2013年12月31日

マリノスに幸運を

マリノスがマリノスとして天皇杯の決勝に登場するのはこれが二度目である。最初は、まだJが発足する前の1992年だった。

僕が天皇杯の決勝をスタンドで最後に観たのは鹿島が優勝した年で、天皇杯を受け取るために登ってくる階段の真横で観ていたのだが、その時、本山が「俺はお前らとは握手しないよ」と言わんがばかりに両手を背中に回して登ってくるのを観て以来、本山が大嫌いになった。もちろんこの時も僕はマリサポだったので、他の選手とも握手などしなかったし、本山ともする気はなかったのだが、僕の周りにいた鹿サポが気の毒だった。ちなみにこの試合の相手はマリノスではなくエスパルスだったのだが、なぜマリノスと無関係の試合を、と言えば、良い席のチケットを確保した後にマリノスが負けたからである。この、対戦カードが決まる前に決勝のチケットが完売してしまうという、日本サッカー協会の頭の悪い仕切りのせいもあって、以後、天皇杯の決勝のチケットを入手することはなくなり、おかげで応援していないチーム同士の試合を元旦早々から寒い国立競技場のスタンドから観ることもなくなった。

実は、Jリーグが始まった頃は、我がマリノスは「トーナメントに強い」という評価だった。ナビスコでも、天皇杯でも、何かといえば「トーナメントで強さを発揮するチーム」と言われていた。なぜなら、1988年から1992年までの5年間でマリノスの前身である日産自動車は4回優勝、唯一負けた1990年も、松下電器にスコアレスからのPK戦で負けて準優勝だった。この試合を全部スタンドから観ているのだが、当時の日産自動車は井原、勝谷、松永らを中心とした固い守備をベースにし、木村和司や水沼の中盤、鈴木正治のサイドからの崩し、そして絶対的エースにレナトが君臨という、非常に負けにくいチームだった。しかし、当時人気があったのは読売クラブのつなぐサッカーで、だからちょっとサッカーを知っている人間からは、「日産が強いおかげで日本のサッカーがつまらなくなった」と言われたものである。

確かに、点をたくさん取るサッカーは観ていて面白い。しかし、例えば今でいうところの浦和、ガンバ、川崎あたりのノーガード打ち合い戦法は、ハマれば強いけれど、やられはじめると止めどがない。観ていて面白いのは確かだし、リーグ戦では結果を出しやすいけれど(とはいえ、ガンバはそれでもJ2落ちしたのだが(^^;)、トーナメントで勝ち続けるのは難しい。その点、ここ数年のマリノスのスタイルは、昔、天皇杯で勝ちまくった頃のスタイルに似てきている。

ややスタートダッシュに衰えが見えるとはいえ、中沢と栗原の二枚センターは安定感がある。ドゥトラの背後はやや心配だが、運動量が豊富なボランチがその背後をきちんとカバーしている。センター二枚が攻撃の起点になれない分をドゥトラがカバーし、俊輔に偏りそうな攻撃にバリエーションを与えている。ここまでが、マリノスの主役たちである。つまり、ディフェンシブなチームなのである。今年のマリノスはリーグ戦34試合でたったの49得点で、これは浦和の66、川崎の65よりも10点以上少ないのである。しかし、得失点差で見ると、マリノスは+18で、これよりも良いのは広島の+22だけである。広島は総得点51なので、チームのスタイルとしては似たチームが残ったことになる。

今年一年、マリノスを観ていて感じたのは、負けにくいけれど、勝つのは運、ということである。「運」というと言葉が悪いのだが、誰かの個人技による凄いシュートがたまたま決まったり、あるいは目を疑うようなミスを相手チームがやらかしてくれたり、というのが勝因であることが良くあった。そして、勝って当たり前、という試合が少なかった。

確かに、俊輔のフリーキックは得点の期待が大きい。しかし、移籍してしまった渡邉千真がペナルティエリア付近から打つシュートと、どちらが決定力があるかといえば、それはさすがに千真だったと思う。今のマリノスには、確度が高い武器がほとんどない。唯一、これは、と思うのは齋藤学の切れ込んでのシュートだが、これも発動機会は限定されるし、今はそれが武器であると相手チームがみんな知っているので、なかなか自由にさせてもらえない。齋藤学は嫌だが、だからといって反則を取られて俊輔にフリーキックの機会を与えるのも嫌だ、ぐらいまでは良いのだが、その先がない。これで昔のレナトやディアスのような決定力のあるFWが一枚いれば全然違うのだが、マリノスにはそれがない。特に今回の決勝戦では、体調万全ならそこそこ期待できるマルキーニョスが決勝前に謎の帰国(一体、どういう契約になっていたんだ?)、代役として頑張っていた藤田が累積イエローで出場停止である。

うーーーん、と思うのだが、小野、渡邉が抜けた時点でこのチームには期待できるFWがいない。それならもう開き直って、ポゼッションを高めた上でのファウル→俊輔の直接FK、運良く相手のディフェンスが緩んだスキを突いてのカモメッシ発動、あとはCKやFKからのセンターバック・ヘッドに期待するしかない。消極的だって?そんなことはない。これまで、ずっとこれでやってきたのだ。幸いにして、マリノスの中盤は仲町、富澤、兵藤、中村、小林、小椋とタレント豊富である。ここをうまく使って、セットプレー中心の攻撃プランに期待する展開になるだろう。

テレビの解説者が「この試合は先取点が大事」と言うのを聞くと、アホか、当たり前だろ、と思うのだが、やはり明日もそういう解説を聞くことができるに違いない。確かに、マリノスが先取点を奪われたら、その時間帯に関わらず、8割方、負けだと思う。逆に、先取点を取れば、かなりのところまで安心できるだろう。ただし、栗原の足の調子が今一歩なようで、このコンディショニング次第でもあるのだが。

1−0などの渋い試合になりそうだが、スタンドで観戦するのは13年振り、マリノスを観るということなら21年振りのことなので、マリノスに幸運を、と思う。

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