2018年04月27日

NODA・MAP版『贋作 桜の森の満開の下』への期待

NODA・MAPで『贋作 桜の森の満開の下』が再演される。僕にとってこの作品は夢の遊眠社の芝居の最高峰である。初演は1989年。劇団という集団の中で、劇団員ひとりひとりの才能を熟知した野田秀樹が、その魅力を存分に発揮できるように配慮した脚本と演出。そこへ希代の才能に恵まれた毬谷友子が融合して、見事な空間を創出した。

1991年の本作再演を経て、1992年に夢の遊眠社は解散した。その後、本作は2001年に新しいメンバーによって、新国立劇場プロデュース、制作協力NODA・MAPという形で再演された。オリジナルと同じ役者は野田秀樹のみ。そして、その時の感想は

この劇は初回のメンバーで演じることを前提にして作ったもので、役者側によっぽどの魅力がない限り、初演の役者の「役」を奪うことができないということなんじゃないだろうか。


だった。野田秀樹は、あるいは多分三谷幸喜でも同じだが、大抵の場合、オリジナルの役者で演じた作品が一番クオリティが高い。だから、

「野田(耳男としての)、羽場(上杉よりも良かったと思う。でも、ここは)、段田、毬谷、松沢、佐戸井、松浦、浅野、田山、向井、川俣(エナコの方)といった面 々による劇を見ることができたことが、とても良かった」と感じてしまった。


と感じたのである。(なお、羽場がマナコを演じたのは1991年、川俣がエナコを演じたのは1989年、段田、松浦は1989年のみ、田山は1991年のみと、いろいろ混ざっている)

とはいえ、初演から数えればこれが4回目、歌舞伎を含めたら5回目の上演である。耳男が堤真一から妻夫木聡に変わったけれど、最大のポイントである夜長姫は深津絵里が継続するし、脇を支えるヒダの王は野田秀樹、マナコは古田新太が継続のようだ。加えて、天海祐希、秋山菜津子、銀粉蝶、大倉孝二、藤井隆といった、最近の野田秀樹のお気に入り役者たちも顔を揃えている。前回から15年以上が経っており、さすがにやる方も、観る方も、過去の呪縛からは解き放たれているだろう。

今回の上演の最大の見所は、野田秀樹が、過去の自作をどこまで消化し、否定し、再生できるのか、ということである。

僕が勝手に想像しているのは、野田秀樹が本作(1989、1991)に毬谷友子という才能を起用することによって、劇団という枠組みの限界を感じたのだろう、ということだ。だから、彼は一人で夢の遊眠社を卒業してしまった。役者も、ファンも、置いてきぼりにされた。それから数えて約26年もが経過した。解散後、劇団という制約から逃れた野田秀樹は、好きなように役者を選び、使って来たはずだ。そして、その活動を通じて、それぞれの才能の質を把握したに違いない。今回の主要キャストを見ても、お気に入りの役者をかき集めている。これなら、自由に演出できるはずだ。

当然のことだが、僕は次の舞台に、旧作の上書きを期待している。記憶の中で旧作が美化されている部分も少なからずあるだろうが、それらを一蹴するほどのクオリティを期待している。劇団を解散させてしまう(勝手に僕が考えているだけだが)ほどのパワーを持っていた毬谷友子を深津絵里が過去のものとして忘れさせてくれるのか。前回は全くイケてなかった深津絵里だが、あれから15年以上が経っている。さすがに役者としても期するものがあるだろう。

劣化コピーに終わるのか、見事に再構築されるのか、今から楽しみである。

東京公演 2018年9月1日(土)−9月12日(水) 東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演 2018年10月13日(土)−10月21日(日) 新歌舞伎座
北九州公演 2018年10月25日(木)−10月29日(月) 北九州芸術劇場 大ホール
東京公演 2018年11月3日(土・祝)−11月25日(日) 東京芸術劇場プレイハウス

まずはチケットを確保しないとだな・・・。