2017年05月23日

この世界の片隅に

実は二回目の鑑賞だが、一回目は考えが整理し切れずにレビューを書かなかった。二回目でようやく書くことができる。

太平洋戦争時の広島と呉を舞台に、普通の人たちの暮らしを描いている。

技術的に素晴らしいとか、金がかかっているといった感じはないし、飛行機や鳥が飛ぶシーンが格好良いわけでもない。実に淡々と、人々の喜怒哀楽と死が描かれていくのだが、工夫されたカットや脚本、演出によってあちらこちらで感心させられるし、楽しめる。ストーリーも日本人しか作り得ないものになっていて、ピクサーが100年かけても作ることができない映画である。かといって、似たようなものをこれから作ってもモノマネであって、最初にやったこの作品が素晴らしいということだろう。

これまでにも戦時の市民を描いた作品はたくさんあるけれど、下手な実写映画よりもずっと素晴らしいできになっていると思う。戦時下の貧しい暮らしを描いても、悲惨ではなく、ユーモラスなところが良い。どんな時代であっても、どんな場所であっても、人々はそれなりに生きて行く。その様子を映画を通じて垣間見ることは、多くの人にとって有益だと思う。加えて、断片しか描かれない原爆によって、そうした多くの人々やその暮らしが一瞬にして消えてしまったことを想像させる仕組みが良い。

国連で検討されている核兵器禁止条約に唯一の被爆国である日本は反対しているけれど、そんな状況でも、クラウドファンディングによって資金を集め、この映画が作られたことに小さな希望を感じる。

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