2013年06月22日

俺はまだ本気出してないだけ

原作未読で鑑賞。

脱サラで漫画家を目指す主人公を描いたコメディ。僕のようにさっさと日本の社会のレールから降りてしまった人間には心の底から楽しめるのだが、頑張ってしがみついている人の目にどう映るのかはちょっと良くわからない。

細かいギャグがあちこちに散りばめられていて、何度も声を出して笑ってしまった。そのトーンは最後まで安定していて、全く退屈しない。大きな仕掛けがあるわけではないけれど、テンポ良く進む脚本が良い。ちょっと難があるといえば再婚話のエピソードの顛末がどうなのか、と思った。

堤真一、橋本愛、山田孝之、濱田岳あたりの演技と演出が秀逸で、放送作家出身の福田雄一監督の非凡なところを観ることができた。

何か教訓があるわけでもないので、ただ笑えば良いと思う。

橋本愛が出てきた時、「あ、ユイちゃんだ」的などよめきがあったのも笑えた。

評価は☆2つ半。  

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2013年06月20日

二流小説家

原作が洋物で、その映画化が日本というちょっと毛色の変わった作品である。

連続猟奇殺人で収監されている囚人の依頼で小説家が取材をしていると、その取材先で同じ手口の殺人が次々と発生する、というミステリーなんだけれど、脚本がずさんで途中で飽きてくる。特に何者かに主人公が狙われるあたりからの退屈具合が凄い。何がダメかといえば、犯人の写真に対するこだわりが全く伝わってこないのだ。他にも、発生する殺人の動機がどれもこれも曖昧で、「何で殺しちゃったの?」となる。また、緊迫するシーンでは今まで役に立ちそうになかった登場人物が物凄い洞察力とドライビングテクニックを披露したり、これは笑うところですか?と確認したくなる。また、意味不明に山奥に入っていくあたりも何ら必然性がなく(だから意味不明なんだけど)、「?」となる。

他にも演出には難があって、特にホラー映画調の音楽がしつこい。あと、モノクロに赤だけカラーにする演出が「またか」という感じ。

かように、脚本と演出はダメなところが多かったのだが、役者の演技はなかなか良かったと思う。特に囚人役の武田真治は非常に良い味を出していて、「時計じかけのオレンジ」のマルコム・マクダウェルばりだった。藁の楯も彼がやっていたら面白かったかも知れない。

ダメな映画でもダメなりにツッコミどころがあって楽しめる映画もあるのだけれど(アマルフィとか、ヤマトとか)、この映画は特にツッコミどころもなく、単にダメなだけの三流映画だった。

評価は☆ゼロと言いたいところだが、武田真治の演技にプレゼントして☆半分。  
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2013年05月31日

オブリビオン

oblivion


トムの映画はミッション・インポッシブルシリーズ以外は駄作が多いので、この映画もどうせ、と思いながら観に行ったのだが、結論から言うとかなり楽しめた。

もちろん、ツッコミどころは満載である。宇宙まで行ける乗り物が雷ぐらいで調子が悪くなるのってどうなの、とか、そこまできっちりしたセンシングができるなら爆弾ぐらい検出しろよ、とか、記憶まで刷り込むってどうなのよそもそも必要ないでしょ、とか、いくら宇宙飛行士でも訓練なしにそれだけ加速・減速を繰り返したら首の骨が折れるだろ、とか、エンパイア・ステート・ビルが埋もれるほどの土がどこからやってきたのよ、とか、その爆弾強力すぎ、とか枚挙にいとまがない。また、既視感を覚える設定や描写も、スター・ウォーズとか、マトリックスとか、世界侵略:ロサンゼルス決戦とか、あちこちにある。一番残念だったのはラストで、もうちょっと違うたたみ方があっても良かったんじゃないかな、とは思う。

しかし、それでも「おお、そうきたか」と驚かされる展開が数回あったし、女優はふたりとも美人だし、特撮もほとんど違和感がなかったし(音はちょっと・・・)、字幕もいつもよりは酷くなかった(なっちゃんです。「侵入」という誤字はいただけないけど)。

個人的には結構楽しい2時間だった。それにしてもこの映画、随分気合いを入れて宣伝しているけれど、どうして???と思う。大作という感じでもないんだけどなぁ。

ちなみにoblivionとは「忘却」とか「忘れられている状態」とかの意味。

評価は☆2つ。  
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2013年05月28日

モネ・ゲーム

gambit


GAMBIT(手始め)という原題がなぜモネ・ゲームになってしまったのかが良くわからないけれど、それを除けば気楽に楽しめる映画である。

詐欺を扱った映画は観客をどうやって騙すのかがポイントになるけれど、主軸になっている仕掛けは途中で察しがついてしまうのが勿体ない。とはいえ、スッキリしたオチは評価できると思う。

面白かった登場人物は日本語の通訳で、「馬鹿な日本人を演じて騙す作戦大成功!」とか、超ジャパニーズイングリッシュ(発音が)で盛り上がるところが大爆笑。このあたりについて詳細を書くとネタバレになるのでここでは書けないけれど、この演出は日本人じゃないと楽しめないと思う。かといって、英語が全然できない日本人が観たら「日本人蔑視だ」などと顔を真っ赤にしそうで、それはそれでちょっと心配である。

90分と短い映画なので、あんまり構えずにちょこっと観に行けば楽しめると思う。英国王とか、スネイプとか、過去の有名作品の役者さんが活躍しているのも楽しい。

評価は☆2つ。  
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2013年05月22日

クロユリ団地

マエアツ主演のホラー映画である。正直、全く期待していなかったのだが、思いのほか、怖かった。何しろ、マエアツの顔が怖い。もともと、ホラーに似合う顔立ちである。

では、大満足かと言われれば、それほどでもない。問題はストーリーと演出。

ストーリーの問題点は、全てが投げっぱなしということである。たくさんの伏線のうち、いくつかはきちんと回収されたものの、残ってしまったものが目立つ。また、「志村、後ろっ!後ろっ!」ではないが、「どうしてお前はそこへ行くのか」という場面が少なくない。それらのいくつかは回収される伏線なのだが、それはそれであからさますぎて、あっという間に「あぁ、こういうことか」と察しがついてしまう。何も考えずに「こえーーーーーっ」「ぎゃーーーー」と叫びたいならともかく、きちんとストーリーを追っていきたい人にはちょっと食い足りない内容だと思う。

演出面では、まず出演者たちの動きがスローなのが良くわからない。どんな効果を狙ったのかわからないが、人間の動きが遅いし、人物目線のカメラワークも動きが鈍い。これが何かの効果を出しているのなら良いのだが、少なくとも僕は「なんか、とろとろしてるな」という違和感以外のものを感じなかった。祈祷シーンの演出は何か滑稽ですらあって、思わず笑ってしまった。この点も含め、クライマックスに近づけば近づくほど演出が不自然に過剰になるし、特撮はちゃちくて、全体の雰囲気がおかしくなってしまった。

あと、あの目覚まし時計はいくらなんでも音が大きすぎる。

マエアツは、演技力は結構あると思う。でも、この映画では、他の部分がグイグイ足を引っ張っていた。まるで地面に穴が開いてそこに引きずりこまれているような感じである。演技派女優を目指すなら、もうちょっと監督を選んだほうが良いと思う。

評価は☆1つ半。

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2013年05月16日

県庁おもてなし課

観始めて30分で飽きてしまった。堀北真希は可愛いのだが、まず登場がまずい。どう見てもギヤ比で劣るママチャリが凄い勢いで走っていく様をみて、これはダメだ、となってしまった。

おかしなシーンは他にも満載である。夕焼けに向かって叫んでいたと思ったら、次の瞬間夜になっている。その間に何があったのかを観客に想像させるのならわかるのだが、そういう意図を持った演出ではなく、ただ単にそういう絵を撮りたかっただけのように思える。他にも、「これは時間軸がちょっとおかしいだろ」という描写がいくつか見られた。

さらに、ヒロインの堀北真希が超人っぷりを見せるのかと思いきや、途中からはただ可愛いだけのお飾りになってしまい、目立った活躍は「トイレをきれいに」という、誰でも出せそうなアイデアだけである。

軸となる高知県の開発ネタもちょっとどうなのか。実際に三菱総研で地方自治体のコンサルをやっていた立場からすると、あんな仕事のやり方はありえない。もしかしたら高知県だけは特殊なのかも知れないけれど、仕様が決まっていない発注はたとえ随意契約であっても無理だと思う。あれで議会や県民が納得するとしたらびっくり仰天である。それに、アイデア自体も全く普通で、これであの金額が貰えたらこんなに美味しい商売はない。

テレビのシーンもひどい。「ゲストのゲスト」の話でほとんど全部終わってしまっていて、放送事故レベルである。パラグライダーのライセンスを持っている僕に言わせるなら、「飛び降り」とかも大げさ過ぎる。初めてだって、そんなにはビビらないし、斜度だってせいぜい30度ぐらいのものである。それにパラをやっているのは、実は7割以上が女性のような気がするのだが・・・。

原作ものということもあってか、もっと長尺の映画を無理やり短くしました、という感じを強く受ける。それでいて退屈なんだから、ストーリーに起伏がなさすぎるのだろう。大体、誰も活躍しないし、仕事もほとんどしていない。

脚本や演出がダメなら、役者を観るか、と思えば、主役の錦戸亮が異常なまでに下手くそでびっくりした。女優も男優も脇役はしっかりしているのに、主役が酷くて全てが台無しになっている。「ちょんまげぷりん」では演技力を見せつけるまではいかないまでも、コミカルな役をうまくこなしていたのに、本作では相当に残念な出来だった。勢いがある役はできても、演技で見せるのはまだまだ無理だと感じた。役者で存在感を見せたのは、可愛さで見せた堀北真希よりも関めぐみの方だったと思う。

観光課を題材にしているので、映画全体が観光PR映画になっていることにそれほど違和感がなかったのがせめてもの救いである。堀北真希と関めぐみに☆一つおまけ。

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2013年05月12日

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点

道民カードを所持している元北海道民にして歌志内市の名誉市民でもある僕にとっては、砂川に本店がある北菓楼が協力しているだけで見逃せない本シリーズである。

が、冒頭の入りはなかなか期待させたのだけれど、時間稼ぎとしか思えない、存在意義が不明のオネエチャンネタあたりから急激に失速。以後、ラスト近くまでペースは回復しなかった。退屈すぎて時計を確認すると開映から65分後だった。それからの約一時間は眠気との戦いとなった。ラストで明らかになったメインディッシュだけはそれなりだったけれど、これひとつで2時間引っ張るのには無理がある。いくら小ネタを盛り込んでも退屈なものは退屈だ。

要すれば、ストーリーがせいぜい一時間ドラマ分ぐらいの分量しかなく、脚本家が苦心惨憺したところで、その希釈感はどうにもならなかったということだ。前作が好意的に受け入れられたために大慌てで作ったのかもしれないが、柳の下にドジョウが二匹いるという状態になるかどうかは広告代理店の手腕次第だろう。少なくとも口コミで客が呼べるような質ではなかった。

この映画で唯一評価できる点はオカマを肯定的に取り上げたことで、同性愛者やオカマが差別的に見られてしまうことがまだまだ多い日本社会に対する啓蒙という意味はあると思う。しかし、それ以外の意味は見いだせない。カッコ良いヒーローが大活躍するでもなし、すげぇ可愛いヒロインが愛想を振りまくでもなし、眼を見張るようなアクションがあるわけでもなし、引き込まれてしまうストーリーが展開されるでもない。

前作はもちろん、テレビドラマ「リーガル・ハイ」でも素晴らしい脚本を書いた古沢良太だが、ちょっと出来不出来の差が大きい。本作は残念ながら失敗作だと思う。評価は☆ゼロ。

関連エントリー
探偵はBARにいる
http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/51290193.html

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2013年04月27日

アイアンマン3

iron man3


大好きなアイアンマンシリーズの第3作。過去2作の評価はこちら。

アイアンマン
http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/50738798.html

アイアンマン2
http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/51036183.html

さて、本作なのだが、過去2作の良かった点はトニーのお茶目っぷりと、それに絶妙に絡んでくるペッパーのユーモアだった。ところが、本作ではそれらが非常に薄口である。トニーは鬱っぽくて、それに連動してペッパーの真面目っぷりが空回りしている。どうしてこうなった、って、理由は簡単で、アベンジャーズに参加してしまったからだ。これまでアイアンマンの世界にはハルクもソーもキャプテンも宇宙人もいなかった。しかし、アベンジャーズに参加してしまったため、それらの影だけが残ってしまった。

ウルトラマンと仮面ライダーが一緒の映画に出ても、TVシリーズではなかったことにして話が続くはず。怪獣を連れてきたのが実はショッカーだった、などという展開を観たことがない。ウルトラマンAにセブンやウルトラマンが出てくることはあるけれど、違っているのは防衛隊の名前とメンバーぐらいで、世界観に大きな違いがあるわけではなく、好意的なスタンスからは「数年の間に改組があったのかも知れない」と解釈してもらえると思うのだが、やはりアイアンマンとキャプテン・アメリカの同居は困難だろう。ところが、この映画は「アベンジャーズ」をなかったことにせず、相乗効果を狙ってしまったようだ。

おかげで、作品の世界観そのものが歪んでしまい、過去2作が持っていた良さが失われてしまった。では、何か得るものがあったのか。これが残念ながら見当たらない。過去の2作がイマイチだったのなら諦めることも簡単なのだが、マーベルのシリーズの中では最もお気に入りだっただけに残念でならない。

キャラクターの性格まで変えてしまうような大事件を引き受けたなら、なぜ本作ではヒーローたちが助っ人として現れてくれないのか。なぜ、相変わらず孤軍奮闘しているのか、不思議でならない(とはいえ、エンドロールまで観ると、その不思議感は若干緩和されるのだが)。『「アベンジャーズ」の戦いから1年。----すべてが変わってしまった。』というのは嘘ではない。作品自体は、つまらない方へ変わってしまった。

加えて、「さらば----アイアンマン。」という宣伝文句はどうなのか。米国のIRON MANのポスターを見ても、そんな煽り文句は見当たらない。アイアンマンの場合、トニーは時間さえ許せばいくらでも強化スーツを製作することができるので、「さらば」と言うなら、トニーが死ぬとしか考えられない。すでにアベンジャーズの続編の製作が発表されている状態で、「さらば」はないだろうと思う。

アベンジャーズや過去の2作品と微妙に関連性を持たせたストーリーなので、時間に余裕がある人は、それらをビデオで復習しておいた方が良い。「そんな金儲け主義の陰謀には乗せられたくない」というひねくれ者は、何も見ずにどうぞ。ちなみに僕はひねくれ者の方でした。

評価は☆1つ半。

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2013年04月24日

リンカーン

lincoln


米国人の、ユダヤ系米国人による、米国人のための映画である。この映画をきちんと楽しむためには、米国の歴史や南北戦争についての知識が必須である。多少ネタバレになる部分は否定できないものの、ウィキペディアあたりで事前に勉強しておく必要があるだろう。調べておくべきキーワードは

エイブラハム・リンカーン
南北戦争
ゲティスバーグ演説
ロバート・エドワード・リー

といったあたりだと思う。恐らく、日本人が織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信や関が原の合戦あたりのことを知っているようなレベルで、米国人はこのあたりのキーワードについて知識があるのだと思う。

これらのキーワードに関する知識が欠落している状態でこの映画を観ると、前半は物凄く退屈だと思う。また、後半はスピーディに進むので退屈はしないと思うけれど、場面ごとの機微のようなものが感じ取れなくなりそうだ。そういうこともあってか、わざわざ冒頭に日本人向けのメッセージが付け加えられてはいるけれど、これだけでは全く不十分である。また、ワシントンの合衆国議会とホワイトハウスの位置関係なども、米国人にとっては多分「全くの常識」であって、それを前提として描かれているので、日本人には理解が難しいかも知れない。

日本人にはハードルが高いし、本気で楽しもうと思えば相応の事前学習が必須なのだが、エンタメ業界の常で、配給会社も、マスコミも、クリアすべき、しかし面倒な前提条件を抜きに「アカデミー賞主演男優賞」とか、「スピルバーグ」とか、ミーハー(死語)な言葉で飾り立てて、映画ファンをミスリードしている。これは目先の利益を優先しているに過ぎず、結果として「あれ?何が何だかわからなくて、退屈だったよ」「なんか、最近のスピルバーグって、つまらなくない?」「『フライト』もそうだったけど、思ったような映画じゃなかった」といった事態になる。

ストーリーとか、感想とか、そんなものを参考にしても意味がない。この映画を理解したかったら、まずは事前学習をきちんとやること。それを抜きに鑑賞して、「退屈だった」などと間抜けな感想を述べて失笑を買ったりしないように。

評価は☆2つ半。

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2013年04月19日

舟を編む

国語辞典を作る作業を描いた異色作と言えるかも知れない。僕は作家なので出版社とも付き合いがあるし、編集者にも色々とお世話になっているので、出版社の内情に関してはある程度の知識がある。それでも、辞書作りの実際というのはほとんど知らなかったので、なかなか興味深く観ることができた。多分、出版に関する知識がなくても結構楽しめるのではないかと思う。

ストーリーには大きな捻りがなく、淡々と進んでいく。辞書作りのタコ部屋が舞台なので登場人物が少なく、そのおかげもあって人物描写が丁寧だ。そして、すぐに気がつくのが脚本の良さである。起伏のない単調なストーリーを見事に料理していて、途中で眠くなることもなく最後まで楽しめた。この脚本を書いた渡辺謙作の作品は初めて観たが、今後は注目しておきたい。

1995年ぐらいの時代感もそこそこに出ていたと思う。ただ、イミダスが置いてあるのなら、なぜ現代用語の基礎知識や知恵蔵がないのだろう、と思ったが、そのあたりは大人の事情なのだろうか。

松田龍平の演技はマンネリとユニークとのギリギリのところをいっていて、まだ引き出しに在庫を残していると思うのだが、一方で宮崎あおいは「神様のカルテ」や「ツレがうつになりまして。」などとほとんど変わらない演技だったと思う。これは役者の演技力の問題なのか、演出する監督の問題なのかわからないが、もうちょっと意外性のある見せ方をして欲しかった。オダギリ・ジョーは良い奴なのか、嫌な奴なのかがなかなかわかってこないあたりに演技力を感じた。加藤剛、鶴見辰吾といった男優陣がすっかり老けていてびっくりしたけれど、一方で八千草薫はすっかり見慣れてしまって、最近は老女版の香川照之みたいな感じがしてきている。ある程度高齢で、セリフを覚えることができて、足腰がしっかりしている女優のコマが不足しているのかも知れない。

石井裕也監督の「ハラがコレなんで」は終盤で失速した感があったけれど、この作品は最後まで楽しめた。日本映画らしい良い作品だと思う。評価は☆2つ半。

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2013年04月08日

ジャンゴ 繋がれざる者

django


相変わらずタランティーノ風味(良い意味で)である。音楽、BGMや効果音の使い方、ズームの使い方、カメラアングル、暴力描写などが独特で、さまざまな演出手法を熟知した上で、誰にも真似できないような自分らしさをきちんと構築しているところがこの監督の素晴らしいところである。イングロリアス・バスターズも凄く楽しかったけれど、

参考:http://blog.livedoor.jp/buu2/archives/50949029.html

なんというか、映画ファンが映画ファンのために撮りました、というのがきちんと伝わってくるのだ。編集が粗いところもあるのだが、それもわざとで演出のうち。ちょっと違和感があったりするのだが、そのもやもやするところも監督の狙いなんだろう。さすがにララさんの退場シーンは「ワイヤーを引っ張る方向が全然違うんじゃないの?」と感じたけれど、これはご愛嬌。

ストーリーや脚本もきちんとしている。1850年あたりのアメリカ南部という「何でもあり」の舞台を設定して、ドンパチを繰り広げる。「スピルバーグが「リンカーン」を撮るなら、俺は俺で奴隷制度を取り上げてやる」と考えたかどうかは知らないけれど、切り口がタランティーノらしくて良い。馬車の上の歯がぐらぐら揺れるのが非常にユーモラスなのだが、他にも覆面軍団による襲撃シーンを始めとしておかしな会話が何度も繰り広げられ、緊張感だけではないところも良い。色々なアイデアが盛り込まれた脚本だと思う。

掛詞のセリフを原語に忠実に、かつ観客にわかりやすく字幕にしていたので、「あー、丁寧な仕事だなぁ、この間の町山さんが監修した「テッド」での字幕もこんな感じでもうちょっと原語を活かせば良かったのになぁ。これ、松浦美奈さんかなぁ?」と思っていたら、字幕は松浦美奈さんで、歌詞は町山さんで、両方の名前が出てきた(笑)。

観終わって何が残るの?といわれると返事に困ってしまう。単に、楽しい3時間を過ごしただけである。苦痛な3時間の後に教訓が残る映画もありだけど、こういう映画があっても良いと思う。評価は☆2つ半。

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2013年04月04日

藁の楯 わらのたて

Yahoo!レビュアー試写会で鑑賞。

少女二人を惨殺した犯人のクビに10億円の懸賞金がかけられ、一般の市民たちが賞金稼ぎになって犯人を殺そうとしている中、福岡から東京まで犯人を護送する、というストーリー。

少々無理がある設定を、“超お金持ち”というワイルドカードを持ちだして実現しているのだけれど、設定にはアラが目立ち、冒頭からちょっと入り込めないところがある。特に気になったのは「新聞にこういう広告を載せることは普通できないけど、こんなことをやってクリアしたんですよ」という、“こんなこと”に説得力がなかったことである。説得力のない設定なら、いっそのこと何もない方がスッキリする。また、「これは違法」ということなら、「10億円を受け取ることはできません」と告知されるはずで、それが放置されていたのも良くわからない。ラストの桜田門で、道路のど真ん中で車を停めるのもおかしければ、群衆がじっとしているのも意味不明である。後半の移動がすんなりできてしまうのもおかしいし、こんな非常事態にいつもどおりの検問をやっているのもおかしい。大体、護送担当の警官の顔写真ぐらい、当たり前のように行き渡っているはずだ。あと、何でもかんでもすぐに拳銃を突きつける護送警官の態度はちょっと異常だと思う。状況が通常ではないことを鑑みても、かなりのやり過ぎ感がある。犯人がたびたび放置されるのも滅茶苦茶で、このあたりはB級ホラー映画の死亡フラグのようだった。犯人を殺そうとしているのが一般市民ということもあって、彼らが次から次へと工夫のない襲い方をしてくるので、失笑が漏れる。また、護送警官の内部で裏切り者探しが唐突に始まってしまうあたりもどうかと思うし、そもそも5人しかいない護送担当者の中に女性が含まれているあたりに映画の興行面の都合がチラつく。

では、眠くなるかというと、そんなこともない。なぜなら、とびきりのキチガイを映画の真ん中に据えているからで、そのキチガイが何をするかわからないので、「このあとどうなるんだろう?」という興味が持続する。しかし、キチガイがど真ん中にいることの魔力は、最後には解けてしまう。終わってみれば「何が起きても不思議じゃなかったけれど、結局それかよ」という感じで、広げた風呂敷を畳みきれなかった。無理やり興味を持続させられた分、失望も大きい。

三池監督は当たりハズレが大きい監督だけど、これはハズレ側だと思う。とはいえ、ハズレたのは監督の手腕というよりはストーリーと脚本のせいという印象を受ける。映像や演出は結構良かったと思うし、藤原竜也は舞台のほうが映える役者だが三池演出には合うと思う。ところで、歯並びの悪い役者を使いたがったのは誰なんだろう。口元を見せることが多かったので、三池監督の意向なんだろうか。

どうでも良いけれど、テーブルの上に乗せたお金は10億というより100億ぐらいありそうだった。評価は☆1つ。

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2013年03月27日

千年の愉楽

中上健次の代表作を映画化した作品だが、この映画を理解する上では最低限知っておかなくてはならないことがあって、しかし、この映画ではその説明は「常識」として説明されない。この映画は、その常識を知らないだけで、簡単にワンランク下になってしまう。ということで、まずは中上健次に関するトリビアである。中上健次は和歌山県の被差別部落の出身である。非常に複雑な家系に育っていて、彼が暮らした地域は「路地」と呼ばれる部落住民の居住地だった。また、彼の兄は首吊り自殺していて、彼の作品には首吊りが何度も出てくる。「路地」が部落を意味することを知らなければ、舞台がどこになっているのかもわからないし、彼の兄の自殺が彼の作品に大きな影響を及ぼしていることを知らなければ、この映画での首吊りの意味もわからなくなる。

さて、本作の内容である。海に面した斜面に立つ集落を舞台にした、3人の「中本の血」を受け継いだ男たちを描いた作品で、描かれる人数は原作よりも半減している。登場人物をとりあげた産婆を語り部として映画は進んでいくが、各話は濃淡がかなり激しく、加えて3人しか描かれていないので、「なんでこの産婆さんがこの人達を語るのか」というところが良くわからない。やはり、3人は少なすぎたと思う。彩度が低い、日本らしい海、山、空を背景にして、刹那的に生きる男と、それに絡む女たちを描いているのだろうけれど、話は単調で、乗り切れない。音楽も純和風で、ニッポンが好きな外人には受けるかもしれないのだけれど、日本人にはちょっと退屈な内容だと思う。

話としてはラストで「えーーーーー」みたいな展開になるのだが、その前のエピソードも含めやや唐突だ。また、導入も一気に画面に引き込まれるというよりは、置いてきぼりにされているような感じで、あれ?と思った。

高良健吾、高岡蒼甫、染谷将太という演技派男優たちがそれぞれに良い演技を見せているのだけれど、染谷はかなり扱いが軽くて気の毒である。あと、どうでも良いけど高岡蒼甫は実年齢不相応の若い男の役をやらされるなぁ、と思った。

正直にいうと、冒頭に書いたトリビアを含めても、この映画のどこに魅力があるのかちょっと理解ができなかった。複数の男たちとの関わりを通じて、語り部の産婆の人生が浮き彫りになってくるはずだったのに、取り上げる人数が少なくて、良く見えて来なかったということか。あるいは、見えて来なかったのは「中本の血」なのか。どちらにしろ、言葉足らずの印象が強く、せめて前後編ぐらいにして、もうちょっと丁寧にそれぞれの登場人物たちを描くべきだったのではないかと思う。あと、佐野史郎の遺影が喋り出すのはちょっと吹き出してしまうような演出だったと思う。ただ、この映画が中上作品を読むキッカケになるかも知れず、その点は評価できると思う。評価は☆半分。

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2013年03月21日

クラウド アトラス

cloudatlas


マトリックスのウォシャウスキー兄弟がいつの間にかウォシャウスキー姉弟になって監督した作品。原作モノで原作未読だが、映画を観る限りでは非常に映像向きな内容である。

奴隷解放時代から現代をまたぎ、未来までの異なる6つの時代の物語が並列で進んでいく。脚本に異常なまでにこだわっていて、物語と物語のつなぎ方が凄い。これはまもなく公開される「ボクたちの交換日記」で内村光良監督がところどころで見せていた手法をもっと極端かつ徹底的にやっているのだが、本作のあとに「ボクたちの・・・」を観てしまうと、彼此の差に驚いてしまうかも知れない。それくらいに「つなぎ」(=編集)にこだわりぬいている。ただ、手法自体は新しいわけではなく、むしろ古典的で正統的である。

ひとつひとつの物語はそれぞれに楽しめる短編になっていて、未来の韓国の映像などはブレードランナーで描かれたものとも、マトリックスで描かれたものとも異なっていて、「おおっ」と感心する。様々な舞台が用意されているので、カーチェイスなどのお決まりのシーンも最も適切なところに配置されていて、映画のバランスが非常に良い。

流れ星の痣を共通させたり、あるいは役者を5役、6役で重複して使うなど、物語間の連携が密なのも「凝っているなぁ」と思う。徐々に映画そのものの輪郭が明らかになってきて、「なるほどねぇ」という感じで終了する。全部で6つもの物語があるので、必然的に長尺になるのだが、この約3時間、飽きないといえば飽きない。映画で語っているテーマを宗教的な側面から語るなら、キリスト教圏よりは仏教圏において肯定的に受け入れられそうな感じがするのだが、同時に、仏教徒の日本人にはそれほど目新しいものがないような気もする。

性転換して女性になったウォシャウスキー姉(元兄)がやらせたと思われる演出が凄くてニヤニヤしてしまう。それと、アジアの女優が米国映画で活躍するためには脱ぎっぷりが重要だな、と思った。本作のペ・ドゥナとか、菊地凛子とか。

長尺で難解な、眠くなるような映画を覚悟していたのだけれど、複雑でもなく、わかりにくくもなく、眠くもならない映画だった。ただ、感動するわけでもなく、何かが小骨のようにひっかかるわけでもなく、これなら横道世之介の方が個人的には好みだったりする。

評価は☆1つ半。

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2013年03月19日

横道世之介

1980年代後半の東京の大学生を描いた青春群像作品。私のレビューは「17年後」のようなテロップが出る映画を観るたびにその演出力のなさを指摘するのだが、この映画はその点余計なテロップに頼っていないところがまず評価できる。一番最初は「あれ?」と思うが、監督の演出手法に慣れてしまえば、後は全く問題ない。

冒頭の新宿のシーンからカセットテープの広告など、時代考証がなかなか正確で、あ、このあたり、きちんとやっているんだな、と感じさせられる。ところが、これらを全て台無しにするのが一本松葉杖の利用に関する描写である。松葉杖を使った経験のない人間は頻繁に間違えるし、映像コンテンツの中に登場する怪我人も多くが間違えるのだが、松葉杖を一本で済ませる場合、杖は健脚の側につくのであって、怪我をしている側につくことはない。健脚と反対側につくのは危険だし、そもそも体重が怪我をした脚にかかってしまい、歩くこともままならない。キチンと整形外科にかかったことのある人間なら誰一人としてこの映画のような片松葉の利用をするはずがなく、どうしてここまで時代考証にこだわった映画でこんな失敗をやらかしたのか、なぜ誰一人として気付かなかったのかと不思議に思う。「そんなに目くじらを立てなくても」と思うなかれ。健脚と反対側に片松葉をつくのはとても危険な行為なのだ。無知で済む問題ではない。

さて、内容はというと、横道世之介を中心とした青春時代の一コマを軽妙なタッチで描いていて、似たようなトーンの作品としては、私たちの時代なら「青が散る」(小説、テレビドラマ)あたりが挙げられる。ただ、「青が散る」と似た設定もいくつかあるけれど、パクったとか、インスパイアされた、という印象はない。この映画では当時の時代感が見事に再現されていて、四十代の人間には懐かしい限りだと思う。世之介は別にカッコイイわけでもなく、特段魅力的というわけでもなく、存在感があるわけでもなく、最初から最後まで全く普通のどこにでもいる奴だが、だからこそ共感する部分がある。当時では普通のことをそのまま映像化しただけでも、それはそれで滑稽なのだ。そういった、時代に忠実なところが良い。

ところで、横道世之介の現代についての必然性が良くわからない。独特の感情が湧き出てくるのは間違いない。しかし、一方で、「そういう設定にしなくても良かったのではないか」という気持ちも出てきてしまう。作者の意図がどの辺にあるのか、ちょっと興味があるので、後日原作小説を読んでみたいと思う。

この映画では、意図的に「何年の話なのか」を隠している。ところが、ラスト近くで○○年ということを明確にするシーンがある。それまでの音楽やら、広告やら、様々な情報の断片から、「私の生きていた時代(1985年大学入学)に近い」と感じてはいたものの、それを明確化せずにいて、しかしラスト近くではそれを明示してしまうという演出の意図も良くわからなかった。もし監督のティーチインがあればこの点を質問しただろう。

全然関係ないのだが、「電書で読もうかな」と思ってKindleを探してみたら、横道世之介のKindle版は普通のと文春文庫版があって価格が50円違う。これはどういう理由なのだろう?

瑣末な謎をいくつか書き連ねたけれど、個人的には大好きな女優の一人である吉高由里子が活躍していたし、高良健吾もなかなか良い味を出していた。脇を固めているベテラン俳優たちも存在感があった。脚本の出来も良く、松葉杖の誤った演出さえなければ、満点で評価しても良い映画だった。評価は☆2つ半。

#「映画ヒッチハイク・ガイド」(Kindle本)、絶賛発売中!!
  
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2013年03月14日

ボクたちの交換日記

試写会で鑑賞。

長澤まさみ、木村文乃、川口春奈という主要な出演女優3人が3人とも好みのタイプという、夢のようなキャスティングである。これだけで☆半分アップは間違いない。

売れない芸人コンビの友情を描いたもの。コンビは男性二人なのでその点はちょっと残念だけど、ストーリーは馬鹿にできない。馬鹿にできないと言えば、内村光良の監督の手腕。特に撮影は冒頭から色々と細かい技術を使っていて、「ははぁ、映画オタクなんだな」と思わせる。途中、喫茶店のシーンなどで「これはちょっとないでしょ」と思わせるような編集があったものの、カメラアングルなどは概ね良かったと思う。

一方、演出技術の方はまだまだで、ちょっと空回りしている感じがあった。また、酷かったのはラスト近くの「さて、17年後・・・」という場面で、役者の見た目にほとんど変化がなく(さすがに服装は変わっていたけれど)、"半年後"でも全く違和感がない状態だった。字幕など挿入せずとも観客が「あ、時間が経ったんだね」とわかるのが本当の映画ではないかと思うし、そういうところこそ監督の腕の見せ所だと思うのだが、お金がないのか、技術がないのか、知恵がないのか、いくらなんでも不自然過ぎる絵になっていた。これは監督が悪いのではなく、プロデュースサイドの問題かも知れないが、どっちらけである。

この作品でもうひとつ残念なのは脚本だろう。原作未読なのでどこまで原作に忠実な脚本なのかわからないし、実際は脚本補助がほとんどの作業をやっている可能性も小さくなく(いわばゴーストライター)、内情をうかがい知ることはできないのだけれど、クライマックスの配置が悪い。助さん格さんが大暴れして印籠を出すのが20:30では困ってしまうわけで、クライマックスはクライマックスの時間帯に収まっていてもらう必要がある。ところが、この映画の脚本ではその位置が若干前より。おかげで感動が宙に浮いてしまった感じがする。

展開自体全く新しいものはなく(このストーリー展開のデジャヴ感は何だったのだろう、と考えていたら、山田詠美の「蝶々の纏足」だった)、一言で表現すれば「ベタ」なんだけど、それでもそれなりにジーンとしちゃうのがちょっと悔しい。

それにしても芸人はモテてモテて大変だと思った。売れなくても長澤まさみと付き合えるなら素晴らしい。評価は☆2つ。

#余談その1:試写会に売れない(?)芸人さんがゲストで来てました。せっかくなので写真を撮ってあげました。
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二枚目の写真でイベントプロデューサーがカメラを構えていますが、撮影された写真はこちらです(元データはこれ)。真ん中あたりにいる白い上着が僕。
bokutachi


#余談その2:僕のレビューがKindle本になりました。「映画ヒッチハイク・ガイド 2011年公開映画編」をよろしくお願いいたします。
  
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2013年03月03日

フライト

flight


「英雄か、犯罪者か」という宣伝文句と、背面飛行する旅客機の衝撃映像から、真の英雄の疑惑を晴らし、名誉を挽回するような内容かと思っていたらさにあらず。アル中のパイロットが飛行機の墜落に直面し、事件を通じてどうやって生きていくかを描いている。だから、映画の宣伝を真に受けていると「あれれ?」となってしまうだろう。旅客機の墜落シーンの衝撃は凄いので、このシーンだけでも十分に楽しめるのだが、それは「ヒア アフター」の津波のシーンと同じで、映画の本質ではない。アル中問題というかなり地味なテーマに、パイロットという花形職業を配置することによって、作品に対する興味をアップさせたような感じである。

凄いなぁと思うのは2点で、1つめは上にも書いた墜落シーンの迫力である。もう1つはデンゼル・ワシントンの演技で、観ていて腹が立つほどにダメな奴を見事に演じている。何人かの知人に感想を聞いたら、「主人公に全く共感できない」とか、「ダメな奴過ぎて観ていて嫌悪感しか持たなかった」などと言っていたのだが、そのあたりからも彼の演技が素晴らしかったことがわかる。

日本人にとってはアルコール中毒というのがそれほど一般的ではないので、映画のテーマそのものに馴染みがない。そういう映画に人を呼ばなくてはならないあたりに配給会社の苦労が察せられるのだが、映画のテーマを誤解させて観客を呼んでも、観た人に悪い印象を残すだけである。ここはやはり、きちんとアル中のパイロットの生き様を描いた人間物語、ぐらいで説明しておくべきだったと思う。

パニック映画でもなく、ミステリーでもなく、楽しい映画でもなく、もちろんエンターテイメントでもなく、ただアル中を描いただけ作品とわかって観るのなら、この映画はなかなか良く出来ていると思う。特撮を効果的に利用し、スパイスも利いている。人間の弱さを丁寧に描いていて、広げた風呂敷の畳み方も正統的だ。ラストは想定の範囲内ではあるものの、最後まで「どうなるんだろう?」と飽きさせない。

大事なことは、派手なパニック映画ではなく、かなり地味な人間ドラマであるということ。それを理解した上で鑑賞するなら、なかなか良い映画だと思う。ただ、正直にそうやって宣伝していたら、こんなにたくさんの上映館は確保できなかったと思うけれど。だから、多くの人が映画館を出たときに失望を述べることになると思う。

評価は☆2つ。  
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2013年02月28日

アウトロー

jack


僕は常々、トム・クルーズはミッション・インポッシブルだけやっていれば良いんだよ、と思っている。そのトムの最新作である。

「世界で最も危険な流れ者(アウトロー)」というラベルの新ヒーローとの事だったので「きっとダメなヒーローだろうな」と思いながら観に行ったのだが、映画が始まってしばらくしても、普通である。特に危険なアウトローという感じもなく、イーサン・ハントとそれほど違いがない。記憶力は特に凄いし、喧嘩も強いけれど、これならデューク東郷の方が上だろう。

ところどころに配置された謎は比較的簡単に明かされていく。犯人とか、黒幕とか、顔出しだし。おかげでミステリーというよりはアクション映画。それでも残されていた数少ない謎が「いまにわかる」ってことだったので、いつわかるのよ?と思っていたら、本当にラストのラストで、主人公の「危険っぷり」が明らかになって、まさかの終了。おいおい、それがありなら、もう何でもありだろ、みたいな。そういう意味で、ちゃぶ台をひっくり返すような感じはあるけれど、だからアウトローなの?何か変じゃない?って思って調べたら、原題はアウトローなんかじゃくて、"Jack Reacher"だった。誰がアウトローとかいう珍妙な邦題を考えたのか、小一時間問い詰めたい。

ということで、タイトルや予告編との齟齬は気になるものの、映画として「普通のレベル」の質をずっと維持していたと思うのだけれど、ラストで☆1つ、ランクダウンした(笑)。そりゃぁないだろ、みたいな。やっぱりトムはミッション・インポッシブルだけやっていれば良いとの思いを強くした。

評価は☆半分。  
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2013年02月23日

LOOPER/ルーパー

looper


わかりにくく表現すれば、最初はバック・トゥ・ザ・フューチャーだったのに、途中でアナキンが出てきて、終わってみたらスター・ウォーズでした、という感じの映画である。

タイムトラベルものなので、例によって山ほどの矛盾がある。例えば、主人公の手を切り落としたとする。未来の主人公の手はもちろん消えてしまうことになるが、では、影響はそれだけかといえば全くそんなことはないはずで、切り落とされた主人公の手によってなされたはずのたくさんのことが、なされなくなり、影響は物凄く大きくなるはずだ。ところがなぜか、そんなことにはならず、ただ未来の主人公の手が消えるだけだったりする。このあたりでもう設定が破綻している。

おかしいのはそれだけではない。なぜわざわざそいつをそこに送り込むんだ?みたいな、無茶苦茶で到底理解不能なストーリーが展開されていく。もしかしたら何か事情があるのかも知れないのだが、そのあたりは全くと言って良いほど説明されない。「なんだ、これ??」と、目が点になっていく。

いや、でも、思い出してみれば、バック・トゥ・ザ・フューチャーだってこのくらいの粗さはあった。でも気にならなかった。なぜかって、バック・トゥ・ザ・フューチャーには、圧倒的な面白さがあったからだ。この映画はツッコミどころが気になって仕方がない。

B級作品と割り切れば「こんなもんだろ」と思うけれど、一番残念だったのは今から60年経って、色々なことが可能になっているはずなのに、ハゲはハゲのままだったことである。

評価は☆1つ。  
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2013年02月19日

ゼロ・ダーク・サーティ

zerodarkthirty


冒頭からそこそこに緊張感があって、それが途切れない。ただ、最大の問題は「全世界が結論を知っている」ということである。それゆえに、緊張感は「ハート・ロッカー」を観ているときには及ばない。また、ほとんど遊びがない脚本なので、エンターテイメント性という意味では「アルゴ」にも及ばないと思う。

主人公が意外と活躍しない。観ていけばわかるが、活躍し、貢献するのは主として周囲の人間たちである。強いて言うならラストで活躍するが、それも印象的ではない。作品を通してCIAのグダグダっぷりが際立っていて、CIAの職員としての能力というよりはグダグダの組織の中で孤軍奮闘する若い女性、という感じだ。

また、当然だが、米国のプロパガンダ臭さもある。

ラストの襲撃シーンは見事だが、生体反応の見られない相手にとどめの銃弾を撃ち込むなど、観れば観るほど、戦闘ではなく処刑だった印象を強く受ける。このあたりは「事実をきちんと見せている」という点で評価できるけれど、監督の意図がどのあたりにあるのか、米国人がこの映像をどう受け取るのかは良くわからない。日本人的には、「へぇ、そうだったの」というぐらいの感想だと思う。

暗くて静かで長くてストーリー的にもあまり抑揚がなく、加えて全く馴染みのない固有名詞が大量に供給されるので、観ていて眠くなる。と、ドッカーン!!!となって目が覚める、というのの繰り返し。じゃぁお茶でも飲みながら、と思うのだが、160分もあって、トイレに行きたくなりそう。その点でちょっと辛い映画ではある。

ここまでの部分を我慢できるなら、十分に楽しめると思う。僕はそこそこ楽しめた。評価は☆2つ。

なお、ゼロダークサーティは深夜0時30分の意味とのこと。

以下、ネタバレ情報(閲覧は自己責任で)。劇中の事件についての一情報。

米国諜報史上に残るCIAの大失態
http://blogs.yahoo.co.jp/midway_naval_battle/13452861.html  
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2013年02月13日

ムーンライズ・キングダム

moonrise


問題児同士のカップルが大人や仲間から逃げ出して、海岸や森の中を歩きまわり・・・という映画。

米国での評価が非常に高く、はて、どんな感じなんだろうと期待して観に行った。しかし、残念ながら僕の感性の引き出しの中には、この映画を面白いと感じる要素はほとんど存在していなかった。映像表現の独自性には面白いところもあったけれど、それは10分ほどで慣れてしまった。あとはラストまで退屈で、眠気との戦いとなってしまった。ほんの数回、くすくすっと笑ってしまう場面はあったけれど、これに比較すれば笑える映画は世の中に山ほどある。

セリフが少なく、その分音楽を鳴らしっぱなしで、BGM付きの絵本を読んでいるような映画。脚本は雑だし、そもそも何を表現したいのかがさっぱり伝わってこない。僕には全く響きませんでした。

これ、本当に面白いの?

でも、「アウトレイジ」や「冷たい熱帯魚」みたいな映画を全く受け付けない人もいるだろうし、やっぱり人それぞれということなんでしょうね。

評価は☆ゼロ。  
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2013年01月31日

脳男

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nou2


Yahoo!映画のレビュアー試写会で鑑賞。

二階堂ふみ、染谷将太の「ヒミズ」コンビが存在感を見せつけている。特に二階堂ふみが好演していて緊張感が途切れない。彼女が演じた女性は“キチガイ”だが、その狂気が非常に良く表現されていた。

痛みを感じない、感情がない「脳男」と爆弾魔との対決が縦糸となり、横糸で犯罪者の更生を扱っている。縦糸については爆弾魔の側からの描写が少ないためにちょっと一方的になっているし、横糸は横糸で、縦糸との絡み具合が微妙だ。この作品においては、横糸は物語に奥行きを与えるべきなのに、残念ながら、その役割を十分に果たしているとは言えなかった。これは脚本の問題だと思う。

また、ラストのシークエンスが唐突、かつ表現がわかりにくく、「あれ?何が起きたの?」と戸惑ってしまった。この作品の流れなら脳男はあんなメールは出さないし、出すとしても、過去形のメールのはずだと思う。予告メールなど、送る理由は何一つないのだから。もちろんその後の(非常に説明的な)描写によって何が起きたのかはわかったのだが、このあたりも脚本と、加えて演出にも難があったと思う。演出に難あり、といえば、警察の無能っぷりが酷いし、あんなでかい病院が停電したら、もっと様々なところに問題が発生するはずだ。そのあたりの描写が不十分なので、現実味が削がれてしまう。

主役の生田斗真は感情のない脳男を好演していた。ただ、身体能力が優れているはずなのに、なぜか喧嘩では圧倒的な強さを見せつけられない点がどうだったのか。もっと圧倒的な強さで他と対峙して欲しかった。また、爆弾魔は爆弾魔で、描写が少なく、「知能犯」というカラーが出なかった。「感情のない強者」と「ためらいのない狂気」の対決という構図を作ってくれたら、もっと締まった作品になっていたのではないかと思う。残念ながら脳男にはそこまでの強さが、爆弾魔には圧倒的な頭脳がなかったので、両者の戦いにシリアスな部分が欠けてしまったと思う。

つまらない映画ではない。素材が良いので、もっと良く出来たんじゃないかな?と、欲張りたくなる。

役者では、松雪泰子はイマイチだった。彼女にはシリアスな役よりも、ちょっと抜けた、デトロイト・メタル・シティのような役が似合う。江口洋介は意外と良かった。でも、松田優作ならもっと良かっただろうな、と思う。

評価は☆1つ半。

nou3


nou4
  
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2013年01月29日

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

lifeofpi


2Dで観てきた。

1行で説明するなら、沈没した船から脱出した少年がトラと一緒に海を漂流する、という内容。

宗教色が濃く、前半ではそれがストレートに描かれるし、後半では主として主人公とトラを通じて、様々なメタファーとして描かれる。メタファーは「凶暴性」だったり、「肉食の必要性」だったり、「敵対するものとの同調」だったり、「大衆の愚かさと安全性」だったり、「野性のコントロール」だったりと色々である。ただ、そのどれもが、宗教観の希薄な僕にはあまり訴えてこなかった。「あぁ、これは、こういう意図なんだろうな」といった具合である。

それより何より、全編を通じて違和感があったのが映像表現である。トラはもちろん、他の動物や、海、空までもがほとんどそれとわかるCGで作成されていたのがどうも受け付けない。加えて、3D効果を出したかったのか、被写界深度の極端に浅いカメラで撮影した(あるいは撮影したかのように見せかけた)映像が2Dでは鼻につく。「手前も、背景も、ボケすぎでしょう」みたいな。

最後にどんでん返しが用意されていて、観客は「あれ?」ということになる。というか、ガラガラガッシャーンという感じで、それまでのストーリーが全てひっくり返されてしまう。そして、「あとは、観た人が好きな様に解釈してくれ。面白く解釈したいならこちら、現実的に解釈したいならあちら」という形で終了する。

解釈のヒントはトラの名前で、「リチャード・パーカー」とは19世紀に発生した「ミニョネット号事件」で殺害、食べられてしまった少年給仕の名前である。現実的な解釈の立場に立つなら、それまで全く鳴りを潜めていたトラが唐突に現れたことも、あるいは島に着くなり消えてしまったことも説明がつく。

内容の解釈について僕は「現実的」な解釈の立場を取ったけれど、このあたりは人それぞれなんだろう。ただ、制作の意図はやはり現実的な解釈の立場なんだと思う。それをそのまま映像化することはできないので、トラやシマウマを使ったんだろうな、と。

猛獣と人間との、過酷な状況下での交流を描いた感動作、などではない。むしろ、生きることや宗教の意味するところを考えなおさせるきっかけになるような作品である。ただ、それを、宗教意識の弱い日本人が観て、どこまで感じ取れるかとなれば、微妙なところだろう。少なくとも、僕に限れば、あまり大きなものはなかった。加えて、作為的な映像も好きにはなれず、「これはダメだな」という結論になった。しっかりとした信仰を持っている人なら、また違った評価になるだろう。

評価は☆半分。  
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2013年01月20日

テッド

ted


「宇宙人ポール」もそうなんだけれど、米国人向けのパロディ満載映画なので、日本人が心の底から全てを楽しむのは難しい。「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」みたいな漫才ネタが日本の古くからの文化や生活習慣に根ざしていて、そのおかしさが恐らく外人には理解できないのと同じである。また、「エイリアン」やら、「レイダース」やら、「フラッシュゴードン」やら、ちょっと古めの映画のパロディが満載なので、映画ファンじゃないと元ネタがわからないところもあると思う。指を広げて手をついて、ナイフでカッ、カッ、カッ・・・という奴などは元ネタを知らなくても笑えるけれど、元ネタを知っていればもっと楽しめる。

しかし、この手の、「あのシーンはこれ」「このシーンはこれ」と、元ネタばらしを始めても、ライトな映画ファンはふーーんと思うだけで、むしろ「また自慢が始まった」と苦笑してしまうに違いない。この映画は、確かに色々なネタを盛り込んであって、それを知っていたほうが楽しいけれど、知らなくても十分に楽しい。「これはね・・・」と始めるのは、TSUTAYAでレンタルしてきたときで十分だと思う。そうやって楽しめるように、字幕は色々と配慮がなされていた。この字幕に関しては、ちょっと映画や米国のサブカルに詳しい人がみたら、「また映画秘宝系の奴らが余計な字幕をつけやがって。なんで星一徹とか、ガチャピンとか、くまモンとか、余計な意訳をするんだ」と言い出すかも知れない。でも、そんな人ばかりじゃないし、米国に詳しい人は最初から字幕なんか見ずに、英語で楽しめば良いのである。

ストーリーに凄いひねりはないし、張られた伏線もわかりやすい。マニアックなネタ以上にわかりやすいネタもたくさん配置されていて、十分に笑える。映画館で観ていたら、多くの人が「ここは笑う場面かな?」と考えているように感じられちゃったけれど、面白かったら笑えば良いと思うよ。

クマは、実際の生態とは無関係に、洋の東西を問わずとても可愛い存在と認識されていることがわかった。

ところで、CGの進歩は凄いね。TEDのCGは全く違和感がなかった。「え?このシーンもCGだったの?」って驚くような始末。

参考資料:Ted: the bear facts
http://www.fxguide.com/featured/ted-the-bear-facts/



以下余談。今回、新座のシネプレックスはほぼ満席だった。スター・ウォーズでも、エヴァでも満員にならなかったのに。一体何が起きているのだ?

評価は☆2つ半。  
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