2013年07月05日

ブログでバイオ 第80回「効果効能とイメージの分業」

最近、知人の間でまことしやかに「膝痛に効く」と言われている商品がDHCの「らくらく」という奴である。パッケージにはグルコサミン+コンドロイチン+況織灰蕁璽殴鵑箸任く書いてある。そして、それよりもかなり小さい文字でCBP、MSM(メチルスルフォニルメタン)、コラーゲンペプチド、ヒドロキシチロソールが配合成分として列挙してある。

さて、裏返して「栄養成分」を調べてみると、グルコサミン塩酸塩、メチルスルフォニルメタン、コンドロイチン硫酸、況織灰蕁璽殴鵝▲灰蕁璽殴鵐撻廛船鼻▲リーブエキス末(ヒドロキシチロソール20%)、CBP(濃縮乳清活性たんぱく)と書かれている。それぞれ、経口摂取した際の膝痛への効果についてまとめると、

グルコサミン:分子量179.17、塩酸グルコサミンは経口摂取で骨関節炎に対する有効性が示唆されている

メチルスルフォニルメタン:分子量94.13、ヒトに対する有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない。

コンドロイチン硫酸:分子量2〜5万、点眼での白内障の術後処置としておそらく有効と思われているが、経口摂取による有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない。

況織灰蕁璽殴鵝分子量10万程度、経口摂取による有効性については信頼できる十分なデータが見当たらない。

コラーゲンペプチド:コラーゲンの分解物で、有効性については況織灰蕁璽殴鵑汎韻検

ヒドロキシチロソール:分子量154.165、経口摂取による有効性についてはデータが見当たらない。

CBP:牛乳の乳清を濃縮したもので、経口摂取による有効性についてはデータが見当たらない。

といった感じである(ヒドロキシチロソール、CBP以外については(独)国立健康・栄養研究所の「「健康食品」の安全性・有効性情報」より抜粋。ヒドロキシチロソール、CBPについては同サイトにデータが見当たらない)。

さて、この中で、常識的に言って効果がある可能性があるものは、グルコサミンのみ、可能性は低いものの、完全に否定できないものはメチルスルフォニルメタンとヒドロキシチロソールで、他の物質はほとんど効く可能性がない。では、なぜコンドロイチンやコラーゲンが配合されているのかといえば、イメージを良くするためである。「あーーー、コラーゲンが入ってるんだー。なんか、効きそうだねー」という感情を喚起するのが目的である。

こうした、効果効能パートとイメージパートの分業というのは比較的良くある手段だが、本来効果効能パート部分だけで売れば良いものを、なぜイメージパートを追加するのかというと、商品の価格をアップさせるためとか、他社製品との差別化が目的だ。

たとえば、ロキソプロフェンという、非常に一般的に利用され、しかもきちんと効果のある鎮痛医薬品がある。これは黙っていても間違いなく効果がある薬品だが、ミドリムシの抽出成分と配合し、「『ユーイタクナイナ』(ユーグレナ抽出物、ロキソプロフェン配合、医薬品)」などとして商品化すると、新しい薬効成分が開発されたかのように感じるわけだ。ミドリムシの抽出成分は鎮痛作用とは全く関係ないのだが、ロキソプロフェンが配合されているので、きちんと鎮痛効果がある。これを買って飲んだ人は、「ミドリムシって、効くなー」と勘違いするわけである。そして、ただのロキソニン錠よりも高い価格で売れてしまったりする。

このロキソプロフェンの事例はあくまでも仮想事例だが、「らくらく」がやっていることはこれとあまり変わりがない。

別に嘘をついているわけではないし、何の問題があるわけでもないのだが、ミドリムシが歯痛に効くと勘違いされるのは困るのと同じく、コラーゲンが膝痛に効くと勘違いされても困る。ミドリムシは所詮鞭毛虫に過ぎずそんなものを食べて嬉しい人は勝手に食べれば良いし、コラーゲンは単なるたんぱく質なのでそんなものを飲んで嬉しい人は勝手に飲めば良いのだが、消費者はきちんと知識だけは持っておく必要がある。

#「らくらく」が効かないと言っているわけではないですよ。効くという人が数名いたので、面白いなー、と思って調べてみたわけです。

#現在「小学校高学年からの食育」という本を執筆中である。健康食品の規制が緩和される方向のようなので、効きもしない食品で騙されないように、最低限の知識だけはもっておいてもらおう、というのが本書執筆の狙いである。



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