2004年05月16日

ラーメンは誰のために

ラーメンは誰のために?

そりゃ、もちろんお客さんのために。

しかし、本当に「もちろん」なんだろうか。

小田急線祖師ヶ谷大蔵に一軒のお店がある。ラーメンが大好きで仕方がなかった人が、仕事を辞めて開いた店である。開店当初、店主の友人で古くからの知り合いから「一度食べてみて、アドバイスしてくれ」と言われた。「いやぁ、僕はただ食べて、無責任に感想を言っている人間で、実際に頑張っている人にアドバイスできるような立場ではないです」と一度は断ったのだが、「それでも構わないから」とのことだったので、食べさせていただいた。そのときのアドバイスは、「無化調であるが故の旨みの少なさが気になる」「方向性は良いが、トンコツが強すぎて味がぼける」「少しトリガラのダシを前面に出したほうが良い」「醤油はともかく、塩は厳しい」といったもの。このアドバイスは当然店主に伝えられた。

その後も、ラーメン界にこの人あり、と言われた人に食べに行ってもらい、内々にアドバイスしてもらったこともある。

そして、その味はどうなったのか。

変わっていないのである。いや、正確には味は変わっているのだが、我々のアドバイスした方向とは別の方向に変わっている。それは悪くなっているのではない。改善されているのだが、その方向が違う。

そのことについて文句があるわけではないし、それを理由にへそを曲げるわけでもない。ただ、「どうしてなのかな?」と思ってそれとなく質問したことがある。帰ってきた答えは「自分が食べたいラーメンを作りたいから」。

彼は、日々研究を重ね、味を変えている。その成果は徐々にではあるが、ラーメンに現れている。行き着く味は、あくまでも「自分が食べたい味」である。それは我々が考えるところの「客が呼べて繁盛する」ための味ではないかもしれない。

先日、彼の店が某週刊誌に紹介されていた。紹介していたのはあの佐野実氏。彼もやはり、「この方向性で塩ラーメンを美味しく仕上げるのは難しい」と評していた。

恐らく、彼の耳にはこのアドバイスも届かないだろう。彼は佐野さんが食べたいラーメンを作りたいのではないのだから。また、佐野さんが「みんなが食べたがる」と考えるラーメンを作りたいのでもない。その結果、お店が大成功ということにならなくても、彼にとっては大きな問題ではないに違いない。

彼は、多くの人が喜ぶけど自分が納得できないラーメンではなく、万人受けはしなくても自分が納得できるラーメンを目指しているのだろう。そして、そのラーメンに共感してくれる人が現れることを楽しみにしながら、日々ラーメンを作り続けているに違いない。

今、彼がお店で出している味は、単純に評価してしまえばもちろん満点ではない。美味しいには美味しいが、いつ行っても行列の有名店という状態でもない。しかし、彼の主張が良くわかるものである。多様化してきたラーメン文化の中で、こういう店があっても良い。

店のデータ
店名:こましょう
住所:世田谷区祖師谷1-9-14
時間:
(平日)18:00-24:00
(土日祝)17:00-22:30
定休:月曜日、第1、第3火曜日

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祖師谷大蔵駅前商店街から横に折れた裏路地にある。 常連のみに変わらぬ丁寧な仕事を提供し続けるといった感じの落ち着いたたたずまい。 中華そばを醤油で味玉を投入して注文。 見た目と同様に深みとコクのある醤油スープは鶏・節ベースだろう。 スープ表面に張った油膜で最
『中華そば こましょう 祖師谷大蔵』中華そば醤油+味付たまご (2004/05/14)【ふるえマニア★ラーメン日記】at 2004年10月24日 18:04
この記事へのコメント
僕は福岡県民ですので、ラーメンには恵まれていると思います。

一風堂、一蘭、秀ちゃんラーメン等有名店も有りますが、僕にとってソウルを感じるラーメン店はやっぱり
昔からの老舗(?)のほうが素直に受け入れることが出来ます。

魔人ブウ*さんはプロなので大層なコメントは出来ませんが、フクオカの老舗”名島亭”と”一九ラーメン 篠栗店”は僕にとってのベストです。

”名島亭”の店主さんは一風堂の河原社長と同じ店で修行を積んだことでそれなりに有名です。

方や、店鋪展開、方や一店鋪のみの営業。僕はどちらがいいとは判断できませんが、”名島亭”店主さんの話を聴く限り、長年の積み重ねが感じられるのは後者のほうではないかと思います。

Posted by bossa101 at 2004年05月16日 12:07