2015年09月12日

白白庵 踊る九谷

なんだかんだで毎月のように買い物に行ってしまう陶芸展なのだが、今日は外苑前の白白庵で「踊る九谷」展である。いくつかコレクションしている牟田陽日さんと河端理恵子さんが出展しているとあって、開店ダッシュをかけてみた。と言っても、開店前15分に行ったのだが、それでも先頭。今日は整理券なし、制限なしの一斉スタート。11時ジャストに開廊し、「3階へどうぞ」と言われて階段を登ると、所狭しとびっしり作品が展示されていた。最初だから有利かと思ったのだけれど、迷っているうちにどんどん売れていく(笑)。みんな、あんまり吟味せずに買っちゃうんだなぁ。僕はどちらかというとじっくり見て、散々迷って、ようやくひとつを選ぶような買い方なので、今日も迷っているうちに候補作がどんどん売れていってしまった(笑)。思ったのは、「これが良い」と直感で感じた作品は、他の人も大抵目をつけるということ。「じゃぁ、ぴんと来たものをさっさと買っちゃえよ」って言われちゃいそうなんだけれど、色々検討するのも買い物の一部なんだよね。それに、迷って迷って、ようやく決断した作品のほうが愛着がわく。

今日は、牟田さん、河端さんの作品はあっという間に行き先が決まってしまったので、他の作家さんの作品をじっくり見ることにした。

まず面白かったのが川上真子さんという染付の作家さん。絵も良いし、ダミもムラがなくて上手。自分でやってみるとわかるけれど、筆使いで濃淡を出すのは凄く難しい。川上さんの作品は線にほとんど迷いがなくて勢いがある。一方で塗りの部分はじっくり計算さている。あー、上手だなぁと感心した。ぱっとみて気に入ったのはヒラメのカレー皿だったのだけれど、どうせなら魚はカレイにしてくれれば良かったのに、と思い、躊躇。考えてみればうちにはカレー皿がいくつかあることだし、ペンディングにした。そのあとでちょっと小さめの酒器を見てみると、こちらもなかなか凝っている。内側のデザインも良いし、外側も丁寧に塗られていて、龍のぐい呑みをひとつ決断。

次に面白かったのが大石さくらさんという器と立体を組み合わせた作家さん。古くは宮川香山、最近だと田畑奈央人さんあたりと流れを同じくするような作風。ひと目でカッコイイな、と思ったのが黒い本体に花とカエルを添えたぐい呑み。カエルの所作がユーモラスだし、花や葉っぱの造形も良い。すぐにピンと来たのだが、三種類あって、花が良いのと、カエルが良いのとで迷った。すると、横にいた人がカエルが良い作品を買ってくれたので、迷う必要がなくなり、花が良い方を決断。すぐに目につくのはカエルなんだけれど、手に持ってみると存在感があるのは花の方で、どちらを選ぶかは好みの問題。なので、残り物に福があると判断した。

次に見たのは北井真衣さん。この作家さんの作品を見るのは初めてではないのだけれど、下手なのか、うまいのか、正直良くわからない。直感的には面白いんだけれど、ちょっとぶっ飛びすぎている。お花畑って言ったら言葉が悪いんだけど、とっちらかった子供部屋みたいな脳みそがあって、その脳みそに正直に向き合ったらこんなのできちゃいました、という感じ(笑)。いや、褒めてるんだよ?ただ、あまりに個性が強すぎる食器はあきるのも早そうなので、今回はスルー。

それから、伊藤由紀子さんという作家さん。こちらはきのこをモチーフにした立体作品や、小物を出展。ただ、僕はどちらかというと使える焼き物が好きなので、今回はスルー。

ということで、成果もあったので、あとは白白庵の2階で13時からスタートの金沢酒会に参加。これは、踊る九谷の作家さん達の作品を使っての飲み会である。一杯500円で、当たり前だけどお金さえ払えばいくらでも飲める。




金沢ゆかりのつまみも用意されていたので、作家さん達を含めておしゃべりしながら軽く4杯ほど飲んでみた。北井さんは作品同様面白い人で、キャラがそのまま作品にあらわれていて面白かった。使われている器たちはどれも「ワケあり」で、そのワケを作家さん自身から直接聞けるのも楽しかった。そして、少し酒がまわってくると不思議なことに、「待てよ、これ以上ガブガブ飲むくらいなら、今回はスルーしようと決めた作品をもう一度チェックして、お持ち帰りしたほうが良いんじゃないだろうか?」と思い始めた。そこで、ちょっと酒を飲むのを中断し、3階に戻ってみた。

戻って改めて見てみると、さっきまで見ていた作品たちが大声で呼んでいる気がしてきた。しまった、酔わせて財布の紐を緩めさせる作戦だったか?と思ったのだが、時すでに遅し。白白庵の思惑通り、大石さんのイモリ(ヤモリ?縁起物だからヤモリかな??)の茶碗と川上さんのサラダボウル(タコとヒラメ)を追加購入してしまった(作品は10月に郵送されてくるので、到着次第写真で紹介する)。

#大石さんはてんとう虫のぐい呑みも候補だったのだが、狙っていた作品がすでに買われてしまっていたのである意味渡りに舟で茶碗に転向した。

なるほど、ギャラリーで酒を振る舞うのはなかなか見事な作戦である。ということで、本日の収穫は川上さんのサラダカップ2つと龍のぐい呑み(おちょこサイズ)、大石さんのぐい呑みとお茶碗となった。お馴染みの牟田さんと河端さんについては収穫なしとなったけれど、お二方はすでに傑作を持っているのであきらめもつく。新しい出会いがあったことを喜ぶべきだろう。それにしても、やはり今も生きている作家さんとは、実際に話をしてみるのが一番だと思う。そこそこ陶芸をやっていても、いまだに見た目だけでは陶器か磁器か、上絵か下絵かすらよくわからないことがある。そんなとき、作家さんから直接話を聞くことができればすぐに解決するし、作家さんがどこにこだわっているのかとかも参考になる。

最後に、販売手法について感じたことを書いておく。

開店と同時に一斉に入店して、早い者勝ちで購入というのは公平と言えば公平だけれど、やはりもう少し落ち着いて買い物がしたい。開店当初の一時間でも良いし、前日の夜でも良いので、公式なプレビューの機会を設けて欲しい。その上で、購入は早い者順でも良いし、抽選でも良い(個人的には抽選の方がベター。朝早くから並ぶのは時間の無駄でもったいない)ので、決められた順番で買っていく。この際、1つ、あるいは2つといった個数制限を設けておいて、さらに買いたい場合は二巡目にエントリーする。こういうやり方で売ってくれると、買う側としては負担が軽くて助かる。今後、人気陶芸家の作品を扱うギャラリーさんには、一考していただければ幸いである。

#あと、買う側は買う側で、展覧会の会期中はなるべくお持ち帰りせず、赤丸シールで済ませておきたい。個人蔵になってしまったら、なかなか作品を見る機会がないのだから。

#今回の展示は各作家さんがそこそこの数出展しているので、まだまだいいものが残っている。時間のある方はぜひどうぞ。あ、当たり前だけど、どうせ行くなら早いほうが良いですよ。

【南青山・白白庵 季節の催事「秋分」】
「 踊 る 九 谷 」
6 women KUTANI-YAKI artists exhibition/ “Dancing KUTANI”
9月12日(土)〜23日(水・祝)
※会期中、木曜定休
会場 白白庵(3階企画展示室)
〒107-0062
東京都港区南青山二丁目17-14
TEL & FAX. 03-3402-3021

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