2021年05月07日

柿傳ギャラリーのこと

コロナの時代になって、世の中の色々な仕組みが変更を余儀なくされてきた。ギャラリーもそのひとつだろう。ギャラリーの一般的な機能はアーティストと一般生活者の接点を作ることで、アーティストの育成までを担っているギャラリーも少なくない。

出口側で「多くの人に美術品を紹介する」という機能があるのだから、”人を集めてはいけない”という今の状況は、決して好ましい環境とはいえない。そんな中で、どこのギャラリーも適度なバランスを模索している。

今、僕が美術品を購入するギャラリーは関東に限られてしまっている。そんな中のひとつ、柿傳ギャラリーから九谷の焼き物が三点届いた。偶然、赤い作品が3つである。

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それぞれの紹介は別エントリーに回すとして、このエントリーでは柿傳ギャラリーについて書いておきたい。といっても、ギャラリーのあゆみについては公式サイトの「店主ご挨拶」に書かれているので、僕が書くこともない。

柿傳ギャラリー 店主ご挨拶

書きたいのは、主にコロナ下での運営についてである。

今回、僕は3つの作品を購入したけれど、初日にギャラリー前に行列したわけではない。かといって、お得意様として事前に優待購入したわけでもない。展示、販売の数日前に出品される作品のそれぞれに、非常に質の高い写真を公開してくれて、初日の開場と同時に電話での注文を受け付けてくれたのである。写真で見ただけで作品の質の全てを知ることはできないのだが、それぞれの作家さんの過去の作品を見てきていれば、おおよその見当はつけることができる。そこから先は運次第である。当然、開店と同時に入店したお客さんもいたはずで、一番有利だったのはそういった現地組だったのは間違いない。しかし、電話組にもチャンスは残されていた。

僕は開店直後に電話をかけて、幸運にも比較的早い時間に電話がつながった。おかげで、「これが欲しい」と思った作品を購入することができた。

ギャラリーには、あくまでも行列してくれた順番に販売する店もあるし、先着順にせず抽選を実施する店もある。

人気作家だと転売目的の客が大量購入を目指して、大勢のバイトを雇ってバスで駆けつけることもある。本当に欲しがっている人に公平に販売するために、多くのギャラリーが知恵を絞っている。しかし、どういうやり方をしても、何かしらの問題が起きる。完璧な販売方法は見当たらないのが現状である。ただ、コロナ下で移動と密集を避けるためには、柿傳ギャラリーのようなやり方はとてもありがたい。現場のお客さんと、電話とで、開店直後のギャラリーは慌ただしかったと思う。それでもこうした対応をしてくれたことには頭が下がる。

#ちなみに前回の電話予約では僕は電話が繋がらず、あるいは別の展示での超人気作家の場合は抽選が行われ、これは当然ながら当たったりはずれたりである。

柿傳ギャラリーのもう一つの良いところは、写真の撮影に寛容なことだ。最近こそ、三越などの有力デパートでも撮影が可能になってきたのだが、柿傳ギャラリーは僕が行くようになった頃から撮影可能だった。写真を保存しておけると、作家の作品と価格のデータベースを作ることができる。これは作品を購入する際に大きな助けになる。

写真を撮ってはいけないというのはギャラリーだけでなく日本の美術館でも普通に見かける謎ルールなのだが、写真をネットに載せられたとしても大きな不都合はないはずだ。柿傳ギャラリーでは客の撮影について過去の慣習にとらわれず、合理的に考えているところが良い。

ギャラリーには良いところもあれば悪いところもある。「ここではどんな作家を扱おうとも、二度と買い物をしない」と思っているギャラリーもあるのだが、逆に「知らない作家さんだけど、このギャラリーで扱うなら面白い作家さんだろう」と思うギャラリーもあって、僕にとっての柿傳ギャラリーは後者の代表的な存在である。

今はなかなか新宿へでかけることができない。でも、ギャラリーとしては実際にお客さんに来てもらえるのが一番のはずだ。コロナがいちだんらくしたときは、まめに通いたいと思う。運営は苦しいと思うのだが、ワクチンが行き渡って、ある程度安心して街を歩けるようになるまで頑張って欲しい。