2017年12月01日

竹内瑠璃 昔話の動物たち

このブログには「竹内瑠璃」というカテゴリーが今まで存在していなかったのだけれど、ようやく追加するときが来た。

実は竹内さんの作品との付き合いはかなり長くて、数多ある陶芸作家とのお付き合いの中でもごく初期の段階だった。しかし、実際にまとめて作品に触れるのはこれが初めてだったのだ。こういう「縁のない」作家さんというのはいるものだ。考えてみれば、一番初期に作品に出会っていた井上雅子さんと実際に会ったのも、つい最近である。

竹内さんの作品を初めて見たのは九谷陶芸村で展示されていた「エレキング」である。九谷とウルトラシリーズのコラボといえばこのエントリーを思い出すのだが、

伊勢丹新宿店、Go!Go!Go!
http://buu.blog.jp/archives/51476269.html

この時期に、竹内さんの作品も見ていたことになる。僕が初めて書いた一般向けの書籍は「ネットオークション徹底攻略ガイド」という本だったのだが、そのときのペンネームが「諸星段」という名前だったぐらいにはウルトラシリーズ、特にウルトラセブンのファンだったので、彼女が絵付けしたエレキングには特段の思い入れがあったのだが、九谷の大御所たちの作品を購入した時点で有り金がなくなって、若手の作品を買うことはできなかった。当時、伊勢丹のあとで販売していた陶芸村近くの美術館の係りの人が、「この人の作品は、これから高くなりますよ」と太鼓判を押していたことが記憶に新しい。

参考:ネットオークション徹底攻略ガイド
http://amzn.asia/62DxysN
(17年も前かよ!)

今回はたまたまタイミングがあって、ようやく本格的な個展を開店ダッシュで見に行くことができた。入店すると、すでに赤丸売約済みの作品がちらほら。これが廉価で誰もが容易に手が出せるものだと、「シャッター前に並んだのに!」と大問題になりそうだが、売約済みなのは30〜50万円程度の高額作品ばかり。これならほとんどの人は納得するだろう。それにしても、実物を見ずに売約成立することも、高い方から売れて行くことも、アーティストとして信頼されている証拠である。

さて、この展示。九谷の作家というと上絵中心、下絵ちょぼちょぼで、成形、特に動植物の造形となると田畑奈央人さんぐらいしか思いつかないのだが、今回の展示では半分ぐらい、大物のほとんどは手びねりによる造形だった。上絵付けの腕はもちろんだが、この造形の腕がとても良くて驚いた。僕が購入している作家さんだと、吉島さんの腕はピカイチなのだが(彼は原型師なので、腕が良いのは当たり前)、それに次ぐ作家さんを寡聞にして知らずにいた。多くの作家さんについて、「絵付けは良いんだから、造形は他の人に任せておけば良いのに」と良く感じていたのだが、竹内さんの立体は、他人に任せる必要性を全く感じない。京都あたりの文化圏は「造形も自分でやってこそ一人前の陶芸家」という風潮があるが(僕は別にそう思わないけれど)、そこでも問題なくやっていけるだろう。

今回、僕が一番欲しかったのは蓋の上に和犬を乗せた箱ものだったのだけれど、諸事情あって今は購入のタイミングではなかった。そこで、いつも通り、一番小さくて、それでいて手抜きの感じられない、技術が濃縮された作品を購入した。実際に手元に来るのは来年2月後半以降になるから、その時に画像で紹介しようと思う。




12/9まで、銀座一穂堂ギャラリーにて。