このところ、英国のEU離脱や釜山日本総領事館前への少女像設置など、近視眼的なポピュリズムの台頭が頻繁に目につくのだが、トランプ大統領の政策は身近で、視野が狭く、そして驚くほどのスピードで影響が広がりつつある。
約150年前、この国は奴隷制と自由貿易を争点にして内戦に発展した経験があるのだが、このままでは、内戦まではいかないまでも、深刻な分裂に至る可能性が高い。
僕がいるワシントンDCでは、移民や海外からの赴任者が多く、また、カラードの比率も非常に高いため、反トランプが過半数どころか大多数を占めている感触である。きちんと教育を受けている人が多いので、思考も長期的だ。彼らと話していると、トランプの支持派と不支持派の思考はこんな感じである。
トランプ支持派
メキシコからの違法移民が多くて迷惑である。>じゃぁ、国境に壁を作ろう。
イスラム諸国からの移民はテロリストの可能性がある。>じゃぁ、入国を規制しよう。
日本からの輸入車が多く、米国から日本への輸出車は少ない。>じゃぁ、輸入車には高い関税を課そう。
反トランプ派
メキシコからの違法移民が多くて迷惑である。>じゃぁ、国境に壁を作ろう。>そんなことしたら金もかかるし、生態系にも悪影響がでるし、色々困るよね。
イスラム諸国からの移民はテロリストの可能性がある。>じゃぁ、入国を規制しよう。>イラン人は米国でもあちこちで活躍していて、大きな損失でしょ。それに、大多数のイラン人はテロリストではないから、人権侵害じゃないの?
日本からの輸入車が多く、米国から日本への輸出車は少ない。>じゃぁ、輸入車には高い関税を課そう。>関税の問題じゃなくて、品質の問題でしょ。それに、関税分を払うのは米国民で、米国民の暮らしを圧迫するかもよ?
非常に簡単に書いてみたが、トランプの政策は行き当たりばったりすぎて、ほとんど思考というものが感じられない。目の前に自分にとって都合が悪いことがあると、すぐに大統領令にサインしてしまう。おかげで、現状でも女性や、研究者や、ビジネスマンや、外人からはあまり支持されていないし、アメリカ経済に影響が出始めれば、不支持率はどんどんアップしていくだろう。
僕は米国シティズンではないので、選挙にしても、政治にしても、基本的に傍観しているしかないのだが、幸いにして、非常に近い場所から観察することができる。
#いつまでいられるかも不透明だが。
「目の前に不都合なことがあるならとりあえず排除しちゃえ」で済むなら、こんなに簡単な話はない。それで済まないから、世界中の行政官たちは悩み続けているのであって、トランプの刹那的政策が本当に成功してしまうなら、世界中の行政組織にとって革命的事態である。
ということで、引き続きなるべくDC中心部に目を向けて、米国の動向を観察していきたいと思う。