2016年04月29日

僕が日本から逃げ出した理由(5)

(5)日本の成長力が低い理由
僕はこれまでずっと反アベノミクスを主張してきた。なぜなら、アベノミクスには根本的な解決策が含まれていないからだ。では、解決策とは何か。政策としての手法は、(4)に書いたように、労働市場の流動化である。しかし、これすら、根本的な解決策ではない。なぜなら、「年功序列と終身雇用をやめます」としたところで、「ふざけんな」とストライキを実施する労働者が量産されてしまうなら、やはり日本の状況は変わらないのだ。アベノミクスが多くの日本人に支持されているからこそ、今の安倍政権が成り立っていることを忘れてはならない。つまり、日本人がそれぞれマインドを変えなくてはならないのである。それは、すなわち既存の価値観の破壊である。

既存の価値観とは、例えば「みんなが働いているから自分も会社に残る」とか、「一度会社に入ったら、会社の言いなりになっておくのが一番得」とか、「大企業や公務員が人生の勝ち組」とか、「東大を出て官僚になるのが最高の人生」とか、「出る杭は打つ」とか、あらゆる次元に存在するのだが、ひとくくりにするなら「官僚主義」からの離脱である。「論語」に「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」とあるけれど、日本ではこれを「人民には法律の意味など理解させることはない、従わせておけば良い」という間違った意味で使っている。この間違った解釈こそが、日本人の体質で、今の教育方針はこういう人間を量産している。

一番大切なのは「自分の頭で考えること」だが、残念ながら「上から言われたことに素直にしたがう」人間ばかりが出世する社会だ。出世する人間がこういうタイプだから、それに倣う人間と、あとは諦めてしたがう人間が大半になる。

「みんなが残業しているから、自分も残業する」

これが、代表的な日本人労働者像である。

日本人が、日本の国内で競争している間は良かった。お互いに切磋琢磨しつつ、敗者が現れても、日本的護送船団方式でその敗者をすくい上げ、社会全体が前に進むことができた。しかし、ボーダレスの時代になって状況は変化した。

ここで、次の二つの野球チームAとBで、どちらが強そうか考えてみて欲しい。

A:定期的にポジションをローテーションする。去年はピッチャーだったが、今年はキャッチャーである。
B:能力と希望にあったポジションに固定する。この選手は遠投ができて左利きなので、ライトを守らせる。

A:体力的に無理な年齢になってきているが、本人が現役を希望しているので契約を継続する。おかげで、新しい選手を雇用することができない。
B:高齢からくる体力の衰えから、トップチームでの戦力外となった。ちょうど他国のリーグで投手を欲しがっている球団があったので、自由契約になって移籍した。チームは登録選手に空きができたので、新戦力を雇用した。

A:入団選手は高卒のみに限定する。
B:高卒、大卒、社会人と、あらゆる経路からの入団を妨げない。大学の中途学年からでも入団を許可する。

A:選手の調子や体調には無関係に、毎日決まった時間に練習する。
B:それぞれの選手がコーチと相談しながら自分に必要な練習をする。

A:打順は入団時期の古い人間からとする。
B:選手の特徴(足の速さや長打力、選球眼など)を考えて、適性の高い打順に配置する。

A:選手はチームの方針には一切口出しさせない。
B:監督、コーチ、選手の風通しを良くし、きちんと選手の意見を吸い上げる。

A:現時点の能力とは無関係に、出身大学で入団を決める。
B:新入団選手は、選手の能力で決める。

米国がBでやってくる中、日本がAでやっていて、勝負になるだろうか。上の項目の中には、一つか二つぐらいはAの方が好ましいというものがあるかも知れないが、全部揃ってしまえば、全く相手にならないのではないか。

しかし、今の日本は「Aの方が自分で考える必要がなくて楽」と考えている節がある。「いやいや、俺はプロ野球選手じゃなくて、草野球レベルなので」のように。だから、大学生に就職希望のアンケートを取ると「公務員」なんて選択肢が上位に来てしまうのだ。こんな社会に競争力がつくとは思えない。そうして負け癖がついてしまい、国内での競争すら不活発化してしまったのではないか。日本は、低成長であるべくして低成長なのだ。

(1)最低賃金のアップが招くもの
http://buu.blog.jp/archives/51522709.html

(2)大学の運営費交付金の減額
http://buu.blog.jp/archives/51522710.html

(3)彼岸と此岸
http://buu.blog.jp/archives/51522711.html

(4)日本の向かう先
http://buu.blog.jp/archives/51522712.html

(5)日本の成長力が低い理由
http://buu.blog.jp/archives/51522713.html

(6)贈る言葉
http://buu.blog.jp/archives/51522714.html

この記事へのトラックバックURL