2014年07月08日

抜目のない未亡人




最近の演劇は、「野田秀樹作品」「東京芸術劇場」「お気に入りの役者さん(段田安則さん、堺雅人さん、大森南朋さんあたり)出演」のどれかを満たしているものを観るようにしているのだが、今回は段田安則さん出演ということで、久しぶりに新国立まででかけてきた。ここ、10年近く前に円城寺あやさんが出た「コミュニケーションズ」や、「透明人間の蒸気」の野田地図版、その前だと「贋作・桜の森の満開の下」の野田地図版あたりを観にきたのだけれど、それ以後はなぜか全く縁がなく、凄く久しぶりだった。開演前に幡ヶ谷でラーメンを一杯食べて、腹ごなし代わりに歩いて初台へ。劇場に入ると、奥行きのある馬鹿でかい舞台で、これは贅沢な作りだなぁと感心した。

内容は、映画祭に招かれた年配(?)の女優と、彼女に出演を願う4人の映画監督たちのドタバタコメディという感じである。何か凄い仕掛けがあるとか、教訓があるとか、心に残る名セリフがあるとか、そういった芝居ではなく、単純に楽しい時間を過ごしましょう、といった肩肘張らないものになっている。ストーリーは他愛ないものだが、面白おかしいところ、軽妙なテンポの笑いについてのみ脚本家が主張し、あとは役者を活かす、というタイプの芝居で、三谷幸喜作品としては個人的に最も評価できるタイプの作品だった。これは、「三谷幸喜は引っ込んでろ」という意味ではなく、脚本家・演出家としての三谷幸喜の気配をいかに上手に消すかが、彼の腕の見せ所だということだ。アテガキしかせず、再演も滅多にやらないのだから、その瞬間の役者の良さをいかに引き出すかが重要で、この舞台はまさにそんな感じに仕上がっていた。

芝居で中心的な役割をはたすのは大竹しのぶさん、八嶋智人さんの二人で、芸達者な大竹さんは、劇中で多様な人物を次々に演じ分けるという役を、実に簡単そうに演じていてさすがだなぁ、と思った。とはいえ、さすがに声は年齢的な変化があるようで、ちょっと黒柳徹子さんのような雰囲気になっていた。一方の八嶋さんもカムカムミニキーナの看板俳優らしく、年齢を感じさせない躍動感で広い舞台を所狭しと走り回っていた。トリビアで八嶋さんとコンビを組んでいた高橋克実さんは離風霊船時代から(ハゲる前から?)観ているのだが、最近は(ハゲてからは?)すっかり安定したコメディ俳優っぷりである。木村佳乃さんを舞台で観たのは初めてだったのだが、「喋らずにじっとしていれば良い女」を好演していた。峯村リエさんはケラの舞台や時々映画で見かけるぐらいだったのであまり印象に残っていなかったのだが、この作品では大竹さんの相手を見事に演じていた。お目当てで行った段田さんはいつもどおりの安定感だったのだが、ちょっと出番が少なかったのが残念といえば残念だった。三谷芝居は良い役者を惜しげもなく投入するのがカラーでもあるので、仕方ないと言えば仕方ない。役者の無駄遣い(良い意味で)といえば、浅野和之さんの出番の少なさも特筆すべきところで、それでもちゃんと印象に残る芝居をしているところが素晴らしかった。

全体としてちょっと残念だったのは、少なくない数の役者さんがマイクを使っていて、その音声が不自然だったこと。半分以上の場面では気にならないミックス具合だったけれど、4分の1くらいは生声とマイク声のミキシングに不自然なところがあるように感じられた。あれは劇場の音響のせいじゃないと思うんだよなぁ。

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抜目のない未亡人
上演台本・演出:三谷幸喜
7月31日(木)まで、新国立劇場中劇場にて上演
http://www.siscompany.com/miboujin/gai.htm

余談1 我が家には夢の遊眠社のLDが大量に眠っているのだが、あちこちでOBの役者さんたちが活躍しているのを見て、そろそろ他のメディアにダビングしようと思い始めた。

余談2 僕が芝居を観始めた頃の演劇界は小劇場全盛の頃で、その頃活躍していた人たちがそこそこの頻度で今も活躍している。劇団という枠にはまらず、プロデュース公演という形で色々なところに顔を出してくれるので、あーーー、懐かしい、今も頑張っているんだなぁ、と思うことが結構あって、それはそれで楽しい。

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