2021年08月08日

東京五輪男子サッカーの総括

戦前から言っていたのだが、結局森保の戦略のなさ、戦術のなさが原因で日本サッカー史上最強にして、もっとも恵まれたU24日本代表は4位に終わった。おそらく、今後数十年、これだけのチャンスは来ないだろう。

メキシコ戦での敗因は、この試合だけにあるのではない。この試合に至るまでの戦略上の問題だ。つまり、選手の起用方針である。出場選手をほぼ固定してしまい、特定の選手、特にミッドフィールダーをヘトヘトに疲れさせてしまった。にもかかわらず、3位決定戦になってもそうした疲弊が目立つ選手に頼ろうとする森保は無能以外の何者でもない。

中二日で連戦が続くのは分かっていたのに、選手交代が遅れる。挙句延長戦まで戦うことになったのだから、選手達のパフォーマンスは落ちる一方だった。疲労すれば、トップスピードが落ちるし、スピードを維持できる時間も短くなる。最初の一歩の駆け出しも遅れるし、スタミナもなくなる。体力だけでなく、頭脳も疲労して判断力が鈍くなっていく。試合を追うごとに相手は強くなっていくのに、選手達のパフォーマンスは落ちる一方なのだ。これでは勝てるものも勝てない。

森保の戦略は「とにかく目の前の試合を頑張れ」というものだ。実は、この森保の方針は前からわかっていた。一昨年のアジアカップでも同じ過ちを犯していたのである。

久保と堂安が一歩抜きん出た選手であることには同意する。また、リーダーとしてオーバーエイジから選ばれた吉田も代えを見つけるのは困難だろう。しかし、他の選手はいくらでもなんとでもなる。ところが、森保は選手を休ませることをしなかった。

また、戦術面では、林の重用が足を引っ張っていた。テレビの画面から見るだけなので評価には限界があるのだが、それでも林が相手のオフサイドラインをきちんと見極められずにいることは明白だった。「おまえ、そこにいたら最初からオフサイドだろ」というポジショニングで再三オフサイドを取られて攻撃の流れを切ってしまっていた。攻撃力ではなく運動量を求めたのかもしれないが、それなら林以外のミッドフィールダーで良かった。結局得点パターンはほとんど堂安と久保の個人技とコンビネーションに頼らざるを得なくなっていた。

ニュージーランド戦は相手の選手が決定機に足を滑らせるという幸運によってPK戦に持ち込めたのだが、本当なら負け試合だった。延長に入って田中を板倉に代えて守備が安定したことからもわかるように、この試合は田中を完全休養させるべきだっただろう。また、それに続くスペイン戦、メキシコ戦は常に押し込まれてカウンター狙いにならざるを得ないことがわかっていたのだから、三苫や前田の使い所だったはずだ。ところがここでも森保は動くことができなかった。スペイン戦で久保と堂安を2枚替えしたことについて批判する向きもあるけれど、とんでもない。ミッドフィールダーは最初から守備に追われることが分かっていたわけで、前田や三好の守備力は少なくとも疲労困憊した久保よりはずっと上だった。どうせ押し込まれる時間が長くなるのだから、ボールを奪って攻撃に転じた時に突破力のある三苫やスピードのある前田なら、もっとチャンスを作ることができただろう。三苫は開幕直後はコンディションが悪かったのかもしれないが、問題がなかった前田にはもっと長い時間を与えてあげる必要があったと思う。

森保には、選手を生かす戦術の引き出しが決定的に少ない。自分の考える戦術に選手を配置するだけで、配置する選手のバリエーションも少ない。毎週一試合のJリーグならこれでも戦えるけれど、中二日で5、6試合を戦うような五輪やワールドカップで良い成績を出すのは不可能である。東京五輪は、グループリーグは選手の力で勝って、決勝トーナメントは監督の采配力で負けた。

今、Jリーグで良い成績を残しているフロンターレやマリノスの特徴として、選手の交代が上手ということが挙げられる。両チームは選手に戦術が浸透していることも大きいが、試合の中での選手の疲労をうまくマネージメントしている点も見逃せない。マリノスで言えば、フォワードはエウベル、オナイウ、前田、仲川、レオセアラを取っ替え引っ替えしているし、ボランチの喜田と扇原もキックオフから並んでいることはあまりない。コロナのおかげで交代枠が5枚あるせいで、監督のマネージメント力は一層大切になっている。そして、日本の五輪代表はそこが最大のウィークポイントになっていた。

ところが、である。サッカー協会は森保を相変わらず高く評価しているらしい。これは日本サッカー協会が機能していないことのあらわれである。サッカー協会は2016年から長いこと田嶋幸三の独裁が続いている。こいつは安倍晋三と似た独裁者タイプの人物で、政敵には徹底的に冷や飯を食らわせ、お友達で周囲を固めてしまう。おかげでまともな人選ができなくなっているのだろう。選手のレベルは順調に上がってきているのに、サッカー協会と、協会が選ぶ監督の質が落ちる一方なのは残念なことである。  

Posted by buu2 at 03:13Comments(2)東京オリンピック

このエントリーをはてなブックマークに追加 編集

2016年04月25日

五輪エンブレム選考過程で発見したグラフィックデザイン界の希望

東京五輪とパラのエンブレムが決定した。この件についてはこのブログでは下記で短い印象を書いたのだが、

http://buu.blog.jp/archives/51521433.html

この件に関連して、前回の出来レースの時の審査員の一人であった平野敬子氏が次のブログでとても興味深い論考を展開している。

1対3の構図 - 「A案」VS「BCD案」
http://hiranokeiko.tokyo/?eid=66

要すれば、「プロ的な視点からは今回の選考はA案の出来レース」という内容である。が、この短いまとめはリードとして受け取って、上記のエントリーを読んでみて欲しい。一般投票では人気のなかったA案に決定したことを併せて考えると、とても味わいのある内容である。

ちなみに、このブログではエンブレムデザインの選考について詳細を告発していて、全てのエントリーが充実している。

HIRANO KEIKO’S OFFICIAL BLOG
http://hiranokeiko.tokyo

信頼が失墜した日本のグラフィックデザイン界だが、パンドラの箱に残されたもののように、ちゃんとしっかりした人が残っていたようだ。僕はこの業界についてはほとんど知識がないので、この一件までは全く知らない人だったのだけれど。このブログの文章は、誰でも理解できるような平易な文言を選び、自身のプロ意識とプライドを最大限に反映し、加えて、大きな悲しみを盛り込んだ名文だと思う。今後、デザインに関係する人はもちろん、東京五輪に関わる人も、いや、全ての日本人が読んでおくべき文章だと思う。

僕も、2004年のライフサイエンスサミットで「2010年バイオ市場25兆円の実現は無理」と指摘して会場内の全員に冷水を浴びせて孤軍奮闘したことがあるのだが、その後、僕自身は日本のバイオ業界のムラ体質がすっかり嫌になってしまい、今では距離を置くようになってしまった。

参考:http://buu.blog.jp/archives/51251071.html

平野さんには引き続き頑張って欲しい。五輪のエンブレム云々ではなく、日本のグラフィックデザイン界のために。日本は(この国は、と書いたけれど、あ、もう僕は日本にはいないんだった、と思い出して書き換えた。今、東海岸は朝の6:45)、出る杭は全力で叩く国だから。一つ残念なのは、平野さんがブログを開始した動機の中に

これからはじまるエンブレム審査がより良い結果を生むために

出典:責任がとれる方法で http://hiranokeiko.tokyo/?eid=1

というものがあったのにも関わらず、相変わらず人気のない、そして選考前に「出来レース」と状況証拠から指摘されていたエンブレムが選ばれたことである。  

2016年04月10日

東京五輪・パラのエンブレム最終候補

新国立競技場をどうするのかなぁ、と思っていたら、その前にエンブレムの案が提示された。あぁ、そういえば、という感じである。

https://m.tokyo2020.jp/jp/games/emblem/evaluation/

色々と説明を受ければそれぞれなるほどなぁ、と思うのだが、まず第一印象としてA案は地味すぎる。わびさびと言っても、世界から理解を得るのは難しそうだ。また、単色でどこでもありそうなデザインなので、あちこちにパクリ疑惑のデザインが出てきて、社会を混乱させかねない。C案も、風神雷神と言われれば確かにその通りなのだが、説明がない状態で見てしまうと岡本太郎と長野五輪のスノーフラワーを足して二で割ったような印象である。またこんなの?と思ってしまう。この2つを消去した上で残りを見ると、B案はあまりにオーソドックスな上に、五輪とパラで微妙に統一性がない。一方でD案はどこかの国の国旗のようでもあるし、なぜ朝顔?と日本人でも思ってしまう。この2つに比べると、誘致で使った桜のデザインの方が上に見えてしまうのが残念なのだが、桜のデザインは権利の関係で継続使用が難しいというなら仕方がない。ここは好みだとは思うが、僕ならより抽象的なB案を選びたい。  

2013年09月17日

東京オリンピックの開会式の演出は誰がやるのか(予想)

このあいだテレビを見ていたら、東京オリンピックの開会式の演出を誰にやらせるのが良いか、というアンケートをやっていた。候補は宮崎駿、北野たけし、宮藤官九郎、あと、誰だったっけ?これを見て、えーーーーーっ???と思ったので、ちょっとネットで調べてみたら、こんなアンケートもやっている。

東京五輪決定! 開会式の総合演出は誰にしてほしい?
http://number.bunshun.jp/articles/-/680533/feedbacks?title=%23%E5%8C%97%E9%87%8E%E6%AD%A6%23%25&sort=recommend&per_page=10

あのさ、まずクドカン。そりゃぁあまちゃんはヒットしているけれど、お前ら、今までの彼の実績をちゃんと知ってるのか?大人計画の舞台とか、見たことあるのかよ??そりゃ、岸田國士はとってるけど、まだまだ一発屋の領域を出ていないわけで、7年後にどうなっているのか、何の保証もない。

#ちなみに僕は一品物(世界に一つ)松尾スズキデザインTシャツを持ってます。
https://livedoor.blogimg.jp/buu2/imgs/b/4/b45c003f763a97b6f607.jpg

ビートたけしだって、映画は監督できるだろうけれど、舞台の演出はどの位やったことあるのよ。少なくとも、僕は見たことないよ。

挙句、宮崎駿って、そりゃ、五輪期間中毎日日本のクリエイターが作るショートアニメを一本放送するとかなら話はわかるけど、生身の人間を演出したことあるの???

蜷川幸雄はもういい加減年でしょ。今でも77歳だよ?死んじゃっているかも知れないじゃん。坂本龍一は音楽で協力する可能性は高いけれど、総合演出って感じじゃないよね。大友克洋、庵野秀明、村上隆あたりは全部宮崎駿枠だよ。

#てか、毎日1ショートアニメとかはすごく楽しそう。手が遅い大友克洋も今からなら十分間に合うはず。

秋元康は可能性ありだけど、作詞や企画はともかく、監督・演出はどうなの?あと、浅利慶太はもう長野でやったじゃん。

野田秀樹しかいないでしょ。なんで名前が出てこないの?東京都歴史文化財団が運営している東京芸術劇場の芸術監督だよ?歌舞伎界とも連携できて、優秀な俳優も何人も使ってきている。遊眠社時代にエジンバラで公演をやっているし、野田地図になってからも海外で赤鬼とか、THE BEEとかやってきている。イギリスからは名誉大英勲章ももらっている。3.11の時はちょうど芸術劇場で「南へ」という芝居をやっていて、「劇場の灯を消してはいけない」というリリースを出しつつ、東京と東北の架け橋の役割を果たしてもいる。

参考:「劇場の灯を消してはいけない」(野田地図)
http://www.nodamap.com/site/news/206

年齢的にも7年後なら65歳、大御所でしょ。

対抗馬が見つからないぐらいにガチだと思うんだけど、そんなことないの?