教育再生実行会議の提言が酷いので その1
http://buu.blog.jp/archives/51414219.html
教育再生実行会議の提言が酷いので その2
http://buu.blog.jp/archives/51414254.html
第8回は第三次提言の素案についての細かい議論なので、特に面白いところがなく割愛。
教育再生実行会議 第8回議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai8/gijiroku.pdf
第9回から、いよいよ入試についてである。
教育再生実行会議 第9回議事録
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai9/gijiroku.pdf
が、その前の基礎資料として会議に提出されている
中央教育審議会高大接続特別部会の審議状況等について
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/dai9/siryou1-1.pdf
という資料の中で、ほぼほぼ提言が固まっている。さらにつっこむためには中教審をチェックする必要がありそうだが、面白い意見があるかも知れず、とりあえず、第9回の議事録を読んでみる。
8P
○加戸委員
大学側で、高等学校教育をちゃんと受けて、そこでマスター、修得したものが高成績で大学に入れるという仕組みを構築しない限り、いろいろなことをやってみてもなかなか解決にならないのではないか
ふむ。異論なし。
9P
○鈴木委員
現状のAO入試の合格発表は、先ほど安西先生からも指摘されましたように、青田刈りになっています。さまざまな大学等で定員確保のための重要な手段になっている、そんな実態があるわけで、私個人としてはこの様な状況を見ますと、少なくともAO入試については廃止を含めた形で再考した方がよいと考えています。
良い内容だけど、いかにもスルーされてしまいそうな提案(笑)。
12P
○曽野委員
もう何年前になるかわかりませんけれども、○×式というものが学校の答えの中に入ってくるようになったときから、私は絶望したのです。
絶望してからが長くて(笑)、ちょっと気の毒になる。
15P
○佃副座長
高校までの教育というのは、社会人として今後長い60年間を生きていくための基本的な資質というものを養うために完結するところだと、高校までで完結するのだと。リベラルアーツも一旦完結するのだと私は前に言いましたけれども、私はそこで完結して、その素養を得て、大学は専門家をつくるところです。したがって、大学で行う入試というのは、学習度到達テストというものを評価しながら、どの程度評価するかというのは大学のキャラクターによって変わってくる。
とても普通な意見。大学に対しては奇妙な要望を出していた(7回5P)けれど、高校と大学の位置づけについてはまともな考え方をしているようだ。それにしても、高校と大学は分離しているべきだと考える人間が、大学と企業が接続しているべきだと考える理由が良くわからない。
18P
○佐々木委員
何のために生きるのか、何のために勉強するのか、何のために学校に行くのか。学校に行って何を学びたいのか、どうしたいのかということを考えたり、思想や哲学を持ち、そして志を立ててやっていく。このことが一番大切だし、本来問われるべきだと思う。
そういったことが入試の選考の中にないと、どうしても知識や学力を中心に、それこそ1点刻みで評価されるものになっていく。今行われている入試は、ある意味公平だろうが、公平の名のもとに学力だけで推しはかるということが、いかに子どもたちの生きる力、やる気を減退させているか。
ははぁ。こういう思想か。一番大事なのは思想や哲学なので、公平性が失われるのは仕方がない、と。じゃぁ、大学が受験生に要求する思想や哲学、志はなにで、それをどうやって確かめるのか、という、2つの項目が欠落している。
この、公平性には目をつぶる、という感覚は国民的に受容される考え方なんだろうか?僕はちょっと受け入れられない。
19P
○鈴木委員
一発勝負の試験は決して悪いものではないと思うのです。それぞれがそれぞれの形で努力する。私の郷里の子も大都市の子も同じような条件の中、それぞれが頑張って勉強して一発勝負に臨んでいく。しかし、そのようなモチベーションを妨げる要因もいろいろあるわけで、その一つがAO・推薦の広がりにあります。
センター入試の内容は、非常に評価が高くて、特に英語などのセンター試験の内容につきましては、現場からも高く評価されています。
そういった中で更に到達度テストを導入することについての問題点については先ほど申し上げましたけれども、どう考えてもAO・推薦がさまざまな入試の方法でやる気のある生徒の確保や人材の発掘をするといった名目で出てきたはずなのに、現状では間違った方向に進んでいる。
感覚的にはとても正しいと思うのだけれど、それを補強するためのバックデータがないのが残念。AO入試の是非とかを検討する材料として、ひとつの大学における一般入試とAO入試の別による、大学時の成績、就職の状況、就職後の離職の状況といった追跡データがないのだろうか??そういうデータの検討なしに、AO入試の是非に言及することはできないと思うのだけれど。
○遠藤議員
最終的に採用するのは大学ですから、大学が要するに自分たちがこの人間が欲しいということを踏まえて独自のプラス
した試験をやればいい、そういう人材が欲しい、それが大事なのだろうと。
突然異様にレベルの低い意見が出てきたのでどこの馬鹿かと思ったら委員じゃなくて政治家だった(笑)。
参考:ウィキペディア 遠藤利明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E8%97%A4%E5%88%A9%E6%98%8E
20P
○富田衆議院議員
親から子への貧困の連鎖を断つには学びの支援が大切だと、この学びをどうやって考えていくかというのが今後の国の役割だと思いますし、ぜひ意欲のある子供たちが大学教育を受けられるような高大接続の部分というのも考えていただきたいと思います。
同じ政治家でも、こちらはまとも。一口に「政治家」と言っても、馬鹿もいればまともな人もいる。
21P
○曽野委員
生まれ育った環境に全く左右されないようにしたら、何を根拠に私たちは学ぶのでしょう。左右されることも私たちにとっては或る意味で財産なのです。貧しければ貧しいように、目が見えなければ見えないことをもって、虚弱であれば虚弱なりに、もちろん、できるだけ皆が生活に不自由なく体は丈夫にするようにすべきですけれども、生まれ育った環境に左右されないようにするなどということは教育に真っ向から反対する姿勢だと私は思ってまいりました。
これは酷い。ちょっと、このコメントだけでも、世界中に周知するべきだと思う。この発言、色々な読み方が可能だけれど、大学入試の方法について検討している場だから、「生まれ育った環境によって、学ぶ機会が制限されるべきである」と読むのが普通だと思う。学生が、生まれ育った環境をベースにして思考するのは「個性」だし、その個性を生まれ育った環境と分離することはナンセンスだけど、機会が与えられるか、与えられないかについては、生まれ育った環境と分離されるべきでしょう。
みんなが幸せで「安心して生きられる」ようにすべきですが、その説には私は反対です。
僕も「みんなが」とは思わない。でも、頑張った人間はきちんと評価されるべきで、それは生まれ育った環境とは分離されるべきだと思う。曽野綾子は「育った環境で差別されるべき」と考えているけれど、僕は「頑張って、きちんと成果をあげたかどうか(入試で良い成績を出すのも「成果」のうち)で区別されるべき」だと思っている。世の中、僕の考え方の方が普通だと思うのだけれど、そんなことはないのだろうか? 曽野綾子って、階級の上の生まれ、育ちなのかな?聖心とか慶應?と思って調べたら、幼稚園から聖心女子学院だそうで(笑)。まぁ、色々な意見があって良いので、こういう人が委員にいても悪くはないけれど。
22P
○下村文部科学大臣兼教育再生担当大臣
今でも東大が3,000人とる中でもう一度試験をすれば、そのうち3分の1は入れ替わるだろうと。つまり、3分の1は運です。上位3分の1は何回試験をしても東大に絶対入れる実力はある、けれども、下位3分の1はもう一度試験があったら不合格になるというような一発勝負的な部分があります。
アホだなぁ。これが本当なら、東大の定員を3分の1にして、上位3分の1の、何回試験をやっても絶対に東大に入れる人間だけを入学させれば良いじゃない(笑)。こんなに頭が悪くても大臣になれてしまうという行政制度のほうが問題では。
各委員の発言を読んでいると、ちゃんと「公平性」について考えている人もいることがわかる。一方で、何が根拠なのかはそれぞれだと思うけれど、階級と学習機会がリンクすることには目をつぶっても良いと考えている人もいることがわかる。第10回の会議では、後者の意見が主流になっていくのだろうか??
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