2011年03月01日

ジーンワルツ

gene


良い素材を無駄遣いした典型的な事例。ここに「英国王のスピーチ」との越えられない壁が存在する。つまりは絶望的にダメな脚本と絶望的にダメな監督である。

まず、冒頭のシーンからいただけない。子供を撮影するお父さんのしゃべりの下手なこと。もうドッチラケである。「おいおい、下手くそなしゃべりだなぁ」という感じなんだけれど、これって役者のせいじゃないんだと思う。要は監督の腕が悪い。こんな演技を要求したのかも知れず、役者が下手だったとしてもこれでオッケーを出すのが「はぁ?」という感じだ。だって、全然子供に語りかけてないんだもん。これなら僕のほうが上手にやれるよ(笑)。

さて、そんなひどいオープニングだったけれど、そこから先、途中まではなかなかに面白い。原作者の海堂尊さんの本は半分以上読んでいるし、実際に会って話をしたこともあるのだけれど(当然、向こうは僕のことなんか知らないだろうし覚えてもいないと思う)、彼の作風はミステリー作家というよりも、「小説というツールを利用して、現代医療の抱える問題点を告発していく」というもの。ミステリー作家としての彼の能力は、個人的には最近はちょっと疑っているのだけれど(参考:バチスタ☆2.5/3、ナイチンゲール0.5/3、ジェネラル・ルージュ2/3、極北クレイマー0.5/3、螺鈿迷宮1.5/3)、こういう読みやすい小説の形で問題提起を続けていくという姿勢は凄く高く評価できると思っている。そして、その海堂さんの視点からの、今の産婦人科の医療が抱える問題点が色入と語られていく。伏線も色々とはられてくる。

ただ、徐々に明かされていく事実は、察しがつくといえば察しがつくことで、それほど驚きがない。最大の「ええええーーーー」は、大森南朋という、この映画の出演陣の中では一番の芸達者を超端役で使っている点だったりする。そりゃないだろ、みたいな。彼のファンは怒ると思う。だから彼を目当てに観に行くのは辞めたほうが良い。という中盤で、雰囲気は少しずつ怪しくなってくる。それでも、「あぁ、白石美帆って、こんなふうになっちゃったんだ」(元ファン)などと思いつつも、中盤の終わりまではそこそこに楽しめた。最悪だったのはそのあと。バタバタバタっと窮地に追い込まれる様があまりにも出来すぎでいただけないし、それ以上にいただけないのが「ほら、赤ん坊、かわいいでしょう?」という押し付けだ。ここんところが、監督力、脚本力の決定的な低さを露呈している。延々と映像を垂れ流せば良いのか、共感が得られるのか、ということ。

ネタバレにならないように気をつけながら別の例で言えば、0−0で同点の野球の試合。今、9回の裏の守備である。なんだかんだで不孝が重なって、ノーアウト満塁、バッターはクリンナップを迎えて3番バッター。しかもカウントは3ボールナッシングである。まさに絶体絶命。ここで、ピッチャーの奇跡的な頑張りで、なんとかバッターを三振に討ち取った。それは素晴らしいけれど、まだワンナウト満塁。絶体絶命のピンチは続いているのである。ところが、なぜかベンチもバッテリーもほんわかムード。まるで勝ったような感じで中には祝杯をあげている奴までいる。しかも、喜ぶのをやめる気配が全くない。アホか。まだピンチは続いているんだよ!次のバッターは4番バッターだぞ!観ているファンはイライライライラ、観てらんねぇ〜〜!!!って感じ。

このラストの仕上げ方が、もう最悪。全て台なしである。ここからあとは、エンドロールが全部終わるまで、苦痛でしかない。これだけで評価はガタ落ちだ。海堂尊さんの問題提起はことごとく放ったらかし。だって、主人公が問題提起して戦っていくなら、「この子の親は・・・・」っていうのは意味無いじゃん。ぶち込まれた大森南朋はどうなっちゃったの。敵対する巨大勢力や厚労省の姿は全然見えないじゃん。挙句、「赤ちゃんがかわいいねぇ」って、何それ。

余談だけれど、「ジーンワルツ」という題名は、生化学を専門にしていた僕にはちょっとピンと来ない。全然「ジーン」じゃないからだ。あと、教師が教壇で「卵子」(らんし)という言葉を使うのにも違和感ばりばり。専門家は「卵」(らん)って言って欲しい。

こういうのをダメな映画という。☆ゼロ。  

Posted by buu2 at 22:25Comments(0)TrackBack(0)映画2011

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英国王のスピーチ

king


昨日のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞の主要な賞を総ナメしてしまった本作。こういう作品を褒めてしまうと、ともすると権威主義などと言われそうなので若干構えての評価だけれど、確かにこの一年に見た映画の中ではかなり上質。ざっと復習してみても、これより良いと評価できる可能性のある作品はトイ・ストーリー3ぐらいだろうか。ノミネートされている作品で他に観たのはソーシャル・ネットワーク(僕の評価はYahoo!では☆3/5、ぴあでは50/100、ブログでは☆1つ半/3)とインセプション(同Yahoo!では☆2/5、ぴあでは40/100、ブログでは☆1つ半/3)なんだけれど、その2作に比較したら英国王のスピーチの方が断然面白い。

最後の見せ場は決まっているのだし、その内容も変えられない。そのクライマックスに向けてどうやって物語を盛り上げていくか、というところに監督と脚本の質が問われるわけだけれど、この二つともが素晴らしかったと思う。色々と脚色はあるのだと思うけれど、何より、第二次世界大戦を通じて国民に愛される存在となっていくジョージ6世とエリザベス婦人の描き方が見事。また、それを支えるローグの描き方も悪くない。ローグの妻とのエピソードなど、そこここに笑いも含まれていて、観ていて肩が凝らないのも良い。また、美術関連もきちんとしていて、日本の三流映画(例えばあしたのジョー)とは大分違うなぁ、という感じ。

僕の周りにも吃音の人はいるし、また、僕自身左利きを無理やり矯正されそうになったこともあるので、この手のマイノリティの苦悩というのは良くわかる。虐待ではないけれど、王族として様々なプレッシャーを子供の頃から受けてしまい、その結果(のように描かれている)吃音となってしまったジョージ6世だが、無理やり押し付けられるようにして即位せざるを得なくなった状況を受け入れ、そしてなんとか立ち向かっていく姿が良く描かれていた。

途中にも書いたけれど、反ナチスの立場の、現在の世界の大多数の人間にとって非常に感動的なスピーチに向けて、きちんと映画を盛り上げていき、そして余す所なくそれを伝えた点が何と言っても素晴らしいと思う。

唯一のマイナスポイントは、登場人物たちの「老い」が一部を除いてあまり表現できていなかったことか。

トイ・ストーリー3とどちらが面白いか。単純に面白さだけを見たらトイ・ストーリーに軍配が上がるかも知れない。けれど、やはり最終的には、トイ・ストーリー3は人間が演じているのは声だけである。この部分が、映画として決定的な差なのかも知れない。生身の人間がそこに存在する、ということが。

映画祭のみの上映にとどまっている作品も含めれば、半分以上が未公開の現段階では何とも言えないけれど、アカデミー賞の主要な賞を独占したのは納得。助演男優、助演女優を獲っていても不思議ではなかった。

字幕を松浦美奈さんにしたのも空気が読めている。

評価は☆3つ。  
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2011年02月28日

恋とニュースのつくり方

morning


いわゆるドタバタコメディ。観終わったあとに何か残る、という性格の映画ではないけれど、後味が悪くないし、ずっと笑っていられるのでお金を損した気にならない(いや、正確には、今日は貯まったポイントでただで観たんだけれど)。

最初にいただけないところを二つ書いておくと、一つ目が邦題。何このタイトル。頭が悪そうだよなぁ。このタイトルだけで敬遠されちゃうと思う。僕もポイントが貯まっていなかったらスルーしていたところ。大体、この映画はニュースも恋も作ってなくて、作ったのは別のものだろ(笑)。もう一つは字幕。でも最近は凄く親切で、一番最初に「戸田奈津子」って出してくれる。これがないと、「あれ?もしかして、これって、アレ?」みたいに疑心暗鬼になって映画を楽しむどころじゃなくなる。でも、この映画は最初に「アレですよ!」って出してくれるので安心。あとはなるべく字幕に頼らず、英語を聞き取る方に集中すれば良い。大体この映画、主人公が物凄く早口なので、字幕を追っていたら映画の画面を観ることができなくなっちゃうんじゃないだろうか。

さて、本編。といっても、別にそれほど書くことがない。三流大学出のお姉ちゃんが気難しいおじちゃんを相手にテレビ局で頑張る、みたいな。脚本が「プラダを着た悪魔」(レビューはこちら)の人ってことで、構造は良く似ている。メリル・ストリープの役どころがハリソン・フォードにかわって、ファッション界がテレビ局に変わっただけ。プラダは成長譚だったけれど、本作は別に成長したって感じではなく、いつもの調子で頑張ってまーす、という感じ。ただ、話のテンポが良いし、視聴率を上げるために頑張っている様子も良いし、その成果たる番組内映像も楽しい。全体的にデフォルメされているけれど、俳優たちの大げさな演技も決して悪くない。

もうお説教とか、そういうのは抜きにして、単純に楽しみましょうよ、という感じ。

余計な主張がないから、変に嫌われることもない。当たり障りがないと言えばその通りだけれど、こういう映画も良いよね。

ちなみに僕が邦題をつけるなら、「フリッタータの作り方」だね。

評価は☆2つ半。  
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2011年02月24日

ザ・タウン

town


犯罪映画としては、比較的ありきたりかも知れない。お決まりの仲間割れとか、お決まりのロマンス、お決まりのカーチェイス、お決まりの銃撃戦。なにか新しいものってあったかなぁ。うーーーん、舞台がボストン?へぇー、レッドソックスの町って、こんなところなんだぁ、と、そこは新鮮。

でも、別にツマラナイってことはない。いや、むしろ、なかなか面白い。なんでだろう。うーーーん、監督がこの町を好きなんだろうな、っていうことが伝わってくるからだろうか。あちこちに散りばめられる町の景色、風景描写が、「こんな町だけど、好きなんだよ」っていう感覚に溢れている。

犯罪者たちの性格描写はそこそこに行われているんだけれど、でも、4人組のうちしっかり描かれるのは二人だけ。その二人の葛藤を中心にしているのだから当たり前なのかも知れないけれど、4人でチーム、という割には他の二人の扱いがぞんざいで、おかげで主人公が「俺は・・・・・」みたいにあることを表明したときに、「そりゃぁないだろ」という感じがしてこない。これはちょっと致命的だったかな。でも、時間的に無理か・・・・でもそれならいっそのこと、2人組にしちゃう?うーーん、難しいですね。やはり2時間枠の限界なのかも。

ちょっと、それはおかしいだろ?みたいな設定もあるけれど、そこはじっと我慢。でも、やっぱりそのラストはどうなのよ、と思うなぁ。中途半端かついい加減な倫理観。邦画で「重力ピエロ」っていうのがあったけれど、あれと似た感じ。いや、クライムムービーを全否定するわけではないのだけれど(例えばゴッドファーザー、ゴッドファーザーPARTなどは傑作だと思う)、中途半端なのがいただけない。

セリフの伏線とか、小物による暗喩などにいくつか気がついたけれど、気が付かないだけで実はもっとたくさんあるのかも知れない。

主役よりそのパートナーの役者が存在感抜群。うわー、こいつ、なんなんだよ、と思ってしまう。生理的に嫌悪感を持ってしまう。町で会ったら、思わず避けてしまいそう。つまりは、凄く上手だったということなんだと思う。

エンドロールの最中にもメッセージがあるので、最後まで観たほうが良い。字幕松浦美奈。

評価、難しいですね。☆1つ半かな。

ところで以下余談。先日の「太平洋の奇跡」もお一人様(ひとりで観に行ったというのももちろんだけれど、他にお客さんがひとりもいない)だったんだけど、今回もひとり(笑)。なので、記念撮影。シネプレックス新座の8番。

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新宿のバルトとか、ピカデリーとか、いつも一杯なのになぁ、と思うんだけれど、要は、友達同士で映画を観に行く時に、「新座」じゃ、調整がつかないってことなんだろうね。「じゃぁ、新宿で!」ってことになっちゃう。映画館の場所って、すごく重要なんだろうな。一等地に座り心地の良い箱を作ってしまえば独り勝ち、みたいな。だから、ちょっと田舎のシネコンは独自性を出さなくちゃならない。シネプレックスにはイマイチそれが見当たらないからなぁ。でも、そんなに独自性の見当たらない大泉とかは結構入っている。あれは、町自体の背景人口の差なのかな。

頑張れ!シネプレックス!僕は応援しているよ。  
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2011年02月22日

太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-

taiheiyou


今日は何を見ても1000円ということで、ヒアアフターのあとにはしご。おかげで、彼此の違いが物凄くはっきり分かってしまった。今の日本があるのはこういう人たちのおかげ、という、日本人の根源的なところに訴える力を潜在的に持っている映画なのに、そのアドバンテージをもってしても「面白い映画」になってこない。役者も、竹野内豊を筆頭に、結構頑張っていたと思うのだけれど。

まず、「太平洋の奇跡」というタイトルなのに、全然奇跡っぽくないのが大問題。そういう話ではないというのならこのタイトルは失敗だし、奇跡だったのなら、もっとそれらしく描いて欲しい。ひとつひとつの話が凄く簡単に進んでいくので、重みがないのだ。たとえば捕虜収容所への侵入とか、緊張感が皆無。「そんな簡単に行き来出来ちゃうのかよ!」って思っちゃう。実話なのかも知れないけれど、米兵が日本兵の性向を説明するのにいちいち将棋の駒を使っていて、いつもそれを持ち歩いているのも変な感じ。だって、再利用を拒むために自殺する、ということなら、チェスで説明したほうが良い(将棋の駒は相手に取られると敵として利用されるが、チェスではそういうことはない)。

登場人物たちの心変わりの早さにもついていけないところがある。大場が、「ひとりでも多くの米兵を殺すこと」から、なぜ「ひとりでも多くの日本人の生命を助けること」に変わってしまったのか。変わってしまうことはもちろん構わないけれど、その過程がしっかり描かれていない。また、「米兵を皆殺しにしたい」と憎んでいた登場人物が、すんなり収容されているのも意味不明だ。大きな心変わりには、それなりのトリガーが必要なはずなのだけれど、それが全然描かれないので、物凄く軽い印象を受けてしまう。あと、ただただ逃げまわるだけで、米兵を攻撃するのは自分たちが追い詰められた時だけ、というのも違和感がある。民間人を守るフェイズがあるのは当たり前として、サイパン奪還に向けての戦闘は全くなかったのだろうか。

車で走っているシーンの一部でブルーシートを使っているっぽいシーンがあったけれど、背景との動きがリンクしていなくてちょっと気持ち悪かった。一方で、爆撃機の発進シーンはかなりの迫力。ただ、あんなに急角度で離陸・上昇するのかなぁ、と思った。

大場大尉の人柄を説明するのに赤ん坊を使っていたけれど、あの子が全然成長しないのはなんでだったのだろう。

こうやって考えていくと、多分、約2年の戦闘を描くには、2時間という尺が短すぎたんだと思う。米兵たちは基本良いところばかりが描かれるし、その中での彼らは日本兵のメンタリティばかりを気にしている。一方の日本兵は民間人を中心として密かに逃げ続けるだけで、戦闘らしい戦闘はほとんどない。細かいディテールは「2年」を感じさせるにはこだわりが足りず、さっと過ぎ去ってしまう。だから、米兵も、日本兵も、そして民間人も、なぜ心が変化していくのかがさっぱりわからない。そして一番いただけないのがラスト。これも実話通りなのかも知れないけれど、「日本に戻ったらどうするのか」が全然描かれていない。赤ん坊が成長して活躍するのはまだまだ先のこと。敗戦の日本を支えたのも彼らだったはずだ。そのあたりの意気込みは、ラストの行軍からは伝わってこない。

美術的には結構頑張っていたと思う。この間の「あしたのジョー」に比較すると衣装など、かなりリアリティがあった。ラストシーンではみんながきれいな服を着ているけれど、普段の服にリアリティがあったので、「ちゃんとここ一番にきちんとしたみだしなみにしたんだな」というのが伝わってくる。しかし、その一方で悲惨な戦い、という感じは全然伝わってこない。「水場がない」ということもセリフでは説明されるけれど、それが切実な感じを受けない。なんか、のんびり隠れて野営して、のんびり捕虜やって、という感じである。

大場栄氏についてはウィキペディアに記事があるが、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%A0%B4%E6%A0%84

これと照らしただけでも「タポチョ山(タッポーチョ山)を拠点にゲリラ化し、日本の無条件降伏後も遊撃戦を展開する」という部分は映画では表現出来ていなかったよなぁ、と思う。全ての事象を描くことはできないのだから、何を描き、何を描かないかが重要になるのだが、少なくともこの映画の場合は取捨選択がヘタだったのではないか。

奥田誠治さんの映画って、「魔女の宅急便」は好きだけれど、以後、あんまり面白いものがないと思う。「三丁目の夕日」ぐらいかなぁ。☆1つ。

ところで、以下、余談。今日はメルマガ登録者限定で1000円で鑑賞できる、という日だったんだけれど、それにも関わらず観客はゼロ(笑)。こんなでかい箱なのに、ゼロ。大丈夫なのか、この映画館。まぁ、貸切なのは悪くないけれど(笑)。

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思わず映画館で撮影しちゃったけれど、映画は盗んでないのであしからず。えっと、1番シアターかな。新座のシネプレックス。一応資料写真ってことで(笑)。  
Posted by buu2 at 11:38Comments(0)TrackBack(0)映画2011

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ヒアアフター

hereafter


ハズレが全然見当たらないイーストウッド監督の最新作。死者とのコミュニケーションが取れる霊能者をテーマにした話なので、シックス・センスみたいな気配があるのだけれど、観終わった感じは大分違う。シックス・センスはシックス・センスで傑作だし、あれはあれでシャマラン監督流の愛情を表現した映画だったのだけれど。

こちらは、差別されるマイノリティとして霊能者を取り扱っている。米国、フランス、英国に散らばっていた登場人物たちが、引き寄せられるようにロンドンに集まっていくのだけれど、とにかく脚本が素晴らしいので、「次はどうなるんだ」と気になって仕方がない。面白い小説を読んでいると、文字を追っているのがまどろっこしくなってきて、早く次のページを読みたいという気持ちになるが、映画でそういう感覚を味わうハメになる。

何しろ、冒頭から素晴らしい。今まで観たことのないような大津波のシーンから始まる。大津波と言っても、ただでかいってことじゃない。リアリティのある津波なのだ。こりゃすげぇ、っていう映像でぐいっと引っ張られちゃって、そこから先は物語が静かに進んでいく。この構成のおかげで、「え?次はどうなるの?」という感じになってくる。加えて、村上春樹が「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」や「海辺のカフカ」や「1Q84」でやってみせた複数の物語が徐々に関連を持っていく、という構成なので、盛り上がってきたところで話が途切れて、おあずけを食らってしまうのだ。3つのストーリーでこれを展開され、しかもひとつひとつが全然別の面白さを見せるので、ストーリーにスピードがないのに映画にはスピード感がある。それも、映像とか、展開にスピード感があるんじゃなくて、観る側が「早く次を観たい」と思ってしまうことによるスピード感なのだ。色々映画を観てきているけれど、こういう感覚は凄く新鮮である。

差別される存在としての霊能者の苦悩、知りたくないこと(恋人の過去の性的虐待とか)まで知ってしまいそのおかげで人生が思い通りにならない苦悩、「呪い」と思っていた能力に自分なりの利用方法を見つけるところ、親子愛の再生などなどをこれでもかという位に盛り込んである。

(評価として)とってつけたようだけれど、音楽も良い。

地味な映画ではあるけれど、味わい深い一作だと思う。☆3つ。  
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2011年02月20日

洋菓子店コアンドル

yogashi


先日「南へ」の舞台で散々だった蒼井優さん主演作品。

この映画を見ると、「あぁ、この人は、スピーカーを通せばしっかりしているんだなぁ」というのが良くわかる。芝居が凄く細かくて、映像向き。スピーカーからばかでかく聞こえるなら声には十分に迫力があるし、ちょっとしたところで見せる表情は素晴らしく可愛い(「由実は誰にでも愛される子だった」のシーンとか)。見事な演技だったと思う。他にも、江口のりこさん、戸田恵子さんといった、洋菓子店の面々もなかなかの好演技。

ただ、映画の出来とすると、満点とは言いがたい。観ていて「あれ??」って思うところがあちこちにある。

例えば蒼井優さんの洋菓子店での髪型。長い髪をゴムでちょこっとまとめるだけで、髪を振り乱して走り回っている。それじゃぁ、髪の毛があちこちに飛んじゃうんじゃないの?って思っちゃう。髪はきちんとまとめて帽子の中に収めるんじゃないかなぁ、普通。

洋菓子の修行の様子も、「うーーーん」という感じ。洋菓子って、普通の料理よりもデリケートで、「このくらいで良いや」というアバウトなことじゃなく、きちんと分量を計って、時間を見て、化学の実験のようにしっかりと管理していくイメージがある。そして、一瞬映画の中で出てくるノートでも、そのあたりを垣間見せている。でも、蒼井優さんの洋菓子修行では、そういったシーンは皆無。ほとんど感覚的な作業に終始している。大体、そのノートのシーンで「全然わかんない」とか言ってるし。

あと、洋菓子店での作業シーン、素人が見ても素人色丸出し。せっかく顔が写らないように手先だけのカットにしているんだから、もっと上手な人を使ったら良かったと思う。

店主の旦那さんに頼まれて持っていくケーキも、「おいしいねぇ」と喜んでもらってはいるけれど、それって自分で作ったケーキじゃなくない?いや、もしかしたらそうなのかも知れないけれど、そういう描写が全くない。編集の都合ですっ飛ばされちゃったのかも知れないけれど、もしそうなら、他にカットできるシーンはいくつもあったと思う。そうそう、そのケーキを持っていくのだって、家を訪ねるのに誰の家かわからないっていう設定も意味不明。

他にも、伝説のケーキ職人がたばこをスパスパ吸っていたり、これから勝負のケーキ作りっていうところで調理台に座っていて、そのあとエタノールか何かで拭いてはいたけれど、座っていた場所と違うし、大体あんた化粧が濃すぎるよ。なんか、そういうひとつひとつのところにリアリティがない。

なつめの設定も微妙。全然魅力的じゃない。わがままな田舎者っていう感じで、しかも物語を通してほとんど成長していない。成長してないのに、なぜかケーキ作りの腕だけは上達しているらしい。でも、それがなぜなのかさっぱり伝わってこない。映像では味を直接表現することはできない。何か他の方法で「美味しくなった」ということを伝えなくちゃならないのに、それが全然みあたらない。

この間観た「あしたのジョー」もそうだったんだけど、せっかく役者さんたちが良い演技をしているのに、他の部分でぐいぐい足を引っ張って、映画トータルで見ると「うーーーーん」という出来になっちゃっている。

映画の日とか、レディースディとかに1000円ぐらいで観るには悪くない。ドラマだけど、テレビよりも映画館向きなのは、音の大小にかなりのメリハリがあるから。☆1つ半。  
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2011年02月17日

あしたのジョー

944ffd62.jpg今年はまだ始まったばかりだけれど、今年の最も駄目な映画最有力候補の登場。もう、見ていて腹が立ってくるくらいにダメな映画。こんな映画も珍しい。去年のヤマトだってツッコミどころ満載で楽しみようがあったのに。これはもう、全然駄目。

何が駄目って、美術なんですよ。質感が全然ダメ。ヤマトの船内のチープさも凄かったけれど、ジョーの安っぽさは半端じゃない。もう、全然質感がなくて、「あーーーあ」という感じ。木も看板も紙もロッカーも何もかも全部駄目。最悪なのは衣装。ドヤ街の連中なのに、着ている服はやぶけているだけで、シミとか全然ない。ラスト近くのほんの一部のシーンだけ、あ、そこそこちゃんとやっている、っていう場面があったけれど、総じて駄目。全然駄目。あと、髪の毛も。ドヤ街だよ、ドヤ街。それなのにそこの住民たちのヘアスタイルはみんなバチっと決まっている。あぁ、毎日朝シャンしてるんだねぇ、みたいな。だから、ドヤ街が全くドヤ街っぽくない。安っぽい模型の中で演技しているのがはっきりわかっちゃう。なんというかな、水気がない。雨で汚れた質感、汗で汚れた質感、こういうのが皆無。最近だと白夜行とかノルウェイの森はそのあたり、凄くしっかりしていたんだけどなぁ。それから、現実味がないといえば、一年経っても子供たちが全然成長しないのが不気味。成長を止めちゃったのかな。

一方で、役者の演技はそこそこ。特に力石はかなり良かった。丹下段平もまぁまぁ。ジョーは、どうなのかな、正直微妙だけれど、酷評するほどではない。でも、それだけかな。いや、でもね、役者さんたちが凄く頑張っているから、余計にバックの手抜きが目立っちゃって、腹が立ってくるの。

もうひとつ最悪なのが脚本。特に、なんだよ、このラストは。余計な脚本書くなよ、って感じ。8回戦が終わってからはマジで苦痛だった。そして、その不要なシーンが延々と続くから吐き気がしてきた。セリフもさ、それをなくしちゃオシマイよ、っていうのが結構あった。「さすが力石だ。参ったぜ」がなんでないんだよ。「本物だった、本物だった」もなかったんじゃない?セリフ以外でも、ジョーのあごを狙ったアッパーを練習しまくるところとかもないし。それでいて、グローブを残すとか意味不明なの入れるし。入れておかなくちゃいけないところを削って、代わりに必要のないものを創作するって、どうなのかなぁ。

他にも、ボクシングシーンでなぜか今のラウンドがわからなかったり、試合が終わってもシーンとしていたり、全く臨場感のない演出だった。試合終了・・・・シーン・・・・おいおい、どうしたんだ?場面変わって、リングに駆け上るみんな、みたいな。なんか、映画がぶつ切りなの。これは酷い。このあたりって、ハリウッドのボクシング映画にお手本になる奴がたくさんあるのに。試合終了時の演出は色々あって良いと思うけれど、この映画の演出はただ監督が能無しなだけ。あぁ、クライマックスの、トリプルクロスカウンターも、どうなの、これ。なんか流れるように決まっちゃうんだよね。してみると、アニメのクライマックスの仕上げ方は抜群だった。「右のダブルクロスで勝負っ」って出したパンチを力石がかわして、そこで両者の動きが止まる。でも、汗だけが流れてラストパンチ。この間が最高なんじゃん。それで、「終わった。何もかも」というセリフがあって、呆然としてカウントを取ることも忘れるレフェリー。立とうとするけれど立てず、焦点があわなくてぼやける力石の姿。まぁ、そこまで全部再現しろとは言わないけれど、やっぱり全部流れるようにして処理されちゃうのは物凄く違和感がある。流れるように行って欲しいところをぶつ切りにして、一方で演出によって上手に仕上げなくちゃいけないところを流れるように処理してあっさり終わらせる。監督の下手くそっぷりに涙が出てくる。

白木葉子の設定とかも全然意味無いじゃん。なんなんだよ。何がやりたいんだよ。つまんない新設定入れて、でも何の役にも立ってないってなんなの?たんぽぽとか、紙飛行機とかも意味不明だし。挙句、紙飛行機は下手くそな特撮使っているし。紙飛行機が変なのって、ついこの間も見た気がするけれど、映画監督って紙飛行機を飛ばしたくなる人種なのかな?

あーーー、思い出した。ボクサーたちが、また全然リアリティがないの。顔だけアザを作っているけれど、体は全く何ともない。汗も全然かいてないし、返り血があるわけでもない。顔も、メイクの部分はそれらしいけど、残りは全然普通。なんか、ボクシングをやったっていう感じが全然ない。顔にちょっと色つけました、これで良いでしょ?みたいな。全然良くねぇよ!

ということで、もう、全然だめ。何から何まで駄目ならまだ良いけれど、力石がかなりちゃんとしていたから、もう勿体無くて仕方がない。あぁ、腹がたつ。精神衛生に良くない。

ああ、駄目な映画って、こういうのだよね、という典型例。多分、今年最も駄目な映画になると思う。  
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2011年02月04日

ソーシャル・ネットワーク

ef156279.jpgもう公開から随分と経ってしまって、「今頃かよ」という感じなんだけれど、観てきた。率直に言ってしまうと、自分の周りで普通に起きていることがそのまま映像化されているような感じで、新しい何かとか、驚きとか、そういうものは特になかった。

自分の興味のあるところにだけ一所懸命になる奴、ビジネスの巨大化についていけず、ついつい保守的になる奴、最先端に目をつけるんだけれど、身から出た錆でどうにも波に乗り切れない奴、旧態依然とした慣習に縛られている奴、どれもこれも、僕の周りでは全然珍しくない。まぁ、業界が同じだから当たり前か。裏話みたいなもので何か面白いエピソードがあるのかと期待したのに何もなくて肩透かし。この映画みたいなことはITベンチャーに入れば全然普通だから、体験したかったらITベンチャーに入れば良いと思う。

広告モデルがクールじゃない、というところに早い段階で目をつけたところだけは素晴らしい感じだけれど、それにしたって今では常識だしねぇ。それが証拠に、僕の会社で実施しているサービスにはどれひとつと言って広告モデルなんかないし。

ただ、映画としてはそこそこに良く出来ていたと思う。最大の勝因は、エリカちゃんが可愛いってことだと思う。

割と平板な映画なので、これがどうしてゴールデン・グローブ賞なのかとか、アカデミー賞に最有力なのかとか、個人的には良くわからない。これに比較したらトイ・ストーリー3とかの方がずっと感動作だと思う。一体どのあたりが評価されているんだろう???

評価は☆1つ半。  
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2011年02月02日

キック・アス

andy


空も飛べず、超能力もなく、身体能力が抜群でもないオタク学生がヒーローに目覚めて酷い目に遭う話。なんだけれど、米国でこんな話をマジメに映画化してしまうと結構面白くなっちゃうから不思議。何しろ、ポイントになる2人の女の子がそれぞれに可愛いのが最大のポイントかもしれない。

ストーリーに特段のひねりがあるわけでもなく、割と淡々とストーリーが進んで行くので、ネットとかで抜群に評価が高い理由は良くわからない。特に後半はちょっと失速ぶりが著しい。何故かって、アクションがシリアスになりすぎて、ミンディの可愛さ、ギャップが控えめになってしまうから。007みたいなのりで、子どもっぽいオシャレさでずーーーーっと徹頭徹尾押してくれたらもっと楽しめたと思う。

悪者がばさばさ切り捨てられて行く様は先日のマチェーテの様でもあるけれど、笑ってしまう様な切り捨て具合は、マチェーテの方が上手である。でも、マチェーテにはミンディはいなかったからなぁ。彼女の魅力だけに支えられていると言っても過言ではないわけで、彼女の見た目と中身のギャップを楽しめるかどうかで作品の評価は大きく変わると思う。その意味では「同情するなら金をくれ」に似ているかもしれない。

僕としては、ファンタスティック・フォーとかに比較したらずっと面白いけれど、アイアンマンよりは下かなぁというレベル。

これまたデートに使えるかと言うとやや微妙であり、鑑賞後に絶賛するとロリコンと思われてしまうリスクが付きまとう。まぁ、ハーマイオニーも昔はロリ系だったけどね。

続編を作るなら急がないと!!!評価は☆2つ。  
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冷たい熱帯魚

nettaigyo


なんか、勢いで声かけちゃったけど、冷静になってみるとあんまりピンとこないし、やっぱ、付き合うほどじゃないな、って思っている彼女との初デートに断然オススメ。隣のカップルの男が謝ってた。お前、調査力不足、って思った。

とにかくひどい暴力描写なので、最初のうちは「え?」とか思っているんだけど、すぐに受け取り方が変わってしまい、ここは笑うところじゃないよな、という場面で場内爆笑になるという、妙な映画。序盤からの導入が非常に面白くて、女優のコスチュームもサービス満点なので観ていて楽しいのは間違いない。序盤は。泥レス、ただし、良く観ると泥じゃなくて血、みたいなスプラッター調になる中盤以降はかなり緊張しながらの鑑賞になるので、正直疲れる。

エンターテイメントとしてありだと思うけれど、じゃぁ、何が言いたかったの?となると、良くわからない。事実に基いている、ということで、ノンフィクションはフィクションよりずっとかっとんでいるってことなのかなぁ。それとも、観る側にずーーーっと緊張感を与え続けるのが意図だったんだろうか。うーーーーん、監督さんの意図は良く解らない。

ここまでやっちゃって、どうやって風呂敷を畳むのかなぁと思って観ていたけれど意外と無理なく畳んだいたのは流石に園監督という感じ。

生理的に受け付けない人は全くダメだと思うし、そういう人は決して少なくないと思う。あと、頑張って観ても、「だから何?」という感じもあって、映画に何か教育的なものを求めるクチにはお勧めしない。精神的に思いっきり不愉快な思いをすることによって、何かを得られるタイプにはお勧め。僕はそういうタイプではないので、苦笑するだけだったけれど、駄作でもないし、お金の無駄でもなかった。ただ、もう一回観るかと言われれば、多分観ない。

一番思ったのは、この映画に出た女優さんは3人とも偉い、ってこと。すげえ疲弊したと思う。特に村田愛子役の人。

DVDよりは、映画館でみんなで観た方が良いと思う。ただし、デートでの鑑賞は自己責任で。評価は☆2つ。

ちなみにベースになっている事件はこちら。

埼玉愛犬家連続殺人事件  
Posted by buu2 at 01:26Comments(2)TrackBack(0)映画2011

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2011年01月21日

白夜行

602423b9.jpg白夜行をヤクルトホールでの試写会で観てきた。最初に書いておくと、このホールは試写会の環境としてはかなり下の部類。音響システムが酷い上に、画面の下が切れちゃっている。ただで観させてもらっているのだからあんまり贅沢は言えないし、すぐ近所のスペースFS汐留ホールとかと比較するのはどうかと思うけれど、それにしてももうちょっと何とかならないものか。

さて、作品。原作は言わずと知れた東野圭吾の最高傑作。彼の作品はほとんど読んでいるけれど、いくつかの傑作群(彼の作品には駄作も散見されるが)の中でもトップの質で、恐らく今後も彼がこれ以上の作品を書くことはないだろう。それほどの傑作なので、原作に忠実に映画化すればもちろん傑作になるのは間違いない。ところが、この原作は分量が物凄いので、ストレートに映画化するのは不可能。そこでこの名作をどう料理するか、脚本や監督の手腕が問われるわけだけれど・・・・・。

映画化にあたっては、その分量も問題だけれど、小説の構成が大きなハードルだったはず。原作は主人公の心理描写を極力排除し、主人公の周辺を濃密に描くことによって、徐々に主人公の姿をあぶり出していくところが秀逸だった。言葉を変えれば、はさみで周囲が少しずつ切り取られ、最後になって全容があぶり出しのように見えてくる、切り絵のような物語だったわけだ。しかし、映画でそれを徹底的にやってしまえば、主人公達の出番がなくなってしまう。必然的に、原作では意図的に削除されていた主人公達の描写が増えてくる。そして、それによって観る側のイメージが固定化してしまう。このあたりの構造的な難しさがあったのだが、その点はかなり上手にバランスをとっていたと思う(あとで触れる1点を除いて)。東野圭吾の最高傑作の、メインの隠し味がかなり損なわれてしまったのは残念だが、こればっかりは仕方がない。

その上で、物語を紡いでいく堀北真希、高良健吾、船越英一郎の3人がきちんと演じていたので、全体として破綻するところがなかった。特に観る前に不安だった堀北、高良の二人は、実際に映画の中で観てみるとぴったりとはまっていたと思う。加えて、子役を含めて脇を固めている俳優たちもしっかりしていたと思う。唯一、個人的に残念だったのは若い頃、夢の遊眠社のカワイ子ちゃん系看板女優だった山下容莉枝が凄い老け役だったこと。もっと綺麗な役なら良かったのに。仕方ないけど。

もともと原作があまり起伏のない叙事詩なので、映画もピークと言えるものが存在しないのだが、この手の、淡々と進んでいく話は個人的に好みで、そして、堀北真希が出てくるのを楽しみにしながら待っていることもあって、150分間が苦痛にならなかった。演出面で残念だったのは亮司が出過ぎで、そのせいで逆に彼の黒子としての悲しみが表現しきれなかったこと。彼の歩いてきた道は、もっともっと、ずっと暗かったはずで、それがかなり明るく表現されてしまったのが惜しい。この部分は監督と僕の解釈の相違かも知れず、監督のイメージに固定化されてしまったのが残念だった。

時代感みたいなものもきちんと出ていたと思う。「そうそう、僕達が子供のときって、こうだったよね」みたいなのが。それは先日の「ノルウェイの森」でも感じたのだけれど、最近の映画が表現する昭和の雰囲気というのは、なかなか良く出来ていると思う。銀残しを使った映像も含め、良い雰囲気を出していたと思う。あぁ、ただ、昭和何年、平成何年、という表現は、出来れば1975年とか、西暦でやって欲しかった。

2人がなぜそういう生き方を選ばざるを得なかったのかが一気に語られるラスト20分はなかなかのできだったと思う。

これまであまり良い作品に恵まれてこなかった堀北真希だけれど、久しぶりに代表作と言える作品になったと思う。評価は☆2つ半に堀北補正をかけて☆3つ。今度ちゃんと映画館でも観てくるつもり。いや、絶対にもう一度観る。何しろ、音響が酷かったから。あれじゃぁ音楽は全く評価できないし、セリフも一部聞き取りにくかった。

ところで、この原作を読んでない人が少なからずいるらしいことに驚かされる。「こころ」を読んだことがないとか、「羅生門」を読んだことがないとか、そういう教養のなさとはまた違うけれど、ツイッターとかやっている時間があるなら、白夜行ぐらいは読んでおいたらどうかな、と思う。  
Posted by buu2 at 11:49Comments(4)TrackBack(1)映画2011

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2011年01月20日

バーレスク

9788e375.jpg僕は「どんな映画が好きですか?」と聞かれると、「映画館で観たら素晴らしさがわかる映画」と答えている。僕の家のビデオ鑑賞ルームはスピーカー8本とAVアンプによって構成されている、そこそこの環境だけれど、あたりまえだけれど映画館の音響システムには全くかなわない。だから、ミュージカルやサラウンド感が重要な映画は、なるべく映画館で観るようにしている。そして、この映画は、充実した鑑賞環境を整えた人でない限り、映画館で観なくては意味のない映画のひとつである。それくらいに音が重要な役割を果たしている。

ストーリーは、全く大したものではない。田舎から都会にやってきた女の子が、なんとか頑張って、恋をして、恋のライバルが現れて、仕事にもライバルが現れて、取り巻く環境にも大きな問題が発生し、さぁ、どうする、みたいな、超超超超ありがちなもの。その、広げた風呂敷のたたみ方もしごくありきたり。おまけに伏線が字幕でわざとらしく書かれちゃうので、冒頭からネタバレみたいなもの(笑)。なんだよ、これ、既視感バリバリじゃん、という感じなのだけれど、平凡なそこら辺の100本の映画との違いは、中心になる二人の女優の歌唱力。僕には滅多にないことだけど、2回も鳥肌が立っちゃった。ああいう、ぞわぞわした感じを、映画の中の歌のシーンで経験する機会はほとんどと言って良いほど、ない。それ程に、圧倒的なパワーだったと思う。

本当にもう見所は歌とダンスだけ。だから、それしか求めないなら、評価は満点でも不思議じゃない。でも、細かいところを言い出したらどうなんだろう。脚本は相当に甘いし、設定も携帯電話がなければ20年前が舞台でも不思議じゃないような古臭さがある。あと、恋愛話が超退屈。つまり、この映画を数式で表すとこんな感じ。

(フラッシュダンス+トップガン)/4+アギレラ

他に何か気のきいたことを書きたいな、と思うのだけれど、書けない。だって、本当に、アギレラとシェールの歌だけの映画なんだもの。評価は難しいけれど、映画としての評価は☆ゼロ。そこにアギレラ(☆1つ)とシェールの歌(☆1つ)で、合計☆2つ。そして、映画を観たいなら映画館絶対推奨。それでも家で、ということなら、DVDじゃなくてサントラ推奨(多分)。歌とダンスが好きな女性には受けそうだし、そういう女性は凄く多そうだから、デートには良いかも。どんなにストーリーが退屈でも、音が大きいから眠くなる心配はない。ちなみに、僕は映画館でひとりで観た。ひとりで観に行ったのはもちろんだけれど、客は僕だけだった(笑)。  
Posted by buu2 at 03:10Comments(0)TrackBack(0)映画2011

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