2014年02月15日

地獄の(ほぼ)完徹(約)30時間ドライブ 前編

金曜日の日中から降りだした雪は、天気予報通り、色々な記録を破る大雪となった。そして、僕はといえば、この土日に白馬でスキーをする予定だった。金曜日の夜に日の出テレビの放送があるため、夜までに現地に着くか、あるいは放送が終わってからこちらを出発するかだったのだが、同行者が2人いたこともあり、夜行で白馬に向かうことにした。土曜日には全日本パラリンピックアルペンチーム監督の壮行会を実施することになっていたので、最悪、土曜日の夜に現地に到着していれば良い。そういうわけで、金曜日の22時に埼玉を出発した。

すぐに絶望的な気分になったのは、その時間ですでに中央道も関越道も閉鎖されていたことである。しかし、この2つの高速が閉鎖されたぐらいでめげてはならない。この困難に打ち勝てば、ガラガラのゲレンデが僕を待っている(はずだ)。道路公団がヘタレなのは今に始まったことではない。

さて、一般道で白馬まで行くとすれば、一番普通なのが碓氷峠ごえである。この他に、東海道から名古屋経由で岐阜、松本と抜けていく作戦と、月夜野から上越に抜けて、津南から野沢を経由して長野に出る作戦が考えられたのだが、とにかく中央・関越・上信越道がやられているので、まずは高崎に出ることにした。そこまでの道中は当然一般道である。

まず、川越までがかなり苦労した。川越街道はほぼ全行程で大雪で、積雪は20センチほど。道路には高速道路を閉鎖されて困ってしまったトラックが大量にあふれている。こいつらがガンなのだ。チェーンでゴリゴリ走るので、水分の多い雪がかたまりになってゴロゴロ転がっている。おかげで、運転していても乗り心地が最悪である。のみならず、頻繁にハンドルを取られるので、雪道というよりは未舗装の悪路を走っているような状態になっている。

これは一体どのくらい時間がかかるのかわからないぞ?と思い始めたころ、五輪のフィギュアが始まった。前を走る車の車載テレビで画像を見ながら、のんびりと渋滞の中でラジオの五輪中継を楽しんだ。アナウンサーは必死にフィギュアの滑りっぷりを伝えようとしているのだけれど、「くるくると回っています」を連発するばかりで代わり映えがしない。まぁ、仕方ないかもねぇ、と思っていると、渋滞の車列がびくともしなくなってしまった。どうやら大きな川にかかった橋の上で、大型トラックが立ち往生しているようだ。しかし、正確な状況は全くわからない。はて、どうしたものか、と思いつつ、約1時間が経過し、スケート中継は羽生君の番になってしまった。相変わらずくるくるを連発していたが、珍しかったのは「白鳥のクビのようなポーズ」というフレーズで、「こんな風に滑っているのかなぁ」と、白鳥のクビのポーズを真似てみたら、「それは鳩」と言われてしまった。なるほど、鳩だった。じゃぁ白鳥はどんなだろう?と思っていたのだが、それでも前の車は動かない。やがて羽生くんの金メダルが確定したのだが、スケートの放送が終わってしまっても、まだ動かない。

と、僕の車の後ろにいた観光バスから大量の人間が降りて、前の方に歩いて行く。さては偵察隊か?と思っていると、30分ほどして、彼らが戻ってきた。車の窓越しに話しかけてくるので何かと思ったら、外人が片言の日本語で「大型 トラック ・・・・ もう大丈夫」などと喋ってきた。部分的にしか聞き取れなかったけれど、彼らが救助したらしい。素晴らしい。

やがて、車がようやく動き出した。いやぁ、良かった、と思ったのもつかの間。目の前のトラックがスタックして身動きできなくなったのである。こ、これは・・・、と思っていたら、またまた後ろの観光バスから外人たちが飛び降りてきた。そして、みんなでトラックを押し始めたのである。




素晴らしい。おかげで前の大型車は無事スタックから抜け出すことができた。この橋で多くの大型車が道を塞いでいたせいなのか、そこから先はしばらく順調だった。

積雪はどんどん増えて、空は明るくなってきてしまった。まだ高崎にも着いていないのに、である。なんとか夜までには到着したいのになぁ、と考えていたのだが、それは難しいかも知れない。しかし、殊勝なことに、ガソリンスタンドやコンビニはこんな状態でもきちんと営業している。これなら当分は大丈夫なはずだ。




道の反対側は大渋滞である。東京に行くのは大変そうだなぁ、などと思っていたのだが、不吉だったのは、停電なのか、一部の信号が機能しなくなっていたことである。




こういう交通の秩序を守るためのインフラに影響が出てくると、都市機能はもろい。うーーーーん、やばいなぁ、と思いつつ、ガラガラの道路を高崎に向けて走っていたのだが、高崎到着を目の前にして、片側二車線の17号線が自動車で溢れ、びくともしなくなった。最初は「あぁ、また渋滞か」ぐらいに思っていたのだが、不審に思い始めたのは、1時間経っても車が一センチたりとも動かなかった頃である。車の外に出て様子を見ても、見渡す限り渋滞で、動き出す気配がない。雪の中で動いているのは鳥ぐらいのものである。




横の道に逃げようと思ったのだが、ちょっと行った場所で身動きができなくなった車が何台も止まっている。踏み固められていない脇道に逃げるのは危険だ。コンビニの駐車場も全く除雪されていないので、一度駐車場に入ればゴキブリホイホイのように、脱出不可能になる。運転手一人を残して、コンビニ部隊を派遣し、朝食やジュースを買ってくることにした。

いつになったら事態が好転するんだ、と思っていたのだが、なんと、午前中一杯、17号の第一製パン工場前で足止めされてしまった。動くきっかけになったのは、おまわりさんがトラックの運転手に一人ひとりお願いをして回ってくれたおかげである。この時になって初めてわかったのだが、片側二車線の道路を、トラックたちが完全に塞いでしまっていて、しかも、多くの運転手たちは運転をすっかり諦め、シートを倒したり、荷台に移ったりして、寝てしまっていたのだ。酷いのになると、車を乗り捨ててどこかに行ってしまっているようだ。おかげで前の車が動いても、後に並んでいるトラックがそのままそこで道路を塞いだままなのである。




おまわりさんは、こうしたトラックの非協力的運転手を一人ひとり起こしては、端に寄せるか、前に行くかのお願いをしていた。そのおかげもあってか、小さい乗用車なら、ギリギリで止まったトラックの隙間を縫うようにして、渋滞を脱出することができたのである。

時間はもう14時、いい加減お腹が空いたし、雪が止む気配もない。高速道路は閉鎖されたままだし、長野新幹線もストップしているので、白馬に行く手段がない。これはもうだめかも知れないな、と思い、何か食べることにした。しかし、ラーメン屋はもちろん、モスバーガーのようなファストフード店ですら臨時休業である。ちなみにヒートテックを買おうと思っても、ユニクロですら臨時休業である。

しょうがない、高崎の駅に行ってみよう、となったのだが、17号から高崎に向かう道も、所々でスタックしている大型車がいて、そのたびに交通は麻痺する。




やれやれ、昼ごはんはいつになったら食べることができるんだろう、と思っていたのだが、目の前にいたボルボが、突然何を思ったのか、脇道に入っていった。こ、これは、渋滞を抜け出す裏技かも知れない、と思い、前のボルボが颯爽と走っていった脇道について行こうと思った・・・途端、右折しきれずに車がスタックしてしまった。これはまずい。早速、同乗していた2人の友人が車を降りて、後ろから押してもらったのだが、積もった雪に乗り上げてしまい、車輪が空回りしている。ちょっと車の下をスキーの板で掘って、今度は前から押してみたら、ようやく雪の塊から脱出することができた。この辺りの雪はかなり湿っていて、硬さもあって危険である。

しかし、あちこちでトラックが道を塞いでいる幹線道路を使っていては、明日になっても高崎には到着できない。よし、と覚悟を決めて、慎重にボルボが開拓した脇道に入っていったのだが、500メートルほど進んだところで、道路の真ん中を歩いていた歩行者に道を塞がれて、車を停めたが最後、前にも後ろにもいけなくなってしまった。車の腹が雪の塊に乗り上げてしまったようだ。3人で車を降りて、雪を掻きだして、脱出を試みたのだが、今度は全く脱出できそうな気配がない。今まで散々迷惑をかけられてきたのだが、今度はかける側になってしまった。

はてさて、と途方に暮れていると、前からやってきたのがスコップを手に助っ人団を形成する地元の兄ちゃんたちである。「はーーーい、救出しますよーーー」という軽いノリで、みんなで車の下を掘り出した。ということで、大勢で作業したのだけれど、雪が硬くて思うように進まない。最初はプラスチック製のスコップだったのだが、金属が登場し、それでガリガリやっても効果がない。そこで、一度ジャッキで車体を持ち上げてしまうことにした。ちょっと面倒だったけれど、これが効果抜群で、そこから先は順調に作業が進んだ。しかし、いざ、脱出しよう、という段になった頃には、前にも後ろにも車が溜まっていて、そのままではちょっと進んだところであっという間にまたスタックしてしまいそうだ。そこで、まずは前後にいる車を通してしまうことにした。一番前にいたのはパジェロだったのだが、かなり苦労しながらも、何とか先に進むことができた。パジェロであれじゃぁ、e四駆のティーダでは苦しいのは当たり前である。

四駆の皆さんに通過してもらったあと、ようやく僕の番になったのだが、「行けるかどうかわかんないから、とりあえずチャレンジしてみよう。もし動いたら、止まったら終わるので、『さようなら〜』という感じでそのまま一気に走り抜けてしまえ」という作戦を授けられた。大勢が乗っているとやっぱり難しくなるので、同乗者は後ろからダッシュすることにした。さて、作戦実行。動いたっ!

走りだしてみると、轍が非常に深く、車高がそれほど高くない僕の車はいつ雪に乗り上げても不思議ではない。片側1車線道路だけど、雪で交互通行の状態なので、止まったらまた大勢に迷惑をかけてしまう。前から車が来ないことを祈りつつぐいぐい進んで、かれこれ500メートルは進んだかと思うあたりでようやく雪が少ない場所を見つけ、そこでハザードを出して停車し、同行者2名を待つことにした。危険地帯がそこそこ長かったのでちょっと時間がかかったけれど、友達二人は雪が積もった歩道をよろよろと走ってきて、なんとか合流することができた。この頃になると、もう夕方である。さて、どうしようか、と相談したのだが、もう雪に乗り上げて身動きできなくなるのはゴメンである。一番安全なのは立体駐車場なので、高崎の駅前にあるヤマダ電機の駐車場に駐車することにした。今いる場所からは、平常時なら5分の距離である。

なるべく太い通りを選んで何とか駅前に到着すると、ロータリーをぐるっと回って駐車場に入れることに成功した。ヤマダ電機に入ると、5階にあるレストラン街に行ったのだが、中華のお店を一軒残して、あとは全部臨時休業だった。一択なので中華の店に入り、僕は中華粥を食べた。ちょっとゆっくりして、長野にいる先発隊に「もう無理なので引き返す」と連絡を入れ、今度は東京に戻る大冒険の始まりである。

地獄の(ほぼ)完徹(約)30時間ドライブ 後編

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