2018年01月24日

京大iPS研の論文不正に関する雑感

京大iPS研で論文不正が発覚した。

京大iPS細胞研究所で論文のねつ造や改ざん
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180122/k10011297591000.html

この件について、一部では「任期制の弊害」といった意見があるようだが、全く賛同できない。任期制の職業の代表例としてプロ野球選手やプロサッカー選手を挙げることができるのだが、彼らが八百長をしたところで、「任期制だからやった」などという擁護論が出てきた記憶はない。学者にだけ、こういう擁護論が出てくるのは奇妙である。

大体、学者という職業は、日本では税金に頼りきっている職業で、それにも関わらず、納税者に対する情報公開意識や説明責任感が希薄である。先日、NIHで行われた講演で、日本人の聴衆から演者の研究者に対して「米国の研究者は納税者に対する説明責任を強く意識しているが、それは何に起因するのか」という主旨の質問があって、それに対して「身の回りの一般の人たちから常にプレッシャーを受けている」という内容の返答をしていた。研究者に限らず、公務員でも、議員でも、税金で暮らしている人間に対して、米国民が日常的に与えるプレッシャーは非常に大きい。最近はどうか知らないが、少なくとも僕が日本にいて、公務員や準公務員として働いていた時に、僕に対しても、僕の周囲の同僚に対しても、この種のプレッシャーを感じたことは一度もなかった。要すれば、ぬるま湯なのだ。

「職が安定しないから不正を働いた」などの擁護論は論外である。日本の研究環境が嫌なら海外に出て行けば良い。

また、山中さんの辞職について「日本にとって損失だからやめないで欲しい」という意見も目にしたのだが、これもまた論外である。辞めるべきか、辞めないべきか、それは過去の実績とは何の関係もない。自身がトップを務める組織の中での研究不正を防げなかった責任は、少なからずあるだろう。その評価は、実績とは切り離すべきだ。極端な話、ノーベル賞受賞者なら飲酒運転や窃盗が許されるのか、ということである。もちろん、辞めろ、というのではない。事実を整理した上で、発生した不正に見合った責任の取り方をして欲しいということである。

山中さんの良いところは、寄付による研究費の確保に熱心なところで、税金に頼りっきりの日本人の感覚では「ノーベル賞受賞者にあんな乞食みたいなことをさせて情けない」ということかも知れないのだが、米国の考え方では標準である。国に頼る方が、政治家や納税者に借りを作ってしまうし、国の財政状況にも影響を受けるので、リスクが増大する。iPS研の場合は研究資金の多くを寄付に頼っているので、まずは寄付をした人たちに対する説明をしっかりする必要がある。とはいえ、今回の研究も多少なりとも税金に頼っているところはあるので、そちらの説明責任もきちんと果たすべきだ。

一番悪いのは不正を行った研究者であって、その立場の不安定さを理由にして擁護するなどはお話にならない。何より、そういう立場で、不正をせずに努力している他のたくさんの研究者に対して失礼である。そして、次に悪いのは、直属の上司だ。所長レベルに実験ノートのチェックまで任せるわけにはいかないが、研究リーダーにはもちろんその責任がある。iPS研の体制は知らないが、所長>ダイレクター>リーダー>研究者ぐらいのヒエラルキーによる管理体制はあるはずで、これらのライン上の直属・直上の上司が無能だったと言わざるを得ない。所長ともなれば、研究ノートのチェックではなく、金を集めて、研究者に研究しやすい環境を提供するのが主たる役割だろう。

不正を行った研究者は倫理観が欠如しているし、それを見抜けなかった研究リーダーはリーダーとして無能だったということで、環境がどうのこうのと言い出して擁護するのは間違いである。

#擁護するのは大抵研究のことなんか全然わかっていないど素人か、税金からお金を恵んでもらいたい無能な研究者たちなんだけれど。

馬鹿その1 位田隆一・滋賀大学長
有期雇用のため、短期間で業績を上げないと任期を延長してもらえない恐れがあるなど焦りを生む研究環境も影響しているのではないか。

出典:京都新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180122-00000057-kyt-sctch


馬鹿その2 落語家 立川志らく
山中教授がもしお辞めになったとしたら、iPS細胞の研究は本当に白紙に戻りかねないし、人類の損失になりますから

出典:livedoor NEWS
立川志らく iPS論文の不正で山中伸弥氏が辞任になれば「人類の損失」
http://news.livedoor.com/article/detail/14202292/


馬鹿その3 産経新聞
成果に過度にとらわれる風潮が大学や研究機関に蔓延(まんえん)し、研究者の良心を歪(ゆが)めている

研究不正の根を絶つため、そして日本の科学研究が低落傾向から脱するためにも、国は本腰を入れて「行き過ぎた成果主義」の是正に取り組むべき

出典:産経ニュース
iPS論文不正 山中伸弥氏の「一心」を失ってはならない
http://www.sankei.com/column/news/180124/clm1801240002-n1.html


馬鹿その4 尾木直樹
任期付き雇用で早く成果を出さないと任期の延長をしてもらえないからだと言われています

iPS細胞研究なんて大切な分野には、国が全額ふんだんにお金投入すべきではないでしょうか?

出典:オギブロ 尾木ママオフィシャルブログ
https://ameblo.jp/oginaoki/entry-12346859542.html

これは余談だが、このブログでいつも叩いている榎木英介氏についても「どうせいつものようにバカを晒しているのだろう」とタカをくくって見に行ってみたら、どういうわけか、今回はまともな意見に終始していた。

超まとも 榎木英介
こうした状況が研究不正を起こす背景になっているのか…憶測で語るのはやめたい。

山水氏を擁護する気はさらさらない

出典:iPS細胞研究も特別ではない〜科学を蝕む研究不正
https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20180122-00080760/

ともあれ、何かあると、すぐに我田引水して自分に都合の良いように解釈する奴らには要注意である。あと、これも何度も書いているけれど、研究は誰かが無理やりやらせているのではない。研究者が、好きでやっているのだ。研究不正をしなくちゃならない状態に追い詰められたなら、不正をする前に転職してもらった方が、周囲に迷惑をかけずにすむ。好きなことをやりたい、でも、思うようにならないから、人を騙す、というのは、ただの自分勝手である。