2022年10月26日

ダイヤのA 完結にあたり

今日発売された少年マガジンで「ダイヤのA act II」が完結した。

この作品は高校野球をテーマにした漫画で、同じくマガジンで連載されていたテニス漫画「ベイビー・ステップ」に似た能書きスポーツ漫画だった。双方の心情や背景までこだわり、対決を濃密に描いてきたところに最大の特徴があった。

したがって、当然のように対決に時間がかかり、なかなか勝負がつかない。また、投手力を中心にした作品なので点が入りにくい。それでも勝負が白熱するので、異常なくらいに一点差勝負が多い。また技術的に最新の情報をふんだんに盛り込んだおかげで、登場する主力選手は誰もがドラフト一位で指名されてしまいそうな完成度を誇っていた。

描く方もすっかり疲れて、描くことがなくなってしまったように感じる。ベイビー・ステップが編集部サイドの打ち切りで終わったのに対して、ダイヤのAは作者のアイデアと気力が枯渇したようだ。

リアリティを重視しているので、びっくりするような秘技は生まれず、また、選手のほとんどはファインプレーはする一方でエラーはほとんどしないというリアリティの欠如が両立していた。

長い連載の中でとりわけ大量のページが割かれたのが稲城実業のエース成宮と青道のキャッチャー御幸の対決で、この両者が3年生の夏の都予選決勝で対戦したのがクライマックスとなった。これでようやく一つ片付いた。

一方で片付いていないことはいっぱいある。特に青道のエース争いはまだまだ決着には程遠い。主人公の沢村は同じチームの降谷とのエースの座を巡る競争に完全に打ち勝つことができず、最後はエースナンバーを背負ってはいるものの、出番はむしろ降谷よりも少ないくらいだった。また、都以外にも強敵は存在して、ラスボスと言っても良い北海道の巨摩大藤巻高校には負けたままでの連載終了となってしまった。

さぁ、これからは成宮に勝った御幸の最後の夏が始まる、というところで連載が終了してしまったのはなんとも拍子抜けである。あしたのジョーで言えばホセ戦の第一ラウンドのゴングで終了したようなものだ。主人公は2年生なので、国体、秋の都大会、明治神宮野球大会、春の選抜甲子園、夏の都予選、夏の甲子園、国体と、まだまだ大会がある。それなのに2年生の夏の都予選で終わってしまった。高校生活の半分も終わってないのに、である。

作者が「燃え尽きたよ、真っ白に」と思うならそれもやむなし。しかし、作品の続きは誰もが楽しみにしている。週刊誌での連載にこだわらず、いつか描けるようになったら描いて欲しい。内容も全部描かず、スター・ウォーズのオープニングクロールのように文字ですっ飛ばしても良いと思う。

ノーヒッターでの甲子園優勝はもう現実となっているし、プロ野球では継投での日本シリーズ優勝が現実となっている。また、二刀流すら現実になってしまった。リアリティのある野球漫画を描くのは大変だと思う。一年に一回の集中連載などでも良い。「大会はコロナで中止になりました」みたいなのだけ避けてくれれば、引き続き応援したいと思っている。

#ベイビー・ステップも続きを読みたい。クラウドファンディングと電子出版を複合して、続きを描いてもらうことはできないだろうか。