2014年05月26日

成蔵(再訪)

先月食べた成蔵が非常に印象が良かったので、今度は銘柄豚を食べてみた。

先月のレビュー:成蔵(なりくら)

雪室熟成豚というらしく、文字通り、雪室で熟成した肉のようだ。雪室とは僕のように一年の半分ぐらいを雪国で過ごしていた人間にはそれほど珍しくないのだが、要は天然の冷蔵庫で、倉庫に雪を貯めこんでおいて、冷蔵庫代わりにする施設である。雪が溶けてしまう9月ぐらいまで、0℃、湿度90%ぐらいを安定してキープすることができる。この雪室で熟成させた肉を使ったシャ豚ブリアンが3700円、特ロースかつ定食も同じく3700円である。とりあえず、いつもどおりヒレかつのシャ豚ブリアンを注文してみた。







長期熟成による旨味の強さが売りのようだが、確かに、旨味は強い。しかし、むしろ強すぎる印象だ。熟成とはすなわちたんぱく質の分解で、言葉を変えるなら「腐らせている」のと同義である。同じような熟成食品はたくさんあって、ワインも、醤油も、味噌も、発酵させている食べ物は全て「熟成」しているものだ。熟成の手法には色々あって、酵母や細菌を使うのが一般的だが、肉の場合はこうした微生物の力を借りず、肉にもともと存在するたんぱく質分解酵素によって行うことがあるようだ。こうした分解系の食べ物にはほぼ共通の特徴があって、それは味と匂いが強くなることである。そして、この雪室熟成肉も、同じように味と匂いが強い。その個性の強さが、この店の繊細な揚げ技術に今ひとつフィットしていない気がする。これなら、ポークソテーやポークジンジャーなどの方がマッチしそうだと、一口食べて思った。ソースをかけて食べればまた違った感じかも知れないのだが、それはそれでもったいない。この店のかつの衣は非常にデリケートなので、ソースをかけてしまうのは野暮というものだ。熟成のおかげで柔らかいのは間違いないのだが、風味の点でマイナス、というのが正直なところである。

同行者が特ロースを注文したので、二切れほど食べさせてもらったのだが、ヒレに対して、ロース肉ではそれほど匂いの強さが気にならなかった。また、旨味もヒレ肉ほど強烈ではない。ロースの脂がそれらを丸め込んでマイルドにしているのかも知れない。とはいえ、完成度はこちらも霧降高原豚の特ロースの方が上だと思う。




とんかつの肉は、ただただ熟成して味が濃ければ良いというものでもない。この店の場合、繊細で完成度が高いかつで、その技術はレギュラーメニューの霧降高原豚に合わせられている。雪室熟成肉の質は高いのかも知れないが、その方向が店の方向と合致していない印象なので、初めてこの店で食べる人には通常の霧降高原豚のかつをおすすめしたい。一方、濃い味や香りが好きな人には、雪室の方が美味しく感じられるかも知れず、リピートで訪問するなら挑戦してみるのも悪くないだろう。

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