2015年11月27日

黄金のアデーレ 名画の帰還

womaningold


個人蔵だったにも関わらずナチスに強奪され、その後オーストリア所有となっていたクリムトの絵画の返還を求め、ユダヤ人の個人がオーストリアを相手にして裁判を起こすという、実話に基づく作品。

ナチスの台頭とその圧政の様子をところどころ織り交ぜて裁判劇が進んでいく。大まかなストーリーと、構成はなかなか見事だと思う。ただ、あまりにも詰め込みすぎのため、話の展開がスピーディ過ぎて「え?」と思ってしまうところも少なくない。「うわーーー、これは大変だぞ?」という作業があっという間に完了してしまったりするので、「こんなに簡単なら最初からやれば良かったのに」と思ってしまう。また、主人公のおばあさんマリアの心変わりが激しく(いい方向へも、悪い方向へも)、行動原理が良くわからない。実際、そういう人物だったのかも知れないのだが、感情移入しにくいところがある。

人物描写が不足しているのはマリアだけではない。弁護士も、「最初は金のためだった」とセリフで説明してしまうのでは、やはり物足りなく感じてしまう。徹頭徹尾同じスタンスの人物はともかく、途中で心境が変わっていく人達については、映画がもうちょっと長くても良いから、心の動きを丁寧に描けば良かったのに、と思ってしまった。

とはいえ、ナチスによって略奪された個人蔵の美術作品の扱いに対するオーストリア人たちのスタンスを知ることができて興味深かったし、ナチスの遺した爪あとのひとつを知ることができたのも良かった。教養として観ておきたいし、エンターテイメントとしてもなかなかの内容だったと思う。

全く余談だけれど、いろんな映画で登場するあの観覧車は、やはり実物を観ておくべきなんだろうな、と思った。

評価は☆2つ。

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