まとまった時間が取れたので、成田で買って積んでおいた村上春樹の騎士団長殺しを読んだ。初版で買っておいて、文庫版が発売されてから読み終わるってどうよ、という感じである。
内容は「喪失」と「再生」を扱った、いつもの村上春樹。「世界の終わり・・・・」から続く、複数の話が同時並行して進む表芸ではなく、単一の話が進んでいくスタイル。
ちょっと面白いなと感じたのは、映像化が非常に難しい内容になっていたところである。古くは宮本輝の「星々の悲しみ」などが同じ趣向の作品になると思うのだが、映画化は不可能とも思える。ただ、殊能将之の「ハサミ男」ですら映画化してしまった過去があるので(作品の質はともかく)、日本映画界も侮れないところがあるのだが。ともあれ、映像化は非常に難しいと思うので、読書じゃないと楽しむことができない。
本作の主人公は絵描きである。彼を中心にして、少ない登場人物が限られた場所で人間模様を繰り広げていく。登場人物たちは大人から子供まで村上春樹調に語るので、多少の違和感を持つのだが、これはまぁいつものことかもしれない。
ただ、ちょっと3.11に結びつけたあたりはちょっと強引な印象を持った。それから、本作は、村上春樹の、おっぱいに対する並々ならぬ情熱を感じた。
読み終えてもいくつかの謎は残されたままだが、読後感は決して悪くない。ただ、「海辺のカフカ」までの名作感は持たなかった。10年ぐらい経てば、また違った感想を持つのかもしれない。