染付といっちんのコンビネーション(マリアージュ笑?)が澤谷さんの表芸ですが、このゴブレットはその技術を詰め込んだものです。


内部にもぎっしり。しかも、グラデーション付きです。


そして、高台の内側にまで。ここまでやると、焼くときに板にくっついてしまうリスクもあったはずで、陶芸家ならあまりやりたくない作業だと思います。でも、その「駄目押し」こそが、この作品の価値を高めていると思います。というか、ほとんど隙間がなく、どうやって焼いたんだろうと不思議に思うほどです。きっと、何か工夫しているのでしょう。

これを購入するかなり前に東京で個展を見ていて、その時はダメ出しするだけダメ出しして、「まだ伸び代がある」などと偉そうなことを言って買わなかったのですが(同行した親戚は購入)、
澤谷由子 個展 ー雪糸紡ー
http://buu.blog.jp/archives/51515068.html
この数寄さんの展示では、たくさんの作品の中からこの作品と新宮さやかさんのだけを購入したので、酒器展の中でも行列完売だった人気作家を除けば、出色のできと感じた作品です。
澤谷さんは、この頃を最後に、こうした足し算の作品(詰め込むだけ詰め込む作風)を卒業し、次の段階へと進んだようです。個人的には、卒業と言わず、時々はこういったてんこ盛りも作って欲しいと思います。どんな歌手でも、コンサートでは昔の歌を数曲歌いますし、それを聴いて喜ぶ客もいるものです。
何はともあれ、この作風の、最も成熟した時期の作品を手に入れていたことは幸運としか言いようがないです。