2013年09月22日

Jリーグの2ステージ制移行について

1980年代から日産FCのファンクラブに入っていて、神野の家族と一緒にガラガラの三ツ沢のスタンドで毎試合無料でサッカー観戦していたぐらいにはサッカーが好きなマリサポだけど、Jの2ステージ制移行について。

サッカーキングの岩本編集長がJリーグ2ステージ制についてJリーグ中西大介競技・事業本部長にインタビューした記事がこちら。

[緊急インタビュー]Jリーグ、2ステージ制導入の真意を問う 中西大介(Jリーグ競技・事業本部長インタビュー)
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/135115.html

後半に進むに従って提灯記事色が濃くなっていくので、閲覧注意(笑) しかもこの本部長、「リーグ」と「ステージ」を混同していて、記事は記事でそれを修正していないドシロウトっぷりである(笑)。

大したことは書かれていないので僕が要点を書いてみるが、「Jリーグの地上波放送が激減していて、一般層に浸透しにくくなっている。この状況を打開するための唯一の方法は2ステージ制にして、テレビ地上波の放送機会を増大させることだ」という内容である。

おそらく、電通(あるいは博報堂)あたりが「今のリーグ戦ではテレビの放送枠の確保が難しい。2ステージ制にしてくれたら、確保できる」とアプローチしてきたんだろうな、と想像するのだが、この意思決定の最大の問題点はサポーターの意向がほとんど考慮されていないということだ。

2ステージ制にしてプレーオフを導入すれば、試合数が増えるし、注目度が高い試合が増えるので、代理店的には幸便である。彼らにとっては、普段のリーグ戦のような売り物にならない商品がたくさんあっても意味はない。

一方、プレーオフは、無から生み出されたものではない。そんな、ドラえもんのポケットのような魔法は存在しないのがこの世の中だ。では、何から生み出されたのか。犠牲になったのは、普段のリーグ戦の「価値」である。多くのライトなサポーターたちは、「プレーオフまで進んだら見に行こう」と考える可能性が高い。なぜなら、熱心な中日ファンである僕も、プレーオフ以外は滅多に球場に足を運ばないからだ。ライトなファン(僕の中日熱は決してライトではないと思うが)にとって、大事なことは贔屓のチームが優勝することであって、2位以下なら意味はない。

世の中が「広く浅く」からお金を集める(いわゆるロングテール)時代になって、狭いところから集中的に集金するビジネスモデルは古くなりつつある。そんな中、相変わらず旧態依然としたビジネスモデルで生きているのがテレビや大きな代理店などで、今回の方針変更は、ビジネスモデルの巻き戻しに他ならない。そして、喜ぶのはコンテンツが増えるテレビ局とその周辺の代理店であって、これまでJを支えてきたサポーターではない。

Jリーグは「他に方法がない」と強弁しているようだが、決してそんなことはない。例えば、今、スカパーでJリーグを見ようと思えば、月額3,280円の高額なお金を払い(ハイビジョンでなければ2,880円のセットが存在するが、画面の上下でしつこく「来年5月で終了するので、変更してください」とアピールされる)、見たくもない他チームの試合とセットで売りつけられてしまう。試合ごとで販売されないので、「今日は雨だからスタジアムに行くのは諦めて、家でテレビ観戦しよう」といった行動は取ることもできない。

一番良いのは、各試合が200〜300円程度でペイパービュー観戦できて、セットはチーム別で、月額2,000円ぐらいで販売されることだろう。現状、そうなっていないのには理由があるはずで、それはJリーグのコンテンツ販売価格が高すぎるのかも知れないし、あるいはスカパー!が馬鹿なのかも知れないが、とにかく、月額3,280円は高すぎる。ここをもっと安価にするだけで、裾野は広がるはずだ。

また、テレビ配信ということであれば、僕がキャスターをやっている日の出テレビのようなネットテレビ局に対して配信サポートしてくれるのでも良い。ちょっと前にJリーグの観戦規約をチェックしてみたのだが、今のところ、個人がネット配信で試合を生中継することは禁じられていないようだ。ただ、回線が整備されていないため、大勢に人間が集まるサッカー場では、配信のための回線の太さが確保できない。

小さいネットテレビ局のために、ワイヤレス回線を提供してくれれば、画質は悪くても、試合の状況はチェックできるようなテレビ配信が可能になる。プラットフォームは、ニコ生でも、Ustreamでも構わない。こんなことは、スカパー!との交渉以上に簡単で、ネット回線を確保するだけで実現可能である。一試合1,000円ぐらいでネット使用権を販売し、小さなネットテレビ局がそれを買って、好きなように放送する。こんなことが実現したら、凄く楽しくなるだろう。代理店は儲からないけど。

「テレビ配信を増やして、お茶の間の露出を増やそう」というのなら、一般のテレビよりも、ネットの放送を充実したほうが良い。大体、今の若者はテレビなんかよりもネットの配信を見るものだ。でも、高齢化が進みつつあって、かつ電通や博報堂と仲良しのJリーグには、そういう考えができないのだろう。Jリーグが衰退しつつあるように見える最大の原因は、実はこの点に原因があるというのが僕の考えだ。本気でテレビの露出を増やしたいなら、Jリーグは将棋連盟の棋戦ネット中継を参考にすべきである。この点では、楽天やベイスターズなど、一部の球団が無料配信を実施しているプロ野球の方が一歩先に出ていると言わざるを得ない。

ついでなので、この岩本編集長がTwitterで「素晴らしい原稿」と褒めていたエントリーがあるので、その記事から引用しつつツッコんでみる。




以下、引用は下記エントリーから。

引用元:ライト層のど真ん中から、J1リーグの2ステージ制移行に「まぁいいんじゃないですか」と叫ぶの巻。
http://blog.livedoor.jp/vitaminw/archives/52993432.html

いわゆるポストシーズンの導入により、Jリーグはスポンサー収入の増加などで10億円以上の増収を見込んでいるとのことです。


このあたりの数字は前述の大手代理店がはじいた数字だと思うのだが、数字の正否についてはなんとも言えない。ただ、「増加」の分、普段のリーグの入場者数は減るだろう。なぜなら、リーグの価値は下がる可能性が非常に高いからだ。普通に考えて、二分割されるので半分以下になるし、実際はそれ以上に価値が下がると思われる。リーグ戦の価値が下がれば、各チームのスポンサー料も減額されるだろうし、代理店が机の上で弾きだした増収「だけ」の幸福な未来があるとは思えない。作用があれば副作用があって、あぁ、代理店が提示した目先の数字に騙されたな、と思うばかりである。

年間の観戦数がゼロ回の人を1回にできるかどうか、Jリーグ側はそこを意識しているはずです。


この推測が正しいかどうかはわからないけれど、もしゼロを1にすることを中心に考えているとしたら、Jリーグは馬鹿である。ビジネスをやっている人間であれば、ゼロを1にすることと、1を2にすることとを比較した時、どちらが大変かは良くわかっている。新規顧客を得ることは、リピーターを得ることよりもずっと難しい。だから、普通のビジネスの感覚の持ち主なら、来てくれた人たちの満足度をアップさせようと考える。こういう感覚を持っていない事業者の代表例はドコモ、au、ソフトバンクといった携帯キャリア各社で、MNPでの顧客確保に専心して、既存顧客へのサービスをないがしろにしている。だからこそ、一度確保した顧客が他社へMNPしてしまうという現実があるのに、そこへ配慮が至らず、結果として消耗戦を展開している。こういう頭の悪い経営戦略は得てして古い体質の企業に散見されるのだが、新しい体質だったはずのJリーグがそれに舵を切るというのなら、リーグのお先は真っ暗である。すぐあとのセンテンスでこのブログの著者は「その意味で、現在のサポーター側からの主張は基本的に的外れです」と書いているけれど、的はずれなのはこのブログの著者の方である。もちろん、ゼロを1にすることも考えるべきだ。しかし、それがオンリーワンではなく、たくさんある方策のうちの1つであるはずだ。そして、数ある方策の中で、プライオリティは低い方に属する。

まず第一に簡単なのが、日本で最高の選手の何人かが日本に残っているという状況を作ること。


頭が悪すぎる。日本で最高の選手が日本に残っている状況は、今後も起きることはない。そうなるためには、プレミアよりも、セリエよりも、ブンデスよりも、リーガよりも、Jリーグの価値が上になる必要がある。その可能性はゼロではないけれど、そのためには日本の社会がもっと活性化する必要がある。お金で海外の有力選手をかき集めることができるようにならなければ実現しない。これはJリーグだけではどうにもならない。そして、実現の可能性は非常に低い。日本のJリーグは、所詮は海外へのステップアップのツールに過ぎない。しかし、それで何が悪い。Jでステップアップし、代表で活躍し、海外に出て行く。海外での活躍が難しくなったら、日本に戻ってくる、というキャリアパスで全く問題ない。今のマリノスでは俊輔がそういうキャリアパスを経て活躍してる。むしろ、Jリーグが目指すべきは、高齢の選手がきちんと体をメインテナンスできて、長いリーグ戦でコンディションを維持できるような施設を、マリノス以外のチームも持つことだろう。マリノスにおいて中澤や俊輔、あるいはドゥトラのような高齢の選手がコンディションを維持している点は、もっと高く評価されるべきだ。「30代後半になってもプレイの質が維持しやすいハードが整っている」となれば、日本選手のみならず、かつてのジーコやスキラッチ、リネカーといった超有名選手がキャリアを終える場所として日本を選ぶようになるかもしれない。「ロートルが来てくれても」と思うかも知れないが、彼らに日本を気に入ってもらえば、それがパイプとなって、もっと若い選手がやってくるかも知れない。あるいはピクシーのように、Jチームの指導者として活躍してくれる可能性もある。治安とか、サポーターの質とか、日本が海外に誇れるものは色々とあるはずで、それは来てくれなければわかってもらえない。

日本において飛び抜けたビッグクラブが必要だと思います。


的はずれな記述ばかりの記事の中で、唯一とも言って良いほどにまともな記述がこれ。しかし、そのあとがいけない。

「このクラブを出て、欧州の中堅クラブになど行けない」「欧州CLに出られないクラブに移籍する意味ナシ」と思われるクラブ


こんなクラブなんか、今後も日本には現れない。妄想である。巨人からだって、松井のようにメジャーに選手が流出するのが日本の立ち位置。野球にしても、サッカーにしても、日本はナンバー1ではない。そして、近い将来、日本がナンバー1になる可能性は非常に低い。こんなことは、野球ファン、サッカーファンなら誰でもわかっているはず。ビッグクラブが必要、という古くから言われている正論を引っ張りだしたまでは良かったけれど、自分で真剣に考えたアイデアではないから、こういう消化不良な考え方でボロを出す。

「ACLを獲る」という前提でシーズンに臨める規模感は必要


これも、サッカーというものをわかっていない。サカつくをやればわかるけれど(笑)、チームを強くするためにはお金が必要。日本のチームだと選手の年俸総額はせいぜい10億円(浦和レッズ10億6,800万円、横浜F・マリノス9億1,050万円など)だけど、中東や中国のチームは30億円だったりする。広州など、リッピ監督の年俸だけで10億円と言われている(ちなみに上を見ればきりがなくて、メッシの年俸はひとりで45億円、クリロナで39億円である)。高い年俸を払うだけの経済的ベースが日本という国自体に存在しないので、ACLという場においても、今は決勝トーナメントに進むのがやっとという状態だし、この状況は恐らく今後も変わらない。そして、それはJリーグだけで何とかできる問題ではない。

「2ステージ制反対」と同時に「南米選手権には出るべき」という声があがらないとおかしい。


あがってるでしょ。
【サッカー】2015年南米選手権(チリ)招待も…日本サッカー協会・大仁会長「非常に日程的に厳しい」
http://www.calciomatome.net/article/373499425.html

3.11のせいで出場をキャンセルせざるを得なかった日本に対して非常に好意的なオファーを出してくれているわけで、出場できるなら出場したいのは山々だし、それに対して日程的にベストメンバーを組めそうにない状況も理解可能だ。ただ、この話は2ステージ制とは基本的に無関係。大体、この話は代表戦についてであって、代表戦はいつも満員だし、地上波放送もある。言及すること自体無意味である。

その後、突然ジブリの話になって、アフィリエイトにこじつけるあたりで「何だかなぁ」という感じになってくる。

「いつも行っているヤツがあと3人ずつゼロ回の人を連れてくる」など、自分たちで考え、行動できる範囲のもので。そうやって楽しそうな空間を作ることが、客にできる「2ステージ制反対運動」だ


言われなくても、少なくともマリノスサポはやっていると思う。他のチームは知らないけれど。

嘆いても怒っても、大会方式が変わることは決まったこと。


反対派は、まだ変えられると思ってるんじゃないかな。可能かどうかは、僕にはわからないけど、反対運動を続けることが全く無駄だとは思わない。

このエントリーからは「Jが決めちゃったんだから、従うしかないでしょ」という、日本人の官僚(支配受容)主義臭がプンプンする。また、2シーズン制の妥当性が全く論じられていない。的はずれな上に、無理やりなアフィリエイトである。こういうウンコ記事を素晴らしいと賞する感覚が理解不能である。

サポーターたちは2ステージ制・プレーオフ導入に否定的な理由は、一義的にはJが向いている方向がサポーターではなく代理店とテレビ局だからで、その結果、リーグの価値そのものが低下することが危惧されるからである。せめて、Jの姿勢は「今のままでは2ステージ制への移行やむなしである。それを回避すべく、みなさんのアイデアと行動をよろしくお願いします」であるべきだったと思う。

多くのサポーターたちは、まだ諦めてはいないはずだ。今まで自分たちがサポートし価値を作り上げてきたものを、みすみすダメなものにしたくないという考え方は十分に理解可能である。

Jの仲間は、広告代理店なのか、それともサポーターなのか、という話に帰着するわけで、2ステージ制はサポよりも代理店を選んだということのように見える(あるいは、本能的に感じ取れてしまう)ところが、2ステージ制移行が支持されない要因だろう、というのが僕の見方である。

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