2021年12月23日

今日のアメノオト

今日はアメノオトで限定メニューの豚らーめんを食べてみた。

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なるほど。このラーメン、いくつかラーメンの定石を外している。まず、太麺なのに薄味なこと。メニューによれば「豚の出汁を優しく効かせた」ということだが、薄味なら麺は細麺にするのが定石。なぜかといえば、太麺だと麺の体積が太さの三乗分増えるので、二乗分しか増えない表面積の増加分を大幅に上回ってしまい、麺に十分な味が乗ってこないのである。家系にしても、二郎系にしても、あるいはつけ麺であっても、太い麺を提供する店は大抵どこもスープの味を濃くする。

次の定石外しは、豚の出汁にこだわったということ。これも、実際に料理してみればすぐにわかるのだが、豚、特にとんこつはどれだけ煮込んでもこってりしてくるだけで、味はほとんど出てこない。それで、豚メインの出汁で乾物を使わないというのは非常に難易度が高い。これがただのスープなら問題ないのだが、ラーメンのスープは麺を食べさせるという重要な役割を持っている。乾物なしで豚の出汁だと、麺を食べさせるのは非常に厳しくなる。

もともとアメノオトはレギュラーメニューの醤油味でも、脂は比較的多めのスープで、味がボケるかボケないかのぎりぎりのバランスを取っている。その延長線上で太麺、乾物不使用、豚の三重苦に挑戦している。では、それが功を奏したのか。残念ながら失敗に終わっていたと思う。麺にほとんど味が乗ってこないので、一杯のラーメンを食べ切るのもちょっと苦労した。

実は、アメノオトの限定ラーメンが定石外しだったのはこれが初めてではない。先日食べた鯛ラーメン、レビューでは「好みでない」と書いて逃げたのだが、正直に書けば、魚臭いので敬遠したのである。魚で出汁をとるのは和食では珍しくないけれど、料理人たちはどうやってその魚臭さを軽減するかに知恵を絞ってきたのだと思う。しょうがを使う、血合を取り除く、魚を湯引きするなどはその例である。僕自身、自分でぶり大根を作るときは魚にお湯をかけたあと、日本酒で洗っている。それほどまでに魚臭さは和食の大敵なのだが、アメノオトの鯛ラーメンは魚臭い。これも定石外しである。

こういうのが好きな人もいるだろうが、料理の定石というのは長い時間をかけて集積した先人たちの知恵の結晶である。そこを無視してしまうと、かなりの確率でイマイチな料理ができあがる。僕は豚らーめんは全くおすすめしない。鯛ラーメンは、魚臭さに目をつぶれるなら、味は美味しいと思う。僕はつぶれないのでもう食べない。