2022年04月13日

スタートアップ育成に必要なこと

首相はスタートアップを育成したいらしい。

スタートアップ育成で司令塔 米欧追い上げへ 新資本主義会議(時事通信社)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c75bc6bbb19d6506dd983e777aec968734164c93
以下記事から引用。
会議ではアップルやアマゾン・ドット・コムなど巨大ITを生んだ米国に比べ、日本ではスタートアップへの投資が滞っていると指摘。2000兆円超の個人金融資産や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの資金を成長投資に振り向ける必要性を強調した。財政投融資など公的資金による投資拡大のほか、公共調達でスタートアップが入札しやすくする仕組みも検討する。


とのことだけど、前半は不要。スタートアップ(ところで、「ベンチャー」という言葉があったのに、なぜ使用をやめたの?日本ではベンチャーもスタートアップも同じ意味だよ)には公的資金による投資など必要ない。こういうアイデアがどこから出てくるかといえば、ろくでもないベンチャーキャピタルからに違いない。彼らは自分達が出資するリスクマネーの量を減らしたいのだ。また、自分達の投資先に公的な投資が含まれていることは、自社ファンドの投資家の理解を得るのに役立つ。投資先の成功を確信しているなら、投資先は少ないほど良い。直接金融による投資は、企業にとって最大のリスクであり、それは投資家にとっても同じである。優秀な投資家なら、公的な投資をありがたがる理由がない。

ちなみに民間投資会社が出資するお金はリスク回避して回収する手段が用意されているが、公的出資は逃げ足が遅くなってリスクを丸かぶりする。しかし、公的出資なので、誰も責任を取らない。税金だぞ、この金は。

こういうアイデアが出てくるところが縁故資本主義の典型なのだ。新しい資本主義でもなんでもない。

じゃぁ、一般人はまともなアイデアを持っているのかといえばそんなこともない。

朝日新聞にこんなニュースが載ったのだが、

時間外労働の上限規制、スタートアップは除外を 経済同友会が提言
https://www.asahi.com/articles/ASQ4D6SBPQ4DULFA01P.html

要は、「スタートアップは残業が多いとか言ってられないので、残業の上限規制から外して欲しい」という要望を経済同友会が出したというニュースである。これについたはてなブックマークを読むと頭痛がしてくる。

ブックマーク
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.asahi.com/articles/ASQ4D6SBPQ4DULFA01P.html

yajamon 自ら命を削るなら外からブレーキをかけたほうが良く、命令で命を削らせるのは以ての外なんだよなあ。そしてスタートアップにのみ許す理由が無いのだ。

アホ。スタートアップはいわばプロ野球選手やプロサッカー選手。彼らが自主練しようとしていて「時間外だから練習はダメ」とストップをかけるバカがどこにいる。一般企業とスタートアップは明確に違う組織である。

natu3kan まあ、実際スタートアップの初期メンバーって役員みたいな所あるから、働いてなんぼって所はあるけど……。上限撤廃なら役員同等に無理な仕事を断る権限なり、相応の人事権や決裁権は必須よね。

なんで人事権や決裁権が必要なのか理解不能。仕事を断る権限も不要。嫌なら退職すれば良い。

nori__3 役員はそもそも時間関係ないんだから一般社員を緩和する理由にはならんわな。分社化とか定期的に組織再編すれば無料で残業させ放題ってことか?

これも一般企業とスタートアップを混同している。

el-condor むしろスタートアップこそ強い規制を、だろ。経営者を経験の浅いうちから甘やかすな。

論外。お前、スタートアップの社員じゃないだろ。部外者は余計な口出しするな。

maro_kksn 自称スタートアップの中小・零細の脱法ルートにしか見えない。時間外労働の制限を無視したいなら役員待遇で人増やせば良いのでは?

スタートアップと中小・零細企業も明確に異なる。

sumika_09 発行済み株式の1%以上を保持していることを条件に除外を認めてやろう。てレベルの妄言じゃん。

バカ。妄言はお前だ。

sumomo-kun これ制度化したら、わざと上場させない・上場の見込みのない零細が、合法的に奴隷を使役できるようになるわけですね。

ここまできて初めてまともな意見。ただ、ポイントは異なる。大企業が脱法目的でスタートアップを創業して、社員をそこに送り込む可能性はある。上場しない零細企業とスタートアップはきちんと分離する必要がある。

総じて言えるのは、スタートアップとは全く関係のない人間たちが余計な口出しをしているにすぎないということ。別に誰でもスタートアップでやっていけるとは思っていないので、能力が足りない人達は自分の所属している会社がスタートアップに認定されないようにすれば良いだけのことである。僕は良く有期雇用者の待遇改善を求めるときに無期雇用者ときちんと分離する必要があると言っているのだが、スタートアップも同じ。全く性格が異なる組織のことを既存の組織の論理で語っても何も生まれない。有期雇用の待遇改善が進まないのは無期雇用の人間たちのせいだし、スタートアップの足を引っ張っているのはスタートアップ以外に勤務している人間たちだ。

たくさんのスタートアップを支援して、自分でも社長をやってきた人間として言うのだが、スタートアップに必要な公的支援は「規制の緩和」である。もちろん、残業規制もその一つである。短期間で業績を爆発的にアップして、自社の持つ特長を最大限に活かすのがスタートアップなので、いわば短距離走者である。ハードルは低く、少ない方が良い。これができないから、日本ではスタートアップがなかなか育たないのである。一方で、公的資金はいわばドーピング。これを注入してしまうと、育つものも育たない。スタートアップと公的資金は一番距離の遠いところにある。

上に引用したブックマークを書いている奴らに合わせていたら、日本の経済は回復などしない。スタートアップは一般企業とは全く別の世界なのだ。日本では優秀な人材がコンサル>大企業>公務員>スタートアップの順に就職していくが、これは野球選手で言えば優秀な人材から解説者>社会人野球>草野球>プロ野球の順に所属していくようなものである。スタートアップは産業をリードしていく存在で、野球選手で言えば古くは野茂やイチロー、今でいえば大谷翔平である。そういう人材に「残業規制があるので、これ以上は練習も、野球のビデオを見るのもダメです。帰って寝てください」と言ってどうする。自己の裁量で勝手にやってもらえば良いのだ。

スタートアップがどれだけ厳しいかを知った上で覚悟のある人間だけが集まってくるようにならないと、日本で純国産ワクチンが作られて、それが世界中で利用されることもないだろう。