2015年12月17日

夫婦同姓に関する法律が合憲という判決について

1.平成26(オ)1023  損害賠償請求事件 最高裁判例全文
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/085546_hanrei.pdf

2.憲法13条とは
すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


3.憲法14条1項とは
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。


4.憲法24条とは
1.婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2.配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。


5.第2について
婚姻という身分関係の変動を自らの意思で選択することに伴って夫婦の一方が氏を改めるという場面であって,自らの意思に関わりなく氏を改めることが強制されるというものではない。

→つまり、姓を変えるのが嫌なら結婚するな、ということ。

6.第3について
本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。

→習慣と法律の双方があいまって不平等が存在しており、習慣を変えるのが困難である以上、法律を変えるべきではないか。

家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ,その呼称を一つに定めることには合理性が認められる

→家族が基礎的な集団単位と捉えられることには同意するが、その呼称を一つに定めることに対する合理性には全く説明がなく、同意することもできない。

夫婦同氏制は,婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく,近時,婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ,上記の不利益は,このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである。

→それでも、免許証や健康保険証などは変更を余儀なくされる。通称使用の範囲を拡大しない限り、氏名の変更によって他者から「結婚した」「離婚した」と推測される。

7.第6について
(1)裁判官寺田逸郎の補足意見

全般的に「今までこの国はこれで楽しくやってきたんだし、文句を言わない人が多数なんだからこれで良いじゃん」というトーン。国民審査ではぜひバツをつけたい。

(2)裁判官岡部喜代子の意見
氏名自体が世界的な広がりを有するようになった社会においては,氏による個人識別の重要性はより大きいものであって,婚姻前からの氏使用の有用性,必要性は更に高くなっているといわなければならない。我が国が昭和60年に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に基づき設置された女子差別撤廃委員会からも,平成15年以降,繰り返し,我が国の民法に夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が含まれていることについて懸念が表明され,その廃止が要請されているところである。

96%もの多数が夫の氏を称することは,女性の社会的経済的な立場の弱さ,家庭生活における立場の弱さ,種々の事実上の圧力など様々な要因のもたらすところであるといえるのであって,夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても,その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用しているのである。そうすると,その点の配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは,多くの場合妻となった者のみが個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ,また,自己喪失感といった負担を負うこととなり,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえない。

現時点においては,夫婦が称する氏を選択しなければならないことは,婚姻成立に不合理な要件を課したものとして婚姻の自由を制約するものである。

通称は便宜的なもので,使用の許否,許される範囲等が定まっているわけではなく,現在のところ公的な文書には使用できない場合があるという欠陥がある上,通称名と戸籍名との同一性という新たな問題を惹起することになる。そもそも通称使用は婚姻によって変動した氏では当該個人の同一性の識別に支障があることを示す証左なのである。既に婚姻をためらう事態が生じている現在において,上記の不利益が一定程度緩和されているからといって夫婦が別の氏を称することを全く認めないことに合理性が認められるものではない。

→非常に同意できる部分が多い。なお、裁判官櫻井龍子,同鬼丸かおるの二名はこの意見に同調している。

(3)裁判官木内道祥の意見
同氏でない婚姻をした夫婦は破綻しやすくなる,あるいは,夫婦間の子の生育がうまくいかなくなるという根拠はない

→夫婦別姓反対派の根拠薄弱なところを指摘している。別に夫婦別姓を強要しているのではなく、夫婦別姓を希望するカップルには別姓を選択させてあげても良いのではないか、ということなのだから、夫婦同姓を主張する保守派は法定までして強制する根拠をきちんと示すべきである。

(4)裁判官山浦善樹の反対意見
婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」及びこれを更に検討した上で平成8年に法制審議会が法務大臣に答申した「民法の一部を改正する法律案要綱」においては,いわゆる選択的夫婦別氏制という本件規定の改正案が示された。

かつて我が国と同様に夫婦同氏制を採っていたとされるドイツ,タイ,スイス等の多くの国々でも近時別氏制を導入しており,現時点において,例外を許さない夫婦同氏制を採っているのは,我が国以外にほとんど見当たらない。

我が国が昭和60年に批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に基づき設置された女子差別撤廃委員会からは,平成15年以降,繰り返し,我が国の民法に夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が含まれていることについて懸念が表明され,その廃止が要請されるにまで至っている。

→国内外の状況を鑑みつつ、憲法違反が明確であると指摘している。

7.裁判官
裁判長裁判官寺田逸郎、裁判官櫻井龍子、裁判官千葉勝美、裁判官岡部喜代子、裁判官大谷剛彦、裁判官大橋正春、裁判官山浦善樹、裁判官小貫芳信、裁判官鬼丸かおる、裁判官木内道祥、裁判官山本庸幸、裁判官山崎敏充、裁判官池上政幸、裁判官大谷直人、裁判官小池裕

なお、僕の政治的立ち位置についてはこちら。
政治的立ち位置(随時更新)

この記事へのトラックバックURL