2016年04月29日

僕が日本から逃げ出した理由(3)

(3)彼岸と此岸
まだ一ヶ月しか暮らしていないのだが、米国には余裕がある。その余裕がどこから出てきているのかは謎だ。例えば、NIHの研究環境を見てみると、東大よりもよっぽど貧相である。研究機材は日本のそれより2世代ぐらい前のものだし、パソコンのOSもXPだったりする。

では、みんなが凄い勢いで働いているのかといえば、そんな感じもしない。多くの労働者たちは16時ぐらいになると帰宅してしまうし、月曜日の会話は「週末は何をしたの?」という内容に終始する。どこが高生産なのか、さっぱり見えてこない。

ただ、スーパーで農作物や畜産物が安価であることから想像できることがあって、それは米国には肥沃で広大な土地があるということだ。日光が降り注ぐ肥沃な土地は、それだけで生産に寄与する。そこに適切な人の手が加わるなら、その効率は格段に向上するはずだ。また、米国の場合、地下に石油やシェールガスが眠っている。これを掘り出すことによっても、資産を生み出すことができる。おそらく、米国の豊かさを支えている土台は、この広い国土なのだ。

米国に来て最初に感じたのは住宅コストの安さで、ホワイトハウスまで地下鉄で20分ほどの街で、占有面積が100平米で、地下に本格的なジムがあり、屋上にはプールが設置されているアパート(日本で言えばマンション)で、賃料は19万円弱である。日本で首相官邸から20分といえば、山手線内部ぐらいが該当すると思うのだが、同じ条件で家を探せば倍以上のコストになるのではないか。

一方で、日本である。日本には広大な土地がない。土地の面積だけで比較するなら、米国は日本の約25倍を有する。この差は致命的だ。エネルギー保存則を考えても、無償で天から降り注ぐ太陽エネルギーの量が米国の4%しかないのである。米国と渡り合おうとするなら、この大きなハンデはどこか別のところでひっくり返さなくてはならない。その可能性の一つが広大な海洋で、排他的経済水域だけで比較するなら、日本は世界第8位になる。しかし、この海洋資源の開発にはまだまだ時間がかかることが予想される。こうした資源を活用できるようになるまで、日本は持ちこたえていかなくてはならない。

地面が広いから米国は強い、単位面積当たりの人口が多すぎるから日本は弱い、では元も子もないかも知れない。しかし、まずはこの点をきちんと自覚する必要があると思う。

(1)最低賃金のアップが招くもの
http://buu.blog.jp/archives/51522709.html

(2)大学の運営費交付金の減額
http://buu.blog.jp/archives/51522710.html

(3)彼岸と此岸
http://buu.blog.jp/archives/51522711.html

(4)日本の向かう先
http://buu.blog.jp/archives/51522712.html

(5)日本の成長力が低い理由
http://buu.blog.jp/archives/51522713.html

(6)贈る言葉
http://buu.blog.jp/archives/51522714.html

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