2013年12月16日

鑑定士と顔の見えない依頼人(The Best Offer、La Migliore Offerta)

thebestoffer


長ったらしい邦題にがっかり。オファーには「付け値」という意味もあるので、おとなしく「ザ・ベスト・オファー」で良かったのではないか。無理に訳すにしても、「素敵な提案」とか、もっと短い題を付けられないものか。

映画は、わがままで精神的に不安定な引きこもり女性と、オークションで時々インチキをやらかしては美人画を収集し、自宅でそれらに囲まれて悦に入っている孤独なおじいさんの交流を描きながら進んでいく。登場人物は少なく、おじいさんとタッグを組んでイカサマをやっている画家、美術品の修復を手がけている若者、引きこもり女性の家の執事ぐらいである。

姿を見せることのないヒロインが抱えている問題は何なんだろう、と興味を掻き立てるようなエピソードが一つ一つ語られて、徐々にその全貌が明らかになり、「なんだ、このジジイ」と思ったあたりで物語は急転する。

脚本がキチンと練られているので、「転」から後は様々な伏線が見事に回収されて行く。何も予備知識なしで観たのなら、この映画の構図を最初から思いつく人はいないだろう。観客を騙す目的で作られているので、これは当たり前だ。騙されたことに気がついた後、あーーー、あれがねー、と思い返すところに楽しさがあるので、かなり集中して観ていないと、もう一度観なくてはならなくなる。ただ、そういうオッチョコチョイが大量発生すると踏んでいるのか、この映画ではリピーター割引で、二度目の鑑賞者は1000円で観ることができる(ただし、一度目に観たのと同じ劇場のみ)。なので、半券は捨てないように。とにかく、ほとんど無駄なシーンはないので、油断は禁物である。

いつも安定した字幕をつけるので大好きな字幕作家の松浦美奈さんだが、今回はからくり人形にオートマタというカタカナをあてていてちょっと違和感があった。FFXIでからくり士協同組合のトップをやっていた僕としては、オートマトンとして欲しかった。でも、これはこれで方言かな?

ネタバレになるので誰とは言えないけれど、ある登場人物がちょっと可哀想な気がした。評価は☆2つ半。

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