2014年05月07日

金沢和傘 松田和傘店

ことの発端は、白馬で元五輪選手が主催したお花見だった。主催者が主催者なので、集まってきた人たちも一流どころばかり。その中で、僕が自分の和傘を自慢した。天気は良かったのだが、東京でチェックした天気予報では雨だったので、東京から持ってきていたのだ。天気が良くても、それを自慢せずにはいられなかったのである。わざわざ車から持ち出してきて、みんなに見せていた。すると、僕の傘を見たそこそこ年配の女性が、「これから金沢に行くなら、金沢の和傘を買ってきたらどう?」という話をしてくれた。なんでも、もう80歳を超える名人が一人で作っているそうで、弟子を取らず、体力的にも厳しくなってきていて、運が良くないと買うことができないとのことだった。この話を教えてくれた女性は定年後にあちこち旅して回っている方で、日本中、ほとんど知らないことがないような人なので、情報には間違いがない。早速インターネットで調べて、松田和傘店という店を見つけた。これは行かないわけにいかない。

まず、最初に訪問したのは3日の夕方だった。兼六園を見てから向かったのだが、松田和傘店まではそれほど遠くなく、車で10分ほどで到着した。しかし、不定休の松田和傘店は休みだった。連休中は営業していないのかも知れない。僕が金沢に滞在している間はずっとお休みかも知れないので、店の前で写真を撮って、宿に戻った。




翌日は昼間に茶碗まつりに行くことになっていたので、それが終わってから訪問してみようと思い、まずはお店に電話をしてみた。すると、今日はやっているらしい。閉店は17:30ぐらいとのことだった。茶碗まつりの会場からは車で約40分ほどなので、16時に茶碗まつり会場を出発し、和傘店に向かった。3日は真っ暗だった店だが、4日はちゃんと営業していた。店の中には、作りかけの和傘が吊るされていた。







また、壁には完成した和傘が吊るされていて、床にも30本以上の傘が置かれている。これは壮観である。耳が遠くなった松田弘さんとのコミュニケーションは、なれるまでちょっと大変だった。それでもなんとか、埼玉から和傘を買いに来たことを伝えることに成功すると、「見るだけならただだから」と、色々な和傘を見せてくれた。










松田さんによると、和傘は今はほとんど全部受注生産で、お客さんのオーダーに合わせて製作する、その際、材料が余るので、同じデザインや似たデザインの傘を2、3本作る、その余りものがここに並んでいて、それは購入することができる、注文から完成までは3〜6ヶ月ぐらいかかる、一本の傘を仕上げるのに、断続的に30時間ぐらいの時間を投入しなくてはならない、とのことだった。

あとは、もう今年で90歳だとか、奥さんは亡くなって隣のお寺で眠っているとか、昨日は孫が子どもを連れてきたので休みにしたとか、以前はデパートでも販売したのだが、同じものを10本作れなどと無理を言うのでやめたとか、色々な話をしてくれた。

ところが、である。「この傘はいくらですか?」と聞くと、何故か値段を教えてくれない。もしかしたら、和傘を買うような金銭的な余裕がない奴と思われたのか、あるいは、値段を言うとびっくりしてしまうと思われたのか、単にコミュニケーションが成立しなかったのか、理由はわからないのだが、価格を教えてもらえなかった。途中、千葉から来たというカップルが同じように、「母の日のプレゼントに買いたい」という話をしたのだが、やはり価格を聞き出すことができず、帰っていった。

松田さんに聞くと明日も普通に営業しているそうなので、とりあえずこの日は傘を見ただけで退散した。

そして、5日、都合3回めの訪問である。ところが、店はあいているものの、松田さんの姿が見えない。15分ほど、店頭で「すいませーーーん」「おはようございまーーす」と声をかけていると、近所の常連さんっぽい人がやってきて、「あぁ、松田さん、耳が遠いから」と慣れた感じで座敷に上がりこむと、家の中に入っていって、松田さんを連れてきてくれた。さて、今日はもう石川を離れるので、もたもたしていられない。「売ってもらえる和傘のうち、男性用はどれですか?」と質問すると、「その壁にある奴だなぁ」と教えてくれた。番傘を含めて4種類ほどあったのだが、ちょっと地味で、普通の傘だったので、うーーーーーんと考えこんでしまった。お寺の住職が注文した傘などだったらしい。どうしようか、これなら、改めてオーダーした方が良いかも知れない、しかし、次はいつ石川に来ることができるだろう、などと考えていると、松田さんが何か思い出したようで、「あーーー、そういえば、こっちにもう一本あったなぁ」と言いながら、ゆっくりと立ち上がって、店の奥に吊るされている15本ぐらいの傘の中から一本を取り出した。それを見せてもらったところ、外側が紫色の蛇の目傘だった。外から見ると普通なのだが、内側から見るともみじの葉が浮き出る仕組みになっている。そうそう、こういうのが欲しかったのだ。このタイプはもう最後の一本とのことだったので、「これ、いくらですか?」と聞くと、ようやく「これは4万円じゃよ」との返事。十分に想定の範囲内だったので、二つ返事で「じゃぁ、買います」と言った。一瞬、あれ?という感じだったけれど、すぐに財布から1万円札を4枚出して手渡すと、おぉ、ありがとう、と言いながら、傘を箱に入れてくれた。次にいつ来ることができるかわからないので、一緒に写真を撮ってもらって、店を出た。




買ったのはどんな傘なのか。こんな傘です。
















これが4万円は安いよ。というか、4万円じゃぁ、あとを継ぐ人がいなくなるのも当たり前。作るのに30時間じゃ、年間70本がやっと。ってことは、全部売れても年収300万円じゃん。しかも、これ、材料費とか計算してない。世の中にはどうにもならないことってあるよなぁ、と寂しく思うと同時に、この傘は一生大事に使っていこうと思った。

#他にも大事な傘は2本持っている。

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この記事へのコメント
素敵な傘を見せて頂きました。私も傘作り始めました。勉強になります。
Posted by 中谷佐和 at 2017年01月20日 02:26
狭い世界なので、どこかでお会いするかもしれませんね。がんばってください。
Posted by 元木 at 2017年01月20日 14:49