2017年01月10日

マリノスの希望はどこにあるのか

最初にジュビロへの移籍話があがったとき、え?と思ったのだが、すぐにそうなるだろうな、と感じた。他の選手なら話は別なのだが、こと俊輔となると話は別だ。マリノスで育ち、海外へ出て、戻ってきてくれた選手である。人気選手が海外に出て、日本に戻った時に別チームへ行くことは良くある。三浦カズにしてもそうだし、マリノスでいえば川口能活が代表例だ。しかし、俊輔は、マリノスに戻ってきた。

こういうチームの顔というべき選手は、よそのチームも自分たちからオファーを出すようなことはしないはずだ。今でいえば、フロンターレの中村憲剛に誰がオファーを出すのか。移籍の噂が出る以上、「俊輔が、自分で出たがっている」と考えるのが当たり前である。ならば、移籍の可能性は高い。

昨シーズンの俊輔は、特に後半は怪我が長引いて、ピッチに立つことは少なかった。今後も、試合の中で活躍できる時間は減っていくだろう。これは年齢的なものだから仕方がない。その、サッカー人生の終盤においては、慣れ親しんだチームを離れるという選択も十分にありうる。それは、50歳に近くなって、日本社会を変えていこうとする行動に疲れ、日本を脱出した僕の行動にも通じるものがある。目の前にたくさんの時間があれば、いろいろな挑戦も可能だが、そうではなくなってくると、無理な手法よりも、より可能性の高い手法を選ぶのは当然である。

ここでマリノス・サポとして問題となるのは、俊輔を失うことではない。もともと、僕は俊輔が戻ってくる時、その能力を疑問視していた。

俊輔、今の状態でどこまでできるのか。最近は全然試合に出ていないので、良くわからない。しかも、レアルとか、バルサとかじゃない、スペインリーグの下位チームでもフィットできずに出場機会がなかった選手。

俊輔はちゃんと走れるのか?
http://buu.blog.jp/archives/50994445.html

あるいは、その後で俊輔はチームの発展の足かせになっているという文章も書いたことがある。

しかし、所詮は旬を過ぎてしまった選手である。この選手を中心にすえてチーム作りをして、優勝が狙えるほどJは甘くない。というか、俊輔は、他国のリーグの方がまだ活躍できたんだと思う。今のJリーグの最大の特色は、攻撃から守備への切り替えの早さと、構築されたブロックの堅固さである。その、象徴的なチームが仙台だが、テレビで観ていても驚くくらいに守備ブロックの構築が素早い。これは、鳥栖のような、実力的に下位のチームであっても同様である。守備の対応が早いのだから、当然攻撃にもスピードが要求される。しかし、俊輔は素早いカウンターの起点になることができない(天皇杯準決勝の先取点のように、相手のミスがあった場合は例外)。俊輔は遅攻チームのキーパーソンの代表例で、正直、今のJリーグには、どこにも居場所がない。海外でも居場所がなくなり、日本で頑張って探したのが、「かつて所属していた」マリノス、ということだろう。

ガンバと、マリノスと
http://buu.blog.jp/archives/51329920.html

その後、2013年に俊輔がJリーグMVPになるほどの活躍を見せたのはご存知の通りで、僕の中村俊輔限界論はあっさり打ち破られたのだが、確かに存在感はあるものの、今後、優勝を目指すチームの大黒柱となりうるかと言われると、難しいと言わざるを得ない。これが、勝ったり負けたりを繰り返す、リーグ中位のクラブなら問題ないのだが、一応、名門と言われてもおかしくないのがマリノスである。マリノスは、本来、常に優勝争いに顔を出していなくてはいけないチームのはずだ。

そして、今のチームの柱は間違いなく齋藤学である。その学が必要としているのは、俊輔ではない。

もちろん、ピッチ上に13人とか、14人立つことができるなら、俊輔がその一人でも全く問題がない。しかし、残念ながらピッチに立てるのは11人である。その場合、マリノスの主要な攻撃パターンはブロックを作って相手の攻撃を耐え、できるだけ高い位置でボールを奪い、少ないタッチで素早く前線にボールを供給し、それを確実にゴールへつなげることである。この中で、学はラストの仕上げに関係してくるのだが、彼がやれることは相手のディフェンダーを複数引き連れて、これをかわしてゴールを決めるか、背後から攻撃参加してきた二列目の選手にパスを供給することである。このパートナーには、俊輔はなり得ない。必要なのは、たとえば香川のような選手である。最前線で学に対するプレッシャーを軽減し、また学に相手ディフェンスが集中するなら、その背後へのスルーパスを受け取り、確実にフィニッシュにつなげることができる選手だ。俊輔が活躍できるとしたら、学へパスを供給する役割だが、ここはそれほど精度が高くなくても、学の技術を以ってすれば、その作業はそれほど難しくない。俊輔は、オーバースペックなのだ。

かように、マリノスが優勝を目指すなら、俊輔は必ずしも必要なパーツではなかった。だから、俊輔の流出自体は、チーム力という観点からはそれほど大きな問題ではない。また、チームとの関係という視点からも、シャビですら移籍する世界である。移籍は仕方がない。新しいチームでの、怪我のない活躍を祈るばかりである。問題なのは、俊輔が出て行くことではなく、出て行かざるを得ないようなチーム状態の方だ。

僕は最近ようやく何も見ずにモンバエルツという名前を書くことができるようになったのだが、名前以上に馴染みがないのが、監督の戦術である。彼が何を目指しているのか、何をやりたいのかがさっぱり伝わってこない。これでは、監督のゲームプランをピッチ上で実現して行く、チームの司令塔がストレスを溜めてよそに出て行きたくなるのも道理である。そして、何よりも危惧されるのは、中村俊輔ですら愛想を尽かすようなチームに、どれだけの選手が残ってくれるのか、ということだ。致命傷になりかねないのは、柱である学が移籍してしまうことである。俊輔の移籍によって、学は完全にオンリーワンになってしまった。他の選択肢は、今のマリノスには存在しない。そして、もう何年も前から、学は海外志向なのだ。彼がその希望を実現した場合、マリノスは完全にゼロからチームを作り直す必要にせまられる。

シーズン終盤に残留争いをする姿を見たくないのは、すべてのサポーターに共通する想いのはずだ。しかし、今のところ"A New Hope"は見当たらない。

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