2015年07月06日

四つ葉

たまにはすっぽんを食べようと思い、荻窪の四つ葉に行ってきた。

ダシを張った鍋に下ごしらえ済みと思われるすっぽんを投入し、前足、クビ、エンペラ、肩甲骨、胸骨と、色々な部位を食べさせてくれる。二人で一匹を食べて一人1万5千円程度と、すっぽんとしては安価な店である。

最初にひらめの刺身。厚切りなのに柔らかくて美味しい。わさびも変に刺激が強すぎず良いものを使っている。

ひらめを食べ終わると、あとはすっぽん。面白かったのはすっぽんの味付けで、特に肉の部分の味が濃い。すっぽんというと大抵が生姜、酒、みりんなどで濃い目に風味づけして、すっぽん独特のえぐみや臭みを打ち消すのだけれど、ここはそういう力技ではない。とはいえ、全く素のままのすっぽんという感じでもない。想像で書くなら、軽く下茹でして、血や血の多い臓器を酒かダシで洗い落とし(これはぶり大根を作るときに僕がやっている方法)、さらにダシで茹でるといった下ごしらえをしているのではないか。ただ、そこから先、どうやって下味をつけているのかは皆目見当がつかない。筋肉と骨に旨味が集中しているので、食べるときは肉を良く噛んだほうが良いし、骨のそばは単にしゃぶるのではなく、歯を立てて肉をこそぐようにして食べると美味しい。

最後に雑炊を3回に分けて食べさせてくれる。もちろんすっぽんを茹でたスープで作ってくれるのだけれど、これが驚くほど淡白である。すっぽんの旨味って、こんなに薄いの?と思ってしまうほどなのだが、同時に泥臭さ、生臭さはもちろん、しょうがや醤油、みりんといった余分な味も感じられない。最初の一杯はほとんどお米だけの味、二杯目はちょっと香ばしい、いわゆる雑炊、三杯目はほとんどコメの姿が見えなくなって、半分お餅みたいな状態での仕上げになる。

雑炊の時に出てくるキャベツ、きゅうりの浅漬け、大根のお新香と、梅酒に使った梅も美味しかった。これは焼酎ではなく、薄めのブランデーのような飲み口だった。

食事中は茶道、絵画、焼き物など色々な話で盛り上がり、料理長とっておきのお茶碗も見せていただいた。

女将さん、料理長さんとゆっくり会話を楽しみながらすっぽんを上品に食べつくすという趣向の店で、すっぽん料理のひとつの完成形だと思う。普通のいわゆるすっぽん鍋をオーケストラを従えたピアノコンチェルトとすれば、この店の鍋はピアノソナタ。どちらが良いかは好みだが、この店のスタイルは多分ここでしか味わえないので、一度は行ってみると良いと思う。

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