2014年01月01日

マリノス、天皇杯優勝

天皇杯決勝は正月にしては穏やかな天候に恵まれた。加えてバックスタンド上方という常に陽に照らされている座席だったこともあり、非常に快適な観戦になった。そして、試合は観戦環境以上に快適な内容だった。

序盤はDFの前にボランチで中村を置く4-1-4-1のようなフォーメーションで、相手の攻撃を受けて立つような戦術だった。前線で中村にボールを捌かせるスピーディなサッカーではなく、ポゼッションを高めつつ後方からパスを供給するサッカーを企図したのだろう。これだと試合は落ち着くが、攻め手にも欠くことになる。

ところが、広島は準決勝でPK戦まで戦って疲労していたのか、思ったよりも動きが悪く、マルキーニョス、藤田不在にも関わらず攻勢に出ることができ、嬉しい誤算となった。俊輔を後方に控えさせておいても試合の主導権を握れたのは非常に大きかった。もともと、広島のようなディフェンシブなサッカーには相性が良いのだが、それが一層引き立つ序盤だった。

俊輔を後方にまわしたフォーメーションにおいて活性化したのは、普段はあまり目立たない右サイドだった。代表チームが長友、本田、香川のサイドに偏りがちなのと同様、マリノスの攻撃はドゥトラ、中村、学のサイドに偏りがちだ。ところが、今日は右サイドがポイントになった。小林が右サイド深く切れこんでそのまま前線に残り、ゴリゴリとペナルティエリアに切れ込んだ際に、ボールがこぼれたのがマリノスサイドだったのが最初のラッキー。このチャンスボールを端戸、兵藤と細かくつないで、中央でどフリーになった学があっさりとこれを決めた。この試合は通常の試合よりも先取点のウェートが大きかったので、この時点でマリノスの優勝確率は一気に上昇した。

そして、そのすぐあとにマリノスに追加点が生まれた。今度はコーナーキックからの中町のヘッドを広島のキーパーがはじくと、ボールは中澤の真ん前に飛んでいった。これがこの試合二度目のラッキーである。今度は学以上のどフリーで中澤が頭に合わせることに成功したのだから、ゴールマウスを外すわけがない。

バタバタっと2点をリードしたマリノスは、この時点で優勝をほぼ手中にした。スタンドで観ていた僕はその時点で「試合は終了、マリノスの優勝。あとは70分、写真でも撮っていれば良い」と断言した。

序盤で2点という望外のリードを奪ったマリノスは中村を前線にあげて、フォーメーションを4-2-3-1に変更した。これによって攻撃の起点が前線に移ったので、広島は思うように攻撃に人数を割くことができなくなり、マリノスの思惑通り、試合は膠着した。このとき、大きな役割を果たしたのがワントップの端戸だった。彼は、俊輔が前線に顔を出すたびに後方に下がってバランスを取り、広島のチャンスの芽を摘んでいた。体力を温存していたこともあるのだろう、その運動量はチームに大きな力を与えていた。予想通り、試合はそのまま終了。途中、何度か危ない場面はあったものの、完勝と言っていい内容だった。

大晦日のプレビューで「マリノスに幸運を」と書いたが、まさにその通りの内容になった。もちろんその「運」は何もしないで転がってきたのではなく、きちんと人事を尽くしたからに他ならない。「リーグ優勝を逃したから」というモチベーションも大きかったのだろう。ともかく、現国立競技場での最後の天皇杯をきちんと優勝で終わらせたことを祝福したい。



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