2013年10月12日

教育再生実行会議の提言が酷いので その2

その1はこちら。
教育再生実行会議の提言が酷いので その1

教育再生実行会議 第7回議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai7/gijiroku.pdf

3P
○下村文部科学大臣兼教育再生担当大臣
お手元の資料2をご覧になっていただきたいと思います。4月23日に行われた産業競争力会議において、私がプレゼンした内容を御紹介するとともに、本日の中心的な議題が、学生を鍛える大学教育、社会人の学び直し、ガバナンス改革など大学の機能強化であることを踏まえ、プレゼンには盛り込めなかった点についても幾つか説明を加えさせていただき、委員の皆様方と認識を共有させていただければと思います。

あ、結局、最初のたたき台は官僚(多分)作成じゃん(笑)そして、この段階ですでに
第1に、研究力でもアジアの大学が東大や京大に迫っている中、海外の研究者、大学をこれまでと違う次元で招聘する。

第2に、産業界との対話により、「理工系人材育成戦略」を策定するとともに、ライフ分野を含む理工系分野の徹底強化を行うということであります。

第3に、年俸制導入などの人事給与システム、ガバナンス改革を断行し、優秀な若手や外国人にチャンスを提供するということであります。

の3つが提案されているのね。3番目だけは筋が良いけれど、1つ目は大学の改革では実現できないし、2つ目の産業界との対話は、大学に自らのアイデンティティを放棄しろと言っているに等しい。でも、ここではまだ入試改革の話は出てきていない。

4P
◯下村文部科学大臣兼教育再生担当大臣
社会に直結したプログラム開発や学びやすい環境整備をしていきたいと思います。産業界からは、実務家講師の派遣をはじめ、プログラム開発等への積極的な参加をいただき、両者が連携してオーダーメード型のプログラムを構築することを目指していきたいと考えます。

このあたりからおかしくなっていく気配がある。大学は職業訓練学校じゃないし、実務家講師でまともなのがどの程度いるのか。まじめに教育を考えて、目標を設定し、授業計画を立てて、効果測定し、授業にフィードバックし、そのサイクルを繰り返していくだけの、プロ意識のある実務家講師をどの程度確保できるのか。個人的には、この実現性については非常に疑問。

5P
◯下村文部科学大臣兼教育再生担当大臣
社会とのミスマッチ解消のためには、大学におけるインターンシップ、キャリア教育の充実が鍵となります。

この、社会とのミスマッチを解消しなくてはならないというのが決定的に理解不能。本当にこんなことをする必要があるんだろうか?専門学校ならともかく。そもそも、大学発のベンチャーが軒並み失敗しているのは、大学関係者に実務家としての能力が欠落しているからで、彼らにキャリア教育などできるとは思えない。

○佃副座長
産業界の望む学生のスペックというものを大まかにまとめたものでございます。この枠の中に入っておりますが、1番目が基礎的な能力、これは専門能力と一般教養。2番目がチャレンジ精神を持つ、タフな精神力を持っていること。3番目はコミュニケーション能力があることという、これが我々の望むスペックでございます。

こういう、大学を自分たちのための教育機関と勘違いしている奴が座長なのね(笑)コミュニケーション能力なんて、大学で勉強することじゃないでしょ。

というか、この会議では、大学が職業訓練組織であると共有されているんだよね。まず、そこから議論しなくちゃいけないんじゃないのかな。

11P
○鈴木委員
高額な試験に何度も何度も繰り返して受験させて、その結果を大学入試判定に使われるということは非常に公平性を欠く

まっとう。

○鈴木委員
50万人が最低でも2回受けるとして、100万人、1回に2万円ずつ支払っていれば200億円、この巨額な受験料がアメリカの特定の任意の検定会社に将来にわたって毎年ずっと流れていくということになり、こんなばかばかしい話はない

まっとう。とはいえ、長い時間の中でブラッシュアップを続けてきた重みも間違いなく存在する。1993年にJリーグを作って、ワールドカップに安定して出るくらいには成熟しても、ワールドカップで優勝するのは夢のまた夢、みたいなのと同じで、時間の積み重ねを挽回するのは容易ではない。

○鈴木委員
先生の意見の中にはセンター試験から英語を外してTOEFLをということもありますけれども、そういうことをやりましたら高等学校の英語の授業を真面目に受けるようなことがなくなってくる

これは疑問。試験がTOEFLになれば、高校の授業はTOEFLで得点できる内容に変わってくるはず。それが良い、悪いは別問題だが。

○蒲島委員
日本の社会では修士、博士をあまり大事にしない

少なくとも、理系の場合、修士は大事にされているよ。というか、学士じゃ話にならない。修士が当たり前。

18P
○安倍総理
いずれにしても、大学力こそ日本の競争力になってまいります。これはかなり思い切った議論もしていただいて、抜本的に変えられることは政治の力で変えてまいりますので、どうか皆様方で中身の議論をしていただきたいと思います

あ、ちゃんとした信念とか、知識とかなしに、思いつきで政治主導しちゃっているのか(笑) 

○安倍総理
産業競争力会議でもグローバルな人材育成という中で抜本的な今の日本の大学の在り方では世界の中で通用しない、大胆な改革が必要だということでございました

そっち方面からも圧力あり、と。

19P
○八木委員
これまでの理念重視型ではなくて実践型の教員養成、さらに佃副座長からも御説明がありましたように、リベラル・アーツを十分習得できる教員養成の在り方が求められる

理念軽視をここまで真正面から表明する姿勢の潔さは評価しよう。内容はクソだが。

24P
○佐々木委員
大学生の就職活動に関して、選考会が4年生の8月からということが出ていますが、そうしますと何割かの学生は卒業しても就職できずに本当に路頭に迷ってしまうという可能性があるのではないかと思っています


時期が問題なのではなく、新卒一括採用という慣行が問題。


◯関連エントリー一覧

教育再生実行会議の提言が酷いので その1
http://buu.blog.jp/archives/51414219.html

教育再生実行会議の提言が酷いので その2
http://buu.blog.jp/archives/51414254.html

教育再生実行会議の提言が酷いので その3
http://buu.blog.jp/archives/51414397.html

教育再生実行会議の提言が酷いので その4
http://buu.blog.jp/archives/51414444.html

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