこと自体は特に問題だとは思いません。変更した方針に納得がいかなければ、僕たちは自民党に投票しなければ良いだけですから。また、戦争とか、平和とか、そんなことはどうでも良いと考えている政治家も同様です。自民党が変わったなら、それについていけば良いだけです。

でも、草間さんは「戦争をしたくない」という行動理念を持っていると表明しているわけです。別に「それなら離党しろよ」とは言いませんが、自民党の中にあっても、「この判断は支持できない」と表明できなければおかしくないですか?

僕はかねがね「僕は自民党の支持者ではない。河野太郎の支持者である」と言っていますが、なぜ河野太郎さんを支持するかといえば、党の方針が色々変わっても、彼の理念が揺るがないことと、その理念に賛同できるからです。
3月30日 8:36

草間剛 僕と河野先生を比較するのは大変恐縮な話ですし(比較にもなりませんし)せっかく真面目なちょっかいを出していただいてありがたいのですが、僕は今回の措置はかなり現実的なものだと考えています。
3月30日 9:10

元木 一朗 結局のところ、「党の方針なので逆らえない」ということですね。
3月30日 10:20

草間剛 元木さん 横浜市会の中でも意見はしませんでした。
3月30日 11:43

元木 一朗 つまり、河野太郎さんとか、小泉進次郎さんみたいに、しっかりした地盤のない議員、特に草間さんのような若い議員では、自身の理念を貫き通すのは、日本の政党政治では困難である、という理解で間違っていませんか?
3月30日 15:58

草間剛 失礼がないようにしなければなりませんが、河野先生や小泉先生はマスコミや玄人の中では鉄板地盤と見られています。僕は全く鉄板ではありませんが、怒られながら言いたいことを言わせていただいています。
3月31日 8:42

元木 一朗 なるほど。では、新型の戦闘機の製造に技術供与することは、日本が戦争に巻き込まれないために必要だと、平和が大好きな草間さんは本気で考えているということですね?
3月31日 9:11

草間剛 武器輸出三原則の基本理念を守っていく中で、現実的な防衛を考えていかなければいけないと考えています。
3月31日 18:30

元木 一朗 武器輸出三原則の基本理念はすでに破棄されています。草間さんの頭では、それが認識できないということで、ファイナルアンサーで良いですか?僕もくだらないやり取りを続ける気はありません。次の3つから選択して下さい。番号だけで構いません。

1.武器輸出3原則は保持されていると考えている
元木の対応>草間議員とはまともなやり取りが不可能と判断し、絶交します。また、今回のやり取りについてはブログで公開し、「結局のところ、いつぞやの社会党のようなことをやっている」と糾弾させていただきます。

2.武器輸出3原則は保持されていないが、上の判断であり、確固たるものでもない以上、上の意向には逆らえない
元木の対応>草間議員の立場は良くわかる。一方で、日本の政党政治や世襲議員の問題点、利点とも関係するので、今回は有用な情報が提供された事例としてブログで取り上げます。

3.武器輸出3原則は保持されていないので、この点については「納得できない」と表明する。
元木の対応>一番良いと思うけれど、これまでのやりとりでは無理と推測しています。仮にこれができるなら、河野太郎についで、二人目の「支持する政治家」としてブログで表明します。
3月31日 22:37

草間剛 かなり大がかりな「ちょっかい」をFB上でありがとうございます。ここまで元木さんの時間を僕なんかに割いていただいたことに感謝して、終わりたいと思います。ありがとうございました
4月1日 13:12

元木 一朗 あ、なるほど。かなり親切に書いたつもりだったんですが、回答できませんか。では、数日内にFacebookは絶交させていただきます。以後、コメントは読みませんので、何かありましたらお早めにどうぞ。また、各種打ち合わせで顔を合わせることはあるかもしれませんが、基本的にはリアルでも絶交させていただきます。さようなら。
4月1日 15:00

草間剛 絶交することは元木さんにお任せしますが、僕の考えとして、イスラエルを入れるか入れないかという判断は、諸条件の中でイスラエルを抜くという困難さと3原則の解釈との比較考慮だと思います。個人的には3原則の基本理念の中で、今後の日本周辺を取り巻く国際状況を考えれば、大変難しいと思いますが、政府の今回の判断は必要なことだと考えています。大きなポイントは我が国として「戦争をしない」そして他国から戦争を仕掛けられないという政策判断だと思います。3原則の目的は国際紛争を助長することを回避することだと思いますが、その理念はもっと上位である、価値観や主義が異なる世界の中で、戦争をしない、させない政策判断によるものと思います
4月1日 15:48

元木 一朗 何言ってんだかさっぱりわかりません。意味不明な言い逃れも自民党の伝統ですね。さようなら。
4月1日


ということで、僕は草間議員とは絶交した。こんな政治家(=一番大事な「自分の行動原理」と正対できない政治家)と付き合っているのは時間の無駄だと思ったからだ。

率直に言って、武器輸出三原則の実質的撤回と、世界平和(あるいは日本の平和)とは整合性が取れないと思う。結局のところ、草間議員は平和よりも自民党員でいることを優先したとしか考えられないのである。あるいは、政治家である以前に、自民党員である、と言うべきか。残念ながら、僕が求めている政治家像は違う。僕が求めているのは、きちんとした理念が大前提にある人間である。政党の理念は変わることがあるが、政治家の理念は変わってはならないと思う。草間議員からは、「自己の理念、あるいは行動原理」に対する覚悟が感じ取れない。

もしかしたら、武器輸出三原則と世界平和は、僕の想定外の方法で共存できるのかも知れないが、もしそうなら、草間議員はちゃんとそれを“人から指摘される前に”説明しなくてはならないはずだ。それが政治家としての責務だと思う。ましてや「意見しませんでした」などとはお話にならない。横浜市民も、こんな政治家に自分たちの税金を良く任せていられるな、とも思った。

しかし、こうしたコミュニケーションも全く無駄というわけではない。僕はこのやり取りを通じて、「政党に重要な部分(地盤とか、活動資金とか)を握られている議員(特に自民党)は、所詮、党執行部の操り人形でしかない」ということを感じた。これを裏返すなら、「地盤がしっかりしている二世議員であれば、政党の言いなりにならなくても済む」ということである。

そこで、自身も二世議員で、自民党の衆議院議員だったこともある笹山登生氏にTwitterで

「二世議員のように地盤がある議員はともかく、地盤のない若手議員は政党上層部の方針に逆らうことができず、自身の理念よりも政治家であり続けることが優先されるようになり、中堅になる頃には政党の方針と自身の理念の整合性を取るための屁理屈を振り回すようになる」という仮説を立てたんですが、どう思いますか?


と質問を投げてみた。これに対する笹山氏の最終的な感想は次のようなものであった。





前後を含めたやり取りについてはこちらのまとめ参照
http://togetter.com/li/483024

ここで、キッチュとは、まがいもの、まやかし、俗悪などの意味である。

引用が多いのでかなり長文になったが、そろそろまとめに入りたい。

僕の感想は、まず草間議員が決定的に「ネットの使い方」が下手くそだということだ。Facebookを馬鹿発見器2.0と名付けたが、彼も見事に馬鹿を晒したと思う。何が下手かといって、まず土俵をFacebookから電話へと移そうとしたことだ。電話は、内容が証拠として残りにくいので、言質を取られたくない人間にはとても便利なツールである。だから、自分の発言に責任を持ちたくない人間はすぐに電話をしたがる。僕の知っている範囲で、こういう人種として典型的なのが政治家である。先日からこのシリーズを書き始めているが、この間にも数回、福田峰之議員から携帯に電話があった。僕はその着信を全て拒否している。僕に用事があるなら、メールで連絡すれば良いだけのことなのに、彼らは電話を使いたがる。どこかのくだらないコンサルが「生活者とのコミュニケーションは電話を基本とすべし」と教えているのかも知れないが、もしそんなコンサルがいたとすれば、きっと40代以上のおじさんだろう。僕は「証拠」が残らない形でのやり取りが嫌いだ。言った、言わないの論争に行き着くことが目に見えているからだ。そして、最終的には既得権者が得をする。

土俵を移そうとした理由は不明だが、それに派生する形でもうひとつ、草間議員のネットの使い方には問題がある。それは「ストック」を活用できていない点だ。

以前、Twitterはフロー(使い捨て)、ブログはストック、Facebookはフロー寄りのメディアということを書いたけれど、政治家が使う限りは、どのツールも生活者からストックとして利用される。僕たちは彼らの発言を保存・記憶しておいて、選挙の時にそれを参考にする。その中には政治家にとって都合の良いものもあれば、悪いものもあるはずで、可能な限り都合の良い情報だけをストックしておきたいタイプの政治家は、なるべくネットで情報を発信しない方が良くなる。特に、生活者のご機嫌取りに右往左往して党の方針がコロコロ変わってしまうような政党に隷属している政治家の場合、党の方針と過去の自身の発信した情報との整合性が取れなくなると困るので、発信する情報はなるべく少ない方が良くなる。典型的な例が、今回の草間議員の行動で、自民党が武器輸出三原則の方針を変えてしまったおかげで、自分の過去の発言との整合性が取れなくなってしまった。

一方、きちんとした行動原理を持っていて、党の方針などとは無関係に、その行動原理に照らして情報を発信できる政治家であれば、ストックされる情報は多ければ多いほど、生活者に自分の考えを理解してもらいやすくなる。

前者なら、Twitterも、Facebookも、ブログも使わない方が良いし、後者なら、徹底的に情報発信を続けていくべきなのだ。

僕から「このニュースについて、草間さんはどう思いますか?」と問われた時、「その件については私のブログの○月○日の記事を読んで下さい」と返答できないなら、ネットを使っている意味などない。もちろん、何から何までストックしておくことは無理だが、今回の話の中心は「あなたはなぜ政治家をやっているのですか?」と問われた時に答えるような、政治家としての軸足が置かれている部分なのだ。百歩譲って過去のストックに明確な回答がなかったことを容認するとしても、この質問には誰にでも理解できる文章で、正確に自分のスタンスを表明すべきなのである。しかし、彼はそれができなかった。

行動原理がなぜ重要なのか。それは、政治家の発言や行動は、十分な議論の時間を与えられない中で即座に対応する必要があるケースが少なくないからだ。そのとき、その政治家がどういう対応をするのか、有権者は前もって知っておく必要がある。政治家にとっては行動原理こそが命で、それを有権者に知ってもらうことこそが最重要課題なのである。草間議員は、この点において重大な瑕疵を抱えていることを明らかにしてしまった。

以上を以って、僕は草間議員は政治家としての資質を持ち合わせていないと判断した。僕は、こういう議員が多いから、政治はわかりにくくなり、生活者、特に若者からそっぽを向かれるのだと思う。

僕は今回のやり取りを通じて、いくつかの知見を得た。その上で、日本の政党政治における「世襲」の、功罪の功の部分を見つけることができた。それはやり取りの中で触れているけれど、「地盤がしっかりしている世襲議員は、党の方針に従うことなく、自己の信念によって判断することができる」ということだ。

この功は、実際には諸刃の剣で、良い二世議員ならうまく機能するし、邪悪な二世議員なら悪く機能する。いわば、独裁者の世襲と同じリスクを抱えている。しかし、年功序列の政治の世界にあっては、若者が期待できるのは、世襲議員しかないのかも知れない。

もうひとつ、ぼんやりと見えてくるのが一票の格差だ。都市部でどんなに河野太郎氏が人気があって、絶対的な支持を集めていたとしても、自民党の要職に就くことすらできないのが現実である。老人重視の政治、地方重視の政治に偏っているように見える日本の病巣が、今回のやり取りを通じて見えてきた気がする。つまり、地方選出の重鎮議員による支配、すなわち既得権者の、既得権者による、既得権者のための政治である。草間議員は、その犠牲者なのかも知れない。もちろん、本人がそんなことを認めれば、地盤の脆弱な彼の政治生命は絶たれるのだろうけれど。

以上で今回のシリーズは完結である。この一年、日の出テレビの政治家たちを近くで見てきて、これはおかしいでしょ、と感じた3人の政治家について取り上げてみた。

実際は、おかしな政治家ばかりではない。例えば山下正人市会議員は、運営会議において、ある日の出テレビ周辺のトラブルにあたり、終始相手の不備を責める論調一辺倒の中で「何か、私たちのサイドに問題があったのではないか。何も問題がなかったはずがない」と、常に客観的な視点で考えることができる人物だった。また、やまぎわ大志郎衆議院議員は、日の出テレビの番組内において、「これは私個人の考え方で、党の方針とは違うかも知れないが」と前置きをしつつ、自己の責任できちんと自分の考えをわかりやすく表明している。両者は、いくつかの部分で僕と意見の相違はあるものの、政治家としての資質を持ち合わせていると思っている(もちろん、「今のところ」だけど)。

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